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資産運用を考え始めた人へ その5 ~ESG投資~

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その4では具体的な投資方法について記載しました。その5では昨今流行りのESG投資を主軸として色々述べていきたいと思います。

その4、その3、その2、その1については以下をご参照ください。

s-tkmt.hatenablog.com

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投資における哲学

その3において株式や投資信託についていろいろ述べてきましたが、あくまでここまでの話はいかに効率よく資産運用するか、という利益を得るための話でした。それはそれでとても重要なことではありますが、投資というのは単に目先の利益を儲けるためだけが全てではありません。

最初に述べたとおり、株式というのは会社が新しい事業を始めたり、新しいサービスを生み出したりするに当たっての資金調達の手段です。そういった中では、きちんと倫理観を持って建設的な経営をする会社ばかりではありません。ブラック企業のように従業員をこき使いまくる会社、法律すれすれのグレーなことをやって儲ける会社、産業廃棄物を適切に処理せず利益を得るために環境をどんどん汚染する会社、残念ながらそういった会社もいることは事実です。

この状況下において、投資家サイドとしても単純に目先の利益を求めた投資をしてしまうというのは、こういった会社を生み出す遠因にもなってしまうでしょう。自分のお金を使っているのですから、せっかくであればなるべく健全に成長する会社に対して投資をしたいものです。

そういった中で生まれてきた考えが最近流行りのESG投資です。

環境(Environment)・社会(Society)・カバナンス(Governance)の頭文字から取られた概念で、要は環境に配慮した会社、社会的な貢献をしている会社、不祥事などグレーなことをしていない会社に対して、積極的に投資をしようという考えです。これは単に倫理的な観点で言っているのではなく、結局そういったESGの観点に前向きに取り組んでいる会社は長期的に見て成長していく、というところが考えの発端になっています。

そのため、ESGに貢献できる会社をピックアップした指数も誕生し、その指数に沿ったインデックス運用をするファンドも出てきております。そして昨今、やたらESG投資について取り上げられたり、色んな会社がこぞって「女性活躍を推進しています!」とか「環境を配慮した取り組みをしています!」と言っているのは、まさにここにあります。単に企業倫理としてのアピールだけではなく、そういった取り組みをすることで指数対象に選定され、投資家からの資金を集められるというビジネス上の利得を目的としているのです

日本の金融市場を動かす年金運用

さて、日本における最大の投資機関はどこか知っていますでしょうか?それはGPIF(
年金積立金管理運用独立行政法人)という年金運用機関です。運用資産残高は2021年第荷四半期時点でおよそ200兆円です。実はここ数年は150兆円程度でしたが、コロナ後の世界的な株高トレンドにより、この1~2年で200兆円近くまで上昇しています。1つの運用機関でこの資産規模は世界でも一番です。ちなみに日本の国家予算は約100兆円ですので、その2倍近い金額を投資として運用しています。

御存知の通り日本の年金は賦課方式(若い世代が上の世代の分を負担する)となっているわけですが、我々が国に支払っている年金保険料が単にそのまま全部上の世代の年金になっているわけではありません。そのうち一定額を将来に備えて資産運用をしており、積極的に増やす取り組みをしています。その、年金運用機関というのがGPIFとなります。(業界ではGPIFはジーピフと呼んでます。正式にはジーピーアイエフと読むのでしょうが。。) 

そのGPIFにおける運用では、資産のうちおよそ半分を株式に投資しており、基本的にはインデックスに沿った運用をしております。そして2017年にESG指数に沿った運用をすることを宣言し、そこから日本において徐々にESGの概念が広まっていきました。つまり、GPIFがESG指数に沿った運用をするということは、兆単位規模の金額がESG投資になだれ込むことになるのです。逆を言えば企業からすればこの指数に選ばれることで、巨額な年金マネーが注ぎ込まれることになるのです。そりゃ、日本中の上場企業も必死になってESGの取り組みをアピールするわなという感じですよね。

バイデン政権とパリ協定

さて、かねてから環境問題については、色々ニュースで取り上げられたり、問題視されていましたが、なんだかここ1~2年くらい凄い勢いでそれが進んでいると思いませんか?日本では2050年カーボンニュートラルを目指すとか、中国やアメリカではEVシフトするとかなんとか、今までは「環境に負荷をかけるのは良くないよね」くらいのトーンだったのが、世界的な課題として急進しています。

もともとEU諸国ではこのあたりの取り組みを先進的に進めていましたが、例えばお隣中国は「自分たちはまだ新興国だからこれから成長するためにもCO2排出は仕方がない。先進国である欧米諸国は今まで散々CO2を排出して成長してきたのだから、お前らがなんとかしろ」というスタンス。アメリカもこのあと詳細は述べますが、パリ協定を離脱するなどして環境問題への取り組みは消極的でした。これを受けて、この2国と密接な関係を持っている日本もあまり影響せずという状態でした。

しかし、これを大きく覆すことになったきっかけが、アメリカでのトランプ政権からバイデン政権への政権交代です。

もともと世界的な環境問題の取り組みについては、COPと呼ばれる世界的な会議が毎年行われております。例えばCOP3であれば3回目のCOP会議で、京都で行われました。いわゆるあの京都議定書と呼ばれるやつが結ばれた会議です。ちなみにグレタさんが一躍有名になったのはCOP24です。

さて、COP3で定めた京都議定書においては各国に対してCO2の削減量などを目標として定めていったわけですが、この議定書の対象国にはアメリカや中国といった世界的なCO2排出国が含まれておらず、イマイチ有用性が見いだせないものでした。

それから十数年後、世界的な環境問題への意識の高まりを受けて、パリで行われたCOP21において、アメリカや中国も含めた全世界を対象とする新しい協定を結ぶことになりました。これがいわゆるパリ協定です。2015年の出来事です。

では、そのあとアメリカはどうなったか?パリ協定から1年後の2016年に誕生したのがあのトランプ政権でした。トランプ大統領の支持層はいわゆる労働者層となっており、ゴリゴリの工業労働者、排気ガス出しまくりのアメ車を乗り回すようなオールドアメリカンなスタイルの人たちです。となると、CO2削減といった試みはそういう層が雇用を失うきっかけになってしまい、結果支持率の低下に繋がります。そのため、トランプはかねてから「温暖化なんてものは嘘だ!」と主張し続け、そして最終的にアメリカはパリ協定から離脱することとなりました。

その後、2020年10月の大統領選挙において、民主党のバイデンが勝利し、バイデン政権が誕生しました。そして速攻で離脱したパリ協定から復帰しました。今までトランプ政権でとにかくパリ協定の言うことを聞かない状態が続いていた中で、方針が180度変更したことになったため、とにかく急ピッチですすめることになります。

そしてそれに合わせてかつて「自分たちは新興国だから・・・」と言い訳してきた中国がも、2060年に向けてカーボンニュートラルを宣言。つまり、CO2を出しまくって工業化を進めるより、脱炭素を実現することが世界の覇権を握る上でのキーファクターであると中国が認識したのです。

その結果、この1~2年で環境問題に対する取り組みへの圧力が急激に高まりました。当然、アメリカや中国の依存が強い日本においてはこの煽りを受けることとなり、各種メディアで報道されている通り、2050年のカーボンニュートラル宣言、それにともない2035年にガソリン車の新車販売を禁止といったガソリン車からEV車へのシフトが進むことになっています。

ますます傾くESG投資

つまり、これを投資の世界で考えれば、今まで以上にESGにおける重きが増したということになります。先述の通り年金基金のような巨大な運用期間がESGを重視する以上、企業はESGを重視した取り組みを行わないとそもそも市場に生き残れない、それはつまり我々のような一般投資家としてもESGを重視した投資をしていかないといけないこととなります。

それを象徴しているのが、テスラの株式の時価総額(株式全量の総価格)がトヨタを上回ったというニュースです。

www.nikkei.com

当然世界における販売台数や売上はトヨタの方が全然上です。しかし、世界中の投資家たちはテスラの方が将来的に伸びるという魅力を感じて投資をしており、その結果時価総額トヨタを上回りました。トヨタのもともとの強みはガソリンエンジンを前提とした技術やその部品数の多さをコントロールするサプライチェーンなわけですが、他方でテスラは初めからEV一択。もちろんトヨタもハイブリッドやEVへの取り組みを先進的に行っている会社ではありますが、今までのそういった強みを捨てていくことも必要となるため、必然的にイノベーションのジレンマがやってくることになります。

それを物語ってくれるのがこのニュースでした。

最後その6はちょっと話が変わって、貯蓄に対するリスクの話をしていきます。以下をご参照ください。

s-tkmt.hatenablog.com