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デュレーションとコンベクシティの考え方

デュレーションとコンベクシティを整理する。

ものの本なんかでは、修正デュレーションはマコーレーデュレーション\dfrac{1}{(1+y)}を乗じたもの、、、という説明がされていたりするが、全然ピンとこない。いや、確かに数式をいじる上では確かにそうなるのだが…。

多分正しい理解としては、利率変化に伴う価格変化を表す修正デュレーションと、債券の平均残存年数を表すマコーレーデュレーションは一旦別物として考えるべきで、数式的に\dfrac{1}{(1+y)}を乗じることで一致しますよ、という程度に留めておくべきだと思う。

で、債券の利回り変化と債券価格のデュレーションとコンベクシティによる近似式として、参考書なんかには以下がしれっと書かれている。

\dfrac {\Delta P}{P}=-D_{mod}\Delta y+\dfrac {1}{2}BC\left( \Delta y\right) ^{2}

いきなりこんな式出されても意味がわからないのが本音だ。
しかし、この式はテイラー展開の第二項までの近似である、と考えることで腑に落ちるだろう。大学で微分積分やってることが前提だが…。

というわけで、テイラー展開を用いて上記式を導出する。

 

導出

組み立てとして、まずは修正デュレーションとコンベクシティを利付債券価格の式から導出する。その後、テイラー展開の一般的な式を導出し、これを債券価格に当てはめることで、最初の式を導出する。

デュレーションとコンベクシティの算出

 まず、利付債券の価格を利率の関数としてP(y)として定義すると、以下の式となる。

P\left( y\right) =\displaystyle \sum_{t=1}^{n}\dfrac {C}{( 1+y)^{t}}+\dfrac {F}{\left( 1+y\right)^n}

 P:債券価格、 y複利最終利回り、 C:クーポン、 n:残存期間、 F:償還価格

この式のyにおける1回微分したものは以下の通り。

\dfrac {dP}{dy} =\displaystyle \sum_{t=1}^{n}\dfrac {-tC}{( 1+y)^{t+1}}+\dfrac {-nF}{\left( 1+y\right)^{n+1}}

 上記両辺を\dfrac {1}{P}で乗じると、いわゆる修正デュレーションが導かれる。

 \dfrac {1}{P} \times \dfrac {dP}{dy} = - \dfrac {1}{P} ( \displaystyle \sum_{t=1}^{n}\dfrac {tC}{( 1+y)^{t+1}}+\dfrac {nF}{\left( 1+y\right)^{n+1}}) \\ \hspace{20mm}=- D_{mod} \cdots (1)

 同じ要領で2回微分すると以下のようになる。

 \dfrac {d^2P}{dy^2} =\displaystyle \sum_{t=1}^{n}\dfrac {t(t+1)C}{( 1+y)^{t+2}}+\dfrac {n(n+1)F}{\left( 1+y\right)^{n+2}}

 この両辺を\dfrac {1}{P}で乗じると、コンベクシティが導かれる。

 

 \dfrac {1}{P} \times \dfrac {d^2P}{dy^2} = \dfrac {1}{P} \times \displaystyle \sum_{t=1}^{n}\dfrac {t(t+1)C}{( 1+y)^{t+2}}+\dfrac {n(n+1)F}{\left( 1+y\right)^{n+2}} \\ \hspace{20mm} = BC (Bond Convexity) \cdots (2)
テイラー展開 

続いて、テイラー展開x=a周りの式は以下の通りとなる。(※二次まで展開)

f(x) = f(a) + f'(a)\, (x-a) +\dfrac{1}{2\,!} f''(a)\, (x-a)^2

 x-a=hとすると以下のように書き換えられる。

f(a+h) - f(a) = f'(a)\, h +\dfrac{1}{2\,!} f''(a)\, h^2

 hを微小量とすると、左辺は関数f(x)\Delta h分の微小量変化と考えられる。すなわち以下のように書き換えられる。

 \Delta f = f'(a)\, \Delta h +\dfrac{1}{2\,!} f''(a)\, (\Delta h )^2 \cdots (3)
債券価格をテイラー展開で近似する 

(3)式について、債券価格で置き換える。f(x)Phyに置き換えると

  \Delta P = P'(a)\, \Delta y +\dfrac{1}{2\,!} P''(a)\, (\Delta y )^2 \\

P(a)はある利率aにおける債券価格であり、P'=\dfrac {dP}{dy}微分の式を置き換える。そして価格の変化"率"\dfrac {\Delta P}{P}のため、両辺をPで割ると

\dfrac {\Delta P}{P} = \dfrac {1}{P} \times \dfrac {dP}{dy}\, \Delta y + \dfrac{1}{2\,!} \times \dfrac {1}{P} \times \dfrac {d^2P}{dy^2}\, (\Delta y )^2

 (1),(2)を代入して最初の式が導かれる。

\dfrac {\Delta P}{P}=-D_{mod}\Delta y+\dfrac {1}{2}BC\left( \Delta y\right) ^{2} \cdots (4)

補足1:債券価格式の近似について

上記より、デュレーションとコンベクシティで価格変化を求める式というのは、厳密にやろうとすると当初の債券価格の式から変化量を代入して頑張って計算するところを、テイラー展開により近似しているに過ぎない。大学で微分積分を履修したことのある人であれば、むしろこういう説明をしたほうがしっくりくるだろう。

また、(4)は価格の変化を表すため、価格変化そのものを求める場合は、両辺にPをかけて単に\Delta Pを求めればよい。

加えて、修正デュレーションは利付債券の理論価格式における1回微分、すなわち直線近似となり、さらにこれが負の値を取ることから、「利率が上がれば債券価格は下がり、利率が下がれば債券価格は上がる」ということがここからも読み解くことができる。

補足2:コンベクシティが大きいほど価格変化は債券として有利という考え方について

 利回り変化について考える時、「コンベクシティが大きいほど価格変化が有利な債券となる」という考えがあり、試験問題だけ見たときにはこの考え方がさっぱり分からなかったのだが、グラフを用いて考えることで理解ができるようになった。以下、グラフをもとに記載。自前のPCにいい感じのツールがないため、うまい書き方になっていないのはご了承願いたい。見てもらいたいのは緑色のコンベクシティ大と赤色のコンベクシティ小の利回り変化に対する価格変化度合いである。

f:id:s_tkmt:20200817213317p:plain

詳細は図に譲るが、利回りが下がるときはコンベクシティ大の方が価格上昇し、利回りが上がるときはコンベクシティ大の方が価格下落が少なくて済む、つまりコンベクシティが大きいほど債券としては有利な値動きをするのだ。

 

 以上