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証券アナリスト合格にむけて ~1次試験の対策や勉強法~

証券アナリストという、その道の仕事をしていないと通常は耳にすることが無いであろう民間資格がある。自分の本業はIT屋であるものの、その領域としては金融系(証券系)を担っており、場合によってはITの知見より金融・証券に関する知見が必要になることが多い。そのため、この証券アナリストという資格は、弊社においてもちょくちょく保持している人がおり、自分もその手の仕事に関わる以上、取っておきたいなと密かに思っていた資格である。

ただ、この資格をまともに取ろうとすると2年くらいかかってしまうため、合格までの道のりは小分けにして書いていきたい。まずは1次試験について記載していく。なお、あくまで以下の記載は個人の見解であることを御了承いただきたい。

ざっくり概要 

数学的な手法を用いて、証券業務に関わるあれこれを色々計算したりして分析しましょう、というアナリスト業務に必要な知識を体系化し、資格化したものである。大きく1次試験2次試験に分かれるが、そのうち1次試験については、以下の3つに細分化される。

  1. 財務分析
  2. 経済分析
  3. 証券分析

毎年春と秋に試験日が設定されており、一気に上記3つの科目を受験することも可能なのだが、一般的なサラリーマンが仕事しながら勉強するにあたって複数科目を受験するのはかなりキツイ。時間のある学生や、仕事と試験内容がガッツリ重複するような人でないと、なかなか厳しいだろう。

 

参考書はいらない!?

自分が勉強にあたって購入したのは定番とも言える、TACの総まとめテキストシリーズ。 

証券アナリスト 1次対策総まとめテキスト 財務分析 2019年試験対策

証券アナリスト 1次対策総まとめテキスト 財務分析 2019年試験対策

 
証券アナリスト 1次対策総まとめテキスト 経済 2019年試験対策

証券アナリスト 1次対策総まとめテキスト 経済 2019年試験対策

 
証券アナリスト 1次対策総まとめテキスト 証券分析 2019年試験対策

証券アナリスト 1次対策総まとめテキスト 証券分析 2019年試験対策

 

 しかし今思うと、ぶっちゃけこの総まとめテキストほとんど使わなかった、下手すると無くても良かったかなぁというレベルである。

理由1:参考にならない

参考書でありながら参考にならない、なんという矛盾だろう。TACの総まとめテキストシリーズは、たしかに要点をよくまとめているテキストだと思う。が、それが参考書として分かりやすいかは全くの別問題。少なくとも自分に取っては、必要な説明が省かれたりしている印象を受け、読んでも全く意味が分からなかった。

理由2:過去問の答えが意外に分かりやすい

当資格に限らず、資格試験の勉強法においてもっとも有効な勉強法は過去問を徹底的にやることだろう。その上過去問は公式サイトから参照できるので、お金もほとんどかからない。なんてコストパフォーマンスが高いことだ。

しかし、あくまで自分の経験上であるが、公式サイトにて発表される過去問の回答というのは、至って不親切であることが多い。解説らしい解説がなく、答えだけ載せていたり、解説を読んでも全然意味分からなかったり…。(少なくとも情報処理技術者試験なんかはそうだ。)

そんな中、証券アナリストの過去問の回答解説は、結構親切な部類に感じた。もちろん、その解説だけでは100%わからない部分もあるのだが、概ね、その解説を読めば納得の行くものばかりであった。

理由3:ネットの充実

情報化社会というのは本当にすごい。先程、解説を読んでも100%わからない部分があると書いたばかりだが、そんなときにはグーグル先生に聞けば懇切丁寧に教えてくれる。確かにネットの情報であるが故に体系的には整理されていなかったりするが、問題を説く上で理解する分には案外なんとかなる。あと、思いの外役に立ったのがyoutubeである。例えば経済分析については、公務員試験やFP,中小企業診断士といった様々な分野でも問われる科目のため、その手の解説動画も豊富であった。

過去問題集は買って良いかも

という感じで総まとめテキストをdisってしまったが、総まとめテキストに対応する、過去問題集の方は購入して良いと思った。やはりこれも理由は3つ。

  1. 公式の過去問回答よりは若干解説が詳しい
  2. 分野ごとに過去問を集約しているため苦手分野の傾向をつかみやすい
  3. 出題頻度の記載があるため捨て問の判断がしやすい

というわけで、TACの過去問題集と、公式サイトから落とせる過去問があれば、十分合格はできると思われる。以下、リンクを貼っておく。総まとめテキストと見てくれが似ているので非常にややこしい。

 以下からは各科目について記載してく。

財務分析

まず自分が受験するにあたって選んだ科目は財務分析であった。ある程度の簿記の知識があり、ざっと過去問やテキストを見る限り一番とっつきやすかったためだ。事実、TACの過去問をやってみたところ、用語もある程度わかるし、間違った問題についてもなんとなく解説を読んでいけば分かる気がしていた。

というわけで、当初のイメージでは、試験の3ヶ月くらい前からきっちり勉強していこうと思っていたが、結構楽勝モードな予感がしたので、2ヶ月くらい前から本格的に勉強をするのであった。

TAC過去問の落とし穴

 さて、2ヶ月くらい前からTAC過去問を中心に勉強を始めていったわけだが、ここで痛い思いを経験する。TAC過去問は3年分の過去問をもとに、分野ごとにカテゴライズして問題を掲載するというまとめ方をしていた。そのため、例えば財務分析であれば、「資産会計の章」とか「負債会計の章」というように、グルーピングされた状態で過去問が編集されている。しかし、当然ながら実際の試験はそのように都合よくグルーピングはされていない。

そのため、TAC過去問でグルーピングされている状態でその分野だけ集中的に勉強している時はその分野の問題は解けるのだが、実際の過去問のように、出題順がバラけた状態になると途端に分からなくなるという事象が発生した。

ということで、実は全然楽勝ではなかったということが判明し、慌てて実際の試験の過去問をベースに勉強を進めていった。 1つ1つの分野についてある程度バラバラで出題されたり、実際の試験特有の出題順であっても対応できるようにし、その結果、試験1ヶ月前~直前頃までにはなんとか合格ラインと言われている6割の点数が取れるレベルに達することができた。

しかし、その分、結局理解できなかった分野を捨てたり、直前の詰め込みで付け焼き刃的な対処をしてしまい、きちんと理解できているかと言われると、正直怪しい状態というのが残念である。

試験結果

 試験問題がどんな内容だったかは忘れてしまったが、ちょっと手こずった記憶がある。(※試験問題の持ち帰りが禁止) 試験中に見直しして期待値計算したところ、ちょうど6割くらいの点数予想であり、合格発表まではハラハラであった。

結果はなんとか合格。多分ギリギリボーダーだったんじゃないかな…。

合格したことは嬉しいが、反面、試験に合格することだけが目的化してしまい、理解がしっかりと追いついていないことが反省点であった。

参考サイトなど

財務分析においては日商簿記2級、いや下手すると1級相当の範囲が含まれていたり、もはや税理士や公認会計士がやるような範囲じゃね?と思うようなレベルの内容が問われる。そのため、一番お世話になったのがEY新日本有限責任監査法人の解説サイト。さすがの会計監査最大手。もっとこの解説シリーズを1からしっかり理解していれば、色々と違っていたんだろうなぁ・・・と今更ながら後悔であった。

経済分析

続いて受けたのが経済分析。財務分析はある程度の前提知識があったものの、経済については全くの素人。当然大学でも勉強していないし、仕事でもこのあたりの分野に触れることはないため、財務分析のように付け焼き刃の知識で乗り切るのは相当苦しいだろう。

というわけで、これについてはしっかり基礎から勉強しようと思い、評判の以下の参考書を購入した。 

試験対応 らくらくミクロ経済学入門 改訂版 (らくらく経済学入門シリーズ)

試験対応 らくらくミクロ経済学入門 改訂版 (らくらく経済学入門シリーズ)

 
試験対応 新・らくらくマクロ経済学入門

試験対応 新・らくらくマクロ経済学入門

 

TACの総まとめテキストを読むより、この2冊でしっかり勉強したほうが100倍良い。非常に丁寧な解説で1つ1つの事象を整理しているため、1から追っていけば着実に理解ができる。その上、この著者である茂木喜久雄氏はyoutubeで本テキストを元にした授業を公開している。本を読んでわからない部分は講義動画を見るのもアリだ。

 


「らくらくミクロ経済学入門」第1回(1)茂木喜久雄講師

反省を活かした勉強

というわけで、財務分析の反省を活かし、大きく2つを改善した。

  1. 付け焼き刃の知識にならないよう、基礎からの理解
  2. 過去問を早めに着手することで過去問の出題順への順応 

1については、先述の参考書と動画により1から経済学を勉強し、基礎から叩き込んだ。TACの総まとめテキストだけでは絶対理解できていなかっただろう。

2については、とりあえずTACの過去問題集を1週したあとに過去問1回分をチャレンジしてみた。すると、なんと合格点である6割程度の点数を取ってしまった。合格点に達したのは嬉しいことではあるが、少々拍子抜けでもある。

理由としてはミクロ経済とマクロ経済が点数の大半を占めていることである。証券アナリストの経済分析についてもう少し説明をすると、この試験はミクロ経済・マクロ経済・金融と財政・国際経済の4つに別れており、ミクロ経済とマクロ経済の合計点だけで6割以上の配点がある。つまり、ミクロ経済とマクロ経済を完璧にすれば理屈上はそれだけで合格ができてしまうのだ。先述の参考書と動画により、ミクロ経済とマクロ経済は基礎から抑えにいき、それなりに理解はしていたことで、わりと多めの配点を手にしていたのであった。

その他の分野の戦術

ミクロ経済とマクロ経済以外の、金融と財政・国際経済、この2つについては正直きちんとは勉強していない。

まず、前者の金融と財政は日銀の政策の話や、昨今の金融動向といった、金融業界においての一般常識を問う形の問題が多いためだ。そのため、ある程度の暗記や基礎知識は必要になるが、時事ネタやトリッキーな問題に対しては対処が難しい。そういう問題でわからないものは、もうキッパリと諦めるようにした。

後者の国際経済はマクロ経済の一種に該当するが、名著「らくらくマクロ経済学入門」では太刀打ちできない分野が出題されたりもするため、この分野については付け焼き刃にならざるを得なかった。とりあえず、為替レートの計算等、分かる範囲で対応できるものは、取り逃がさないようにする方針とした。

試験結果

思ったより試験が難しかった記憶である。それまでの過去問では安定して6割~7割、調子いい時は8割くらい点数が取れていたが、期待値計算および感覚としては6割はなんとか超えているかな、という程度。

結果は無事合格。 それ相応の勉強はしたつもりなので、ここでは落ちたくない。

証券分析

 さて、一番の難問がここであり、証券アナリストを受けるにあたって一番重要な科目でもあろう。試験時間は3時間。当然その分だけ出題範囲も広い。その上、出てくる用語もマニアックで、直接金融の業界に携わっていなければ何を言っているのかが分からないだろうし、携わっていても、それがなにか説明しろと言われてると答えに窮するレベルである。債券デュレーション、期待収益率、CAPM、ベータ…。
数学レベルもそれなりに要求され、ある程度基礎的な統計学の知識がないと辛い。真面目にやろうとすると大学レベルの微分積分が必須になる、が、試験を通過するという意味ではそこまで深堀りはしなくてよいだろう。

勉強の進め方

TACの過去問を元に進めていったが、1から順番に進めず、2.債券分析→1.ポートフォリオ理論→3.ファンダメンタルズ分析→4.株式分析→5.デリバティブ分析 というように先に債券分析から進めることにした。まぁこういう順番にしたのは他サイトの勉強法を参考にしただけなのだが、結果的には正しかったと思える。理由としては以下の通り。

  • 債券は金融における基礎で、前提知識として頭にいれておく必要があるため
  • 統計学的な知識は求められず、ある程度はとっつきやすいため
  • 各種公式や考え方がポートフォリオ理論に比べネットから得られやすいため

こういった理由から、債券分析については時々難しい概念などがでてきても、ネットを活用して調べれば概ね理解できるものばかりであった。

その次の1.ポートフォリオ理論が大苦戦。そもそもがそれなりに取っつきづらくて分かりづらい上に、ある程度基本的な統計学の知識もの必要となり、今まであまり統計をやってこなかった自分は数式や用語に慣れるのに苦労した。このあたりの分野はネットで調べてもイマイチこれといって分かりやすいサイトがなかっため、参考書としては追加で以下を購入し、適宜こちらも参考にして進めていった。

2019証券アナリスト 第1次レベル合格最短テキスト 証券分析とポートフォリオ・マネジメント

2019証券アナリスト 第1次レベル合格最短テキスト 証券分析とポートフォリオ・マネジメント

  • 作者:佐野 三郎
  • 出版社/メーカー: ビジネス教育出版社
  • 発売日: 2018/10/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 3.ファンダメンタルズ分析と4.株式分析は割と余裕である。財務分析を軽くおさらいした程度で十分であった。すでに財務分析分野の試験を通った身であれば、ここで躓くことは無いだろう。

5.デリバティブ分析は、最低限の式や考え方(コールの売買・プットの売買の4パターンはグラフを書けるレベル)を抑えた。ストラドルの売りだとかストラングルの買いだとか、その手の細かいオプション戦略は頭が混乱してきたので、単に用語の暗記になってしまう部分や、あまりに込み入った問題については捨てることにした。

勉強計画

ボリュームの多さ・難易度の高さから、早めに着手をしていった。平日は仕事で疲れて勉強にならないので、基本的には土日を使って勉強を進めていくことにした。

12月~2月:TACの分野別過去問を3週することを目標に進めていった。最初は問題文の意味や公式の意味がわからず、参考書やネットで調べながら進めていったため、問題によっては1問解くのに1時間要したりもした。この期間は非常に苦しかったものの、それも3週目に入る頃にはすらすら解けるようになった。

3~4月:1から本試験の過去問を解いて答え合わせをする実践。とりあえず2018年春の過去問を解いてみたところ、なんと75%ほどの正答率であった。もっと苦戦するかと思っていたので、拍子抜けである。なるほどこのレベルであれば、基本的な公式を暗記してそれに当てはめて解答するだけで、文系(数学1A,2B)レベルであっても、合格点圏内は十分に狙えるだろう。他サイトでも言われていたことが腑に落ちた。そのあと他の年度の過去問を解いていったが、6割を切ることは無く、合格には十分な状態であった。

過去問を解いていく中で理解が追いついてない分野については、改めて参考書やネットでその基礎事項を確認し、ブログにまとめた。普段勉強にあたってはノートを使わない派なのだが、このように頭の整理としてアウトプットをするのにブログが非常に有用であった。今後もやっていきたい。

ただし、ここで想定外の事象が発生。新型コロナウイルスの拡大により、4月の試験が中止。というわけで一旦お預けとなってしまった。 

5~6月:何もしないわけにもいかないので、このコロナ期間を利用して、そもそもの統計学であったり、コーポーレートファイナンスであったり、基礎をきちんと固めることにした。統計学は以下の書籍を一通り頭に叩き込んだ。

はじめての統計学

はじめての統計学

  • 作者:鳥居 泰彦
  • 発売日: 1994/11/01
  • メディア: 単行本
 

 結構有名な本で、見てくれとしては大学の教科書のような小難しそうな雰囲気が出ているのだが、中身としては非常にわかりやすく、まさに自分のような初学者向けである。改めて分散・標準偏差・回帰分析等々、きちんと1から体系立てて学べたので、なんとなく分かっていたことを整理することができた。素晴らしい1冊であった。

そしてコーポーレートファイナンスについては以下を参考にした。 

基本から本格的に学ぶ人のためのファイナンス入門

基本から本格的に学ぶ人のためのファイナンス入門

  • 作者:手嶋宣之
  • 発売日: 2011/07/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 こちらは先程のはじめての統計学とは異なり、教科書ではなく普通の本のテイストである。「XX入門」とか「わかりやすいXX」みたいな本でありがちな、「数式を使わずにわかりやすく解説!」といっておきながら、かえって数式がないことで説明がまどろっこしくなったり、不確かな説明になってしまうという駄目な入門書が巷に溢れている中、この本の素晴らしいところは、きちんと数式で示すことである。もちろん、数式で示す以上、寝ながら読むのではなく、きちんと手を動かす必要があるのだが、示すべき数式をきちんと示すことでわかりやすくするコンセプトで書かれているため、非常に理解がしやすい。後半にてポートフォリオ理論についての話も出てくるのだが、TACの参考書では意味不明だったあれこれが、すらすらと理解できた。

この2冊により、試験を解くための公式暗記にとどまらず、きちんとその理屈から理解ができるようになったのは間違いないだろう。

7~9月:過去問を解いたり、理解の薄い部分をまたブログにまとめたり等、とりあえず適度に忘れないように勉強は軽く継続していった。8月くらいになると過去問の正答率は70%前後くらいで安定してきたため、下手するとこのまま勉強しなくても受かるかもしれないが、油断は禁物ということで、細く長く、適度に自分が整理したブログの記事も読み返したりして、記憶を保つようにした。

試験結果

 試験の手応えは十分。問題も基本的なものばかりでほとんど苦戦しなかったが、一番最後の大問だけが異様に難しかった。が、ここを全部捨てても受かるのは見えていたので、勘でマークシートを埋めて終了。見直し含めて余裕を持って終われたため、試験を早く切り上げ退出した。

結果は無事合格。これもコロナで春試験が順延したことを鑑みれば、当然受かっておきたい。 

 一次試験のまとめ

というわけで、無事、財務→経済→証券分析と受けていき、一度も取りこぼすこと無く一次試験を突破することができた。優秀な人はいちいち試験を分けずとも1回で受かるのだろうが、自分のような凡人はこのペースで十分である。

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最初に受けた財務分析は慌てふためいてとても苦労したものの、その反省を活かして経済分析、証券分析については早めに着手し、なるべく考え方や背景から理解していったことで、無理なく公式や解答方法を把握することができた。今まで資格試験はどんなものであれ2ヶ月くらい前から詰め込むようなやり方をしていたが、やはり勉強というものは、腰を据えて少しづつ積み上げて、きちんと理解をしていくべきだということを痛感した。特に自分の業務と直接関わりがない分野であればなおさらであろう。引き続き二次試験でもこの姿勢を忘れず、一発合格を目指したい。

 

以下、続きの二次試験の話。

s-tkmt.hatenablog.com