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最近は主に資格取得関連のメモとか勉強法とかを整理

国民年金・厚生年金の計算をわかりやすく整理してみた

FP1級の応用問題のために自分で整理してみる。

一般社団法人金融財政事情研究会ファイナンシャルプランニング過去問題利用許諾済
2021月7月29日許諾番号2107K000003号

0.公的年金の概要

日本における年金制度においては3階建てと言われ、そのうち公的な年金に当たるのが1階、2階の国民年金、厚生年金である。

国民年金においてはXX基礎年金という言い方をし、厚生年金についてはそのままXX厚生年金という言い方をする。

一般的には定年退職等により労働をしなくなる世代(65歳以上)から受け取る老齢年金がメインとなるが、それを受け取る前に死亡した場合に遺族に支払う遺族年金や、病気や怪我によって障害を負った場合に受け取れる障害年金がある。

1-1.老齢基礎年金

受給要件

保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上ある場合に、65歳から受け取ることが可能。

令和3年4月分からの年金額780,900円(満額)の場合、20歳から60歳までの40年(=480ヶ月)が納付期間となるので以下となる。

780,900 \times \cfrac{保険料納付済期間(最大480ヶ月)}{480ヶ月}

 これに加えて、免除期間に応じた減額割合が定められている。内容は細かすぎるのと試験ではそこまで計算上求められない(はず)のでここでは省略。

例題

学生期間に2年納付しなかった場合に、65歳から受け取れる年金額

780,900×(480ヶ月-24ヶ月)÷480ヶ月=741,855円

補足

老齢基礎年金は繰り上げ受給・繰り下げ受給が行える。繰り上げ受給の場合は月あたり0.5%の減額、繰り下げ受給の場合は月あたり0.7%の増額となる。繰り上げ受給は老齢厚生年金と同時に行う必要があるが、繰り下げ受給は別で行える。(老齢基礎年金のみ繰り下げ可能)

1-2.老齢厚生年金

受給要件

65歳以上で老齢基礎年金の受給要件を満たし、厚生年金保険の被保険者期間が1カ月以上あること。

厚生年金保険の受給開始年齢が60才から65歳に引き上げられたことで、受給開始年齢を段階的に、スムーズに引き上げるために60~65歳までを対象に、"特別支給の老齢厚生年金"が発生する。「報酬比例部分」と「定額部分」の2つがあり、特に定額部分については生年月日と性別により受給開始年齢が変わるが詳細は略。多分試験でもそこまでは問われないはず。

昭和36年4月1日以後生まれについては、報酬比例部分のみを受給することとなり、以下の算定式になる。

老齢厚生年金受給額=A+B

A:平均標準報酬月額×生年月日に応じた率(※7.125/1000)×2003年3月までの被保険者期間の月数

B:平均標準報酬額×生年月日に応じた率(※5.481/1000)×2003年4月以後の被保険者期間の月数

なお、平均標準報酬月額とは、「被保険者であった期間の標準報酬月額の合計」を「被保険者であった期間の月数」で割った額となる。平均標準報酬はこれに対してさらに賞与を含んだ値で月割りをしている。(そのため、平均標準報酬のほうが一般的に高い値になるため、その分乗数が低くなっている。)

2003年4月(平成15年4月)を境に計算式が変わっているのは、それまで賞与に対しては社会保険料がかからなかったためで、平成15年4月以降は、賞与に対しても社会保険料がかかるようになったことで、その値を加味した算定式となっている。(総報酬制という。)

例題

総報酬制導入の厚生年金保険の被保険者期間:264ヶ月
総報酬制導入の平均標準報酬月額:328,000円
総報酬制導入の厚生年金保険の被保険者期間:178ヶ月
総報酬制導入の平均標準報酬:492,000円

A部分:328,000×7.125/1000×264ヶ月=616,968円
B部分:492,000×5.481/1000×178ヶ月=480,004円 (小数点以下四捨五入)

∴老齢厚生年金受給額=A+B=1,096,972円 

在職老齢年金

60歳以降も厚生年金保険の被保険者として働きながら受け取れる老齢厚生年金のこと。

■60歳台前半(65歳まで)の在職老齢年金について

在職中であっても総報酬月額相当額と老齢厚生年金の基本月額の合計が28万円に達するまでは年金の全額を支給される。28万円を超える分について計算式に基づき"特別支給の老齢厚生年金"の支給が停止される。

■60歳台後半(65歳以降)の在職老齢年金について

基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円を超える場合に、超える額の2分の1が支給停止となる。なお、70歳以上になると計算の考え方は同様だが、保険料負担が無くなる。

※基本月額とは、老齢厚生年金と厚生年金基金の代行部分など、調整の対象となる年金を12で割った額。
総報酬月額相当額は「毎月の賃金(標準報酬月額)」と「直近1年間に受け取った賞与(標準賞与額)」を合わせた総額を12で割った金額。

経過的加算

老齢厚生年金に対する加算。特別支給の老齢厚生年金の定額部分を受けていた人が老齢基礎年金をもらうようになったときに、その差額を老齢厚生年金に加算する。要は、65歳になった時に急に受け取れる年金額が減らないようにするための措置。

先述の通り、特別支給の老齢厚生年金は定額部分と報酬比例部分に分かるが、65歳になると定額部分は老齢基礎年金に、報酬比例部分は老齢厚生年金に相当するようになる。通常、定額部分のほうが老齢基礎年金よりわずかに高いため、65歳で老齢基礎年金の受給が開始されると、その差額が経過的加算として老齢厚生年金に対して加算される。加算額は以下の式となる。

経過的加算=定額部分の額−老齢基礎年金の額

定額部分の金額:1,628円(令和3年度分)×(厚生年金加入月数、上限480か月)
老齢基礎年金の金額:780,900円(令和3年度分)×(20歳から60歳までの厚生年金加入月数)/480月)

ややこしいのだが、差っ引く方の老齢基礎年金の額の計算は厚生年金加入月をベースに計算する。

加給年金額

老齢厚生年金に対する加算。

厚生年金保険の被保険者期間が20年以上あると、65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)で、その人に生計を維持されている配偶者または子がいるときに加算される年金を加給年金という。つまり、配偶者や子に対する援助として加算される。

受給要件としては以下の通り。

■被保険者要件
・受給権者の厚生年金保険の被保険者期間が20年以上あること。
・受給権者と加給年金の対象者との間に生計維持関係があること。

■加給年金の対象者要件
850万円以上の年収を将来に渡って得られないこと。
65歳未満の配偶者(事実婚である場合も含む
18歳未満到達年度末までの子(18歳になった日以降、最初の3月31日まで)
・障害等級1級または2級の状態にある場合は20歳未満の子

なお、配偶者自身が被保険者期間20年以上の老齢厚生年金、障害を支給事由とする公的年金給付を受けられる場合は、加給年金の支給は停止される。

振替加算

加給年金を受けていた場合、配偶者が65歳に達するとそれまで支給されていた加給年金が廃止されるが、その代わり65歳に達した配偶者の老齢基礎年金に加算される。つまり、加給年金で支給していた分を配偶者の年金に加算させる。これを振替加算という。

受給要件としては以下の通り。

1966年4月1日以前に生まれた人
老齢厚生年金または1級・2級の障害厚生年金加給年金対象者
65歳になり、老齢基礎年金の受給権者となったとき

ただし、以下の場合は振替加算は支給されない。

・配偶者が厚生年金保険に原則として20年以上加入している場合
・配偶者の年収が850万円(所得655万5千円)以上の場合
障害基礎年金障害厚生年金を支給を受けている時

補足

老齢厚生年金も繰り上げ受給・繰り下げ受給が行える。増減額は老齢基礎年金と同様に繰り上げ受給の場合は月あたり0.5%の減額、繰り下げ受給の場合は月あたり0.7%の増額となる。繰り上げ受給は老齢基礎年金と同時に行う必要があるが、繰り下げ受給は老齢基礎年金と別に行える。(老齢厚生年金のみ繰り下げ受給可能)

2-1.遺族基礎年金

受給要件

以下のいずれかを満たす場合に受給要件を満たす。

国民年金に加入中の被保険者が死んだ場合:つまり保険料払っている途中に死んだ場合
国民年金の被保険者資格喪失後、日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満が死んだ場合:つまり、60歳になるまで保険料を払い続けた後、受給前に死んだ場合
・老齢基礎年金の受給権者が死んだ場合 (ただし、保険料納付済期間、保険料免除期間及び合算対象期間を合算した期間が25年以上必要):要は年金受給中に死んだ場合
・老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある人が死んだ場合 :受給資格はあるけど受給前に死んだ場合 

対象者は死亡した者によって生計を維持されていた、子のある配偶者(事実婚もOK)および子となる。子とは18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子を指す。

計算は以下の通り。

780,900円+子の加算

※子の加算 第1子・第2子 各224,700円、第3子以降 各 74,900円 

寡婦年金

第1号被保険者が死亡した場合に、遺族年金をもらえない妻(子の無い妻)に対して、死亡した夫がもらえるはずであった老齢年金の一部が支給されるもの。妻の収入を保障する一方、夫の年金保険料が掛け捨てになることを防いでいる。

死んだ夫が国民年金の第1号被保険者としての保険料納付済期間が10年以上あり、まだ老齢基礎年金を受け取っていないことが条件。

寡婦年金が支給される期間は、妻が60歳になってから65歳になるまでの間となる。なお、「寡婦」の名の通り、夫が死んだ時に妻がもらえる年金であり、男女の逆は存在しない。

なお、寡婦年金の支給額は、夫が65歳からもらえるはずであった老齢基礎年金の4分の3となる。

死亡一時金

基本的な目的は寡婦年金と同様で、それを一時金形式で受け取る。

死亡した人の第1号被保険者としての保険料納付済期間(一部免除の期間も含む)が36か月以上であることが条件。

受取人は妻である必要は無く、(1)配偶者、(2)子、(3)父母、(4)孫、(5)祖父母、(6)兄弟姉妹 の優先順となる。死亡した人と生計が同じであれば、生計を維持されていなくても支給される。ただし、遺族基礎年金をもらえる遺族がいるときは支給されない。

受給金額は納付済み月数によって変動する。

例題

学生期間に2年納付しなかった夫が65歳を迎える前に死んだ場合に貰える、寡婦年金額は以下の通り。

まず、老齢基礎年金を算出。

708,900×(480ヶ月-24ヶ月)÷480ヶ月=673,455円

これの4分の3が寡婦年金となるので、673,455円×3/4=505,091円

 

2-2.遺族厚生年金

受給要件

短期要件:

1.厚生年金の被保険者が死亡したとき
2.被保険者資格喪失後でも、被保険者期間中の傷病がもとで初診の日から5年以内に死亡したとき。(ただし、遺族基礎年金と同様、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む。)が国民年金加入期間の3分の2以上あること。)
3.1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けられる者が死亡したとき。

長期要件:

1.老齢厚生年金の受給権者(受給中の者)が死亡したとき。(受給資格期間が25年以上必要)
2.老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき。

対象者は死亡した者によって生計を維持されていた以下となる。兄弟姉妹は対象とならない。
・妻および子、55歳以上の夫、父母、祖父母(支給開始は60歳から)、孫

計算式は以下の通り。基本的には老齢厚生年金の4分の3となるが、上記短期要件に合致する場合に非保険期間が300月未満の場合、最低保障の加入月数として300月として計算をする。

遺族厚生年金受給額=老齢厚生年金*3/4=(A+B)*3/4

A:平均標準報酬月額×生年月日に応じた率(※7.125/1000)×2003年3月までの被保険者期間の月数

B:平均標準報酬額×生年月日に応じた率(※5.481/1000)×2003年4月以後の被保険者期間の月数

※加入月数が300月に満たないときは、300月で計算をする。その際、実際の加入月をもとに増分させる。具体的には以下の通り。

遺族厚生年金受給額=(A+B)*(300月/実際の加入月)*3/4

例題

総報酬制導入の厚生年金保険の被保険者期間:120ヶ月
総報酬制導入の平均標準報酬月額:360,000円
総報酬制導入の厚生年金保険の被保険者期間:60ヶ月
総報酬制導入の平均標準報酬:480,000円

A部分:360,000×7.125/1000×120ヶ月=307,800円
B部分:480,000×5.481/1000×60ヶ月=157,853円 (小数点以下四捨五入)

ここで、実際の加入月は180ヶ月であるので、300月に換算する必要があるから

∴遺族厚生年金受給額=(A+B)*(300月/実際の加入月)*3/4 = (307,800円+157,853円)*(300月/180月)*3/4 = 582,066円

中高齢寡婦加算

遺族厚生年金における加給年金。遺族基礎年金は子どものいない妻には支給されず、また、子がいてもその子が18歳に達すれば支給されなくなってしまう。そのため、夫が死亡したときに40歳以上で子のない妻が受ける遺族厚生年金には、40歳から65歳になるまでの間、中高齢の寡婦加算が加算される。

なお、妻が65歳になると自分の老齢基礎年金が受けられるため、中高齢の寡婦加算はなくなる。

支給額は固定で586,300円となる。(令和2年度価額)  

経過的寡婦加算

遺族厚生年金を受けている妻が65歳になり、自分の老齢基礎年金を受けるようになったときに、65歳までの中高齢寡婦加算に代わり加算される一定額を経過的寡婦加算という。老齢基礎年金の額が中高齢寡婦加算の額に満たない場合が生ずるときに、65歳到達前後における年金額の低下を防止するため設けられている。

受給要件としては以下を満たす必要がある。

要件1. 寡婦となった妻の生年月日が1956年(昭和31年)4月1日以前であること
要件2. 中高齢寡婦加算の受給に必要な要件をすべて満たしていること

※会社員の被扶養配偶者が「第3号被保険者」として国民年金に強制加入するようになったのが、「昭和61年4月1日」からで、その前は、「国民年金は任意加入」となっていた。

「昭和31年4月1日」以前生まれの妻の場合は、40年間会社員に扶養されるとすると第3号被保険者の期間が30年未満となり、老齢基礎年金の額が4分の3未満となってしまう。経過的寡婦加算はその4分の3未満になる部分をカバーするために加算される。

厚生老齢年金との併給

65歳以上になると老齢厚生年金が支給されるようになる。ここで、遺族厚生年金を受け取る権利がある場合に、老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止となる。図として表すと以下の通り。

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上記の通り、結果的に今までもらえていた分は貰えるので、損をしていることにはならない。