一生旅行生活してえ

最近は主に資格取得関連のメモとか勉強法とかを整理

FP1級実技試験対策整理

FP1級試験において、2月に控える実技試験(面接)の対策として、重要事項の整理を行う。基本的に自分の勉強のために整理したものを公開しているに過ぎず、網羅性や厳密性を担保したものではないのでそのあたりはご了承。また、試験に向けて適宜加筆をしていくので、不定期的に更新を入れていく予定。

法令基準日は2021/10/1(令和3年10月1日)となるので、試験日時点では無効になってる制度であっても法令基準日時点で有効なものは念のため記載を残す。

相続分野(Part1)

事業承継税制(事業継承における贈与税相続税の納税猶予および免除(一般措置))

先代経営者から事業の承継を受けた後継者が、将来的に、次の後継者に事業を承継させることができた場合には、本来支払うはずだった相続税(もしくは贈与税)を全額免除される特例である。

背景:
事業を後継者へ引き継ぐに当たって、株式を譲渡する場合、それに応じた贈与税相続税が発生し、後継者は多額の金銭を支払う必要がでてしまう。これによりスムーズな事業継承が行えなかったり、そもそも事業継承自体を諦めてしまうことが発生した。このままだと、優良企業であっても事業継承ができないがために廃業となるのは日本経済の損失につながってしまうため、税制を優遇する制度が確立した。ただ、それであっても適用要件が厳しかったせいでなかなか普及に至らなかったため、さらに優遇する特例措置も生まれた。(後述)

納税免除の概要

相続税については以下のスキームにより免除される。

① 代経営者の死亡により、後継者が自社株式を相続する。
② 特例事業承継税制を使うと、相続税が「納税猶予」される(この時点では、まだ免除にはならない)。
③ 後継者が死亡すると納税が免除され、「税金ゼロ」になる(次の後継者に「特例事業承継税制」を使って株式を贈与した場合も、納税が免除される)。

つまり、後継者相続時点で猶予→その後さらなる後継者に相続すると免除になるという仕組みである。

贈与税も同等に以下のようになる。

① 先代経営者から後継者が自社株式を贈与される。
② 特例事業承継税制を使うと、贈与税が「納税猶予」される(この時点では、まだ免除にはならない)。
③ 先代経営者が死亡した場合、猶予されていた贈与税が免除される(ゼロになる)。
贈与税は免除されるが、この特例によって得た自社株式は、先代経営者が亡くなったことで、「相続によって取得したもの」とみなされる。したがって、「贈与時の評価額」で他の相続財産と合算され、相続税の課税の対象となる。
相続税は発生するが、この段階で「相続税の納税猶予(特例事業承継税制)」に切替えると、相続税が「納税猶予」される。
⑥ 後継者が死亡するか、次の後継者に「贈与税の納税猶予(特例事業承継税制)」を使って株式を贈与した 場合、納税が免除される。

なお、後継者のさらなる後継者(次期後継者)に引き継ぐことができなかった場合は、継承失敗ということで訴求して(利息付きで)納税の義務が発生する

先代経営者の要件:
贈与税】の納税猶予を受ける場合、以下のすべての要件を満たす必要がある。

① 会社の代表者であったこと(贈与までに代表権を返上する必要があり)。
② 先代の経営者およびその同族関係者(親族など)が保有する株式が50%を超えること。
③ 先代経営者が同族関係者のなかで筆頭株主であること。

相続税】の納税猶予を受ける場合、以下のすべての要件を満たす必要があり。

① 会社の代表者であったこと。
② 先代経営者およびその同族関係者(親族など)が保有する株式が50%を超えていること。
③ 先代経営者が同族関係者のなかで筆頭株主であること。

後継者の要件:

① 会社の代表者であること
② 20歳以上で、贈与の直前において「3年以上役員」であること
③ 後継者およびその同族関係者(親族など)が保有する株式が50%を超えること
④ 後継者が同族関係者の中で筆頭株主であること
⑤ 相続により取得した株式を1株も譲渡せず、継続して保有すること

会社の条件:

会社が中小企業者に該当すること。中小企業者とは次の条件を満たす会社をいう。

中小企業庁:FAQ「中小企業の定義について」

合わせて、以下を満たす必要がある。

① 上場会社でないこと
風俗営業会社でないこと
③ 資産管理会社でないこと(一定の要件を満たすものはのぞきます)
④ 従業員が1名以上いること

事業継続要件:

相続開始5年間は、原則として以下をの要件を満たさないといけない。

1.経営承継相続人が代表者でありつづけること
2.経営承継期間平均で雇用の8割以上を維持すること
3.後継者が会社の株式を継続して保有し続けること
4.5年間は毎年、年次報告書を都道府県知事に提出すること
5.5年間は毎年、5年経過後は3年毎に継続届出書を納税地の所轄税務署長に提出すること

担保提供:
納税が猶予される相続税額・贈与税額及び利子税の額に見合う担保を税務署に提供する必要がある。具体的には、納税猶予の対象となる非上場株式そのものや、不動産、有価証券など。

申込方法:
特例の認定を受けるためには、平成30年4月1日から令和5年3月31日までに、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けた旨を記載した特例承継計画を都道府県知事に提出する必要がある。

中小企業庁:法人版事業承継税制(特例措置)の前提となる認定に関する申請手続関係書類

メリット:
納税が免除されるこの制度そのものがメリットといえる。

デメリット:
手続きが煩雑、適用にあたって税理士など専門家の協力を仰ぐ必要がある(その分手数料がかかる。)、万が一適用要件を外してしまうと納税義務が発生する。

一般事業承継税制と特例事業承継税制の違い:
事業承継税制には、2009年から続いている現行制度(一般事業承継税制)と2018年4月から導入された「特例事業承継税制」の2つの制度がある。特例の方の主な特徴は以下の通り。

対象株式:
一般事業承継税制では、発行済議決権株式総数の3分の2の株式が限度だが、特例事業承継税制では、すべての株式が対象となる。

相続のときの猶予対象評価額:
一般事業税制では、対象株式の「評価額の80%」が猶予されるのに対し、特例事業承継制では対象株式の「評価額の100%」が猶予される。

承継パターン:
代表権を有してない人含め複数人からの承継、および複数人への承継(後継者3名まで)が認められる。

雇用確保要件:
特例事業承継税制では、80%を下回った理由を記載した書類(認定支援機関の意見が記されたもの)を提出すれば、認定が取り消されない。

相続時精算課税:
一般事業承継税制では、推定相続人ひとりのみが適用だが、特例事業承継税制では、推定相続人以外も適用が可能。

なお、特例承継計画を提出しても、2027年12月31日までに相続・贈与をしなければ特例事業承継税制の適用を受けることができず、期限を過ぎてしまった場合は、一般事業承継税制の適用となる。

引用元・参考文献

事業承継税制で自社株式の贈与税・相続税がゼロになる方法をわかりやすく解説 | 相続税申告相談プラザ|ランドマーク税理士法人

【平成30年改正】事業承継税制とは?メリット・デメリットを解説します | 円満相続税理士法人|東京・大阪の相続専門の税理士法人

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中小企業における自己株式取得(金庫株)

事業継承相続において、経営に協力的な人に株式が渡ってしまうと、たとえそれが少数であっても、少数株主株権を行使され、経営に不利な状況に陥ってしまう可能性がある。そのため、相続時に会社として自己株式取得を行い、なるべく自社内で処理することで自社を守る対策を講じることができる。ただし、分配可能額が買取上限となっており、またこれにより純資産額が300万円を下回ってはならない。

保有

保有についての規制はないが、自己株式については議決権がなく、配当を受ける権利もない。また、自己株式は純資産の部の控除項目として表示する。

メリット:

当初の目的通り、相続において不適切な継承先への譲渡を防ぐ、敵対的買収に対抗するということとなる。

また、相続においては節税効果がある。自己株式取得によって発生した利益はみなし配当として総合課税の対象となる。総合課税なので、最大55%の税率となる。しかし、株式を相続した人が、相続が発生してから3年10ヶ月以内にその株式を発行会社に売却した場合(つまり自己株式の取得)には、本来、総合課税されるところ、20%の税率で済む。(つまり、普通の譲渡益課税と同じとなる。)

また、この時に発生した税金は取得費加算の特例により取得費とすることも可能である。

相続後の自己株式取得で、みなし配当が20%課税になる超お得な特例とは? | 円満相続税理士法人|東京・大阪の相続専門の税理士法人

デメリット:

基本的には現金による買取のため、会社の現金が減ることとなる。体力のない中小企業の場合、その後の事業計画に影響する可能性がある。

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相続時精算課税制度

60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子・孫への生前贈与について、基礎控除(暦年課税:110万円/年)を利用できなくなる代わりに、2,500万円の特別控除を行える制度。なお、2,500万円を超える分については一律20%の税率を乗じて算出する。

同一の父母または祖父母からの贈与において限度額に達するまで何回でも控除することができ、2,500万円までの贈与には贈与税がかからないことになる。

その贈与者が亡くなって相続が開始したときは、贈与を受けた財産額を相続財産の額に加算して相続税を計算し、すでに納税した贈与税額はその相続税額から控除されることになる。(相続時に精算される=相続時精算課税制度) つまり、課税タイミングが繰り延べられるだけで、必ずしも節税になるとは限らない。また、一旦選択すると暦年課税に戻すことができない

例えば3000万円分の贈与についてこの制度を活用した場合、2500万円分は非課税、500万円分は20%課税で100万円分の贈与税が発生する。その後相続となった際に、相続財産が4000万円分あるとすると、相続財産の総額は4000万円+2500万円=6500万円として計算され、そこから相続税額を算出する。ここで、すでに贈与税として支払い済みの100万円については、税額控除をして二重課税とならないようにする。

メリット:相続で揉めそうなので生前のうちに大きな金額を贈与しておきたい、将来値上がりしそうな資産なのでそうなる前に贈与したい(贈与財産の価額は贈与時の時価となるため)ときに節税効果あり

デメリット:110万円以下の贈与でも贈与税の申告が必要、暦年課税制度との併用や暦年課税制度への変更ができない、贈与税の申告書の提出が必須(漏れると20%課税が発生)、不動産だと小規模宅地等が使えない上に別の税金(不動産取得税など)がかかる、相続税の物納には使えない

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普通方式の遺言

1.自筆証書遺言:遺言の全文と、日付、氏名を自分の手で書いて押印をする。あくまでも、自分の手で書く必要があるので、パソコンで打って印刷した場合や他の人に代わりに書いてもらった場合は無効となる。※財産目録についてはパソコンでの印刷可
メリット:秘密を自分だけに保持できる、手続きが簡便である
デメリット:内容が不正確になる場合がある、偽造や紛失の危険性がある

2.公正証書遺言公正証書による遺言で、遺言者が口述で趣旨を述べ、それを公証人が記述することで作成する。費用はかかるが、確実に作成が行える。
メリット:遺言の内容が明確化できる、紛失や偽造の危険性がない
デメリット:手続きが複雑で費用がかかる

3.秘密証書遺言:遺言書の作成自体は自分で行うが、その後、役所にて証人2人以上に立ち会ってもらい、この遺言は確かに自分の遺言であることと、自分の住所・氏名を伝えて、遺言者と公証人が押印することで保証する方法。この場合、中身についてはPC作成・代筆でも問題ない。
メリット・デメリットは1と2の中間となること。

なお、証人となることができない人は以下の通り。

・未成年者
・推定相続人・受贈者およびそれらの配偶者・直系血族:遺言者の利害関係者であり、公正さを保てないため。
・公証人の配偶者、四親等内の親族、書記、使用人:遺言内容を知る立場にあり公平さを保てないため。

なお、遺言書を開封するにあたって、封印がある場合については、家庭裁判所にて開封の申立を行い、相続人およびその代理者立ち会いのもと、家庭裁判所内にて開封する必要がある。 (検認という。)なお、公正証書遺言については内容が明確で偽造の危険性がないため、検認が不要となる。また、法務局における自筆証書遺言保管制度を利用すれば検認が不要となる。なお、封印がある遺言書を家庭裁判所の検認無く誤って開封してしまった場合は5万円以下の過料が発生するが、遺言そのものの効力は失われるわけではない。(ただし、故意に遺言書を隠したり、破棄したり、改ざんしたり、差し替えたりした場合は、相続人としての権利を失うことになる。)

自筆証書遺言書保管制度

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遺留分民法特例

相続人に法律上保障された一定の割合の相続財産のことを指す。この場合の相続人は配偶者・子・直系尊属に限られ、それらの相続人を遺留分権利者という。

被相続人は生前に自分の財産をどう処分しようと自由だが、相続においては遺された相続人の生活保障や、被相続人の財産形成に貢献した相続人への清算的側面もあるため、被相続人の利益と相続人の保護のバランスをとるために遺留分が存在する。

遺留分の割合
遺留分を決めるにあたっては、遺留分算定の基礎となる財産を計算し、そこから配偶者・子は財産総額の1/2直系尊属は財産総額の1/3遺留分の割合として配布する。遺留分算定の基礎となる財産額の算出は以下の通り。

遺留分算定の基礎となる財産額=遺産総額+生前贈与額-債務の額 

例えば、
 相続人:配偶者・子供2人
 遺産総額:4,000万円
 生前贈与:2,000万円
 債務:3,000万円
という場合を考える。

まず遺留分算定の基礎となる財産額は、4000万円+2000万円-3000万円=3000万円となる。相続人が配偶者・子のため、遺留分の総額はこの財産額の1/2となるので、1500万円をこの3人で分け合うことになる。法定相続分は配偶者が1/2、子が1/2となるので、それぞれ遺留分として受け取れる額は以下の通り。

 配偶者:1,500万円*1/2=750万円
 子1:1500万円*1/2*1/2=375万円
 子2:1500万円*1/2*1/2=375万円

このため、例えば被相続人が子1に対して全額相続する遺言を残していたとしても、配偶者は750万円、子2は375万円を子1に対して請求をすることができる。(遺留分侵害請求権という。)

遺留分の放棄:
遺留分を放棄することも可能である。被相続人が生きている間に遺留分を放棄するには、家庭裁判所で「遺留分放棄の許可」を受ける必要がある。生前は被相続人遺留分権利者へ遺留分の放棄を迫るなど不当な干渉が行われる可能性があるためである。他方、被相続人の死後(相続開始後)であれば特に家庭裁判所の許可は不要である。

遺留分の放棄は、相続の放棄ではないので、相続自体は行われる。例えば、上記例で言うと、配偶者に300万円、子1に2500万円、子2に200万円に相続するという遺言であった場合、配偶者、子2は遺留分を放棄していても、遺言上の相続財産は受け取ることができる。

事業継承における遺留分の特例:
特定の人物に対して円滑に事業継承をしたい場合、具体的に言うと長男に全株式を譲渡してしまいたいというような場合、遺留分を考慮するとそれ以外の相続人から遺留分侵害請求権を行使され、長男以外の人物に株が行き渡ってしまい、将来的に事業継続がうまくいかなくなってしまう懸念がある。こういったことを回避するため、中小企業の事業継承にあたっては特例が存在する。それぞれ、除外合意、固定合意というパターンがある。

除外合意は、生前に贈与された自社株式の価額を遺留分算定基礎財産に算入しない制度となる。
固定合意は、遺留分算定基礎財産に算入するが、その価額を贈与時の評価額に固定する制度となる。

これらは組み合わせて算出しても良い。例えば1000株のうち、300株は除外合意で計算、700株は固定合意で計算、という方法である。

また、この手続を利用するためには以下の要件を満たす必要がある。

旧代表者の要件:当該会社の元代表者もしくは現代表者であること
後継者の要件:合意時点で当該会社の代表者であること、旧代表者から贈与により株式を取得した者であること、当該会社の総株主の議決権の過半数を有すること

加えて、この手続を利用するためには、以下の手続きを踏む必要がある。

1.合意書の作成:被相続人・推定相続人全員で書面で作成要
2.経済産業大臣の確認:合意から1ヶ月以内に申請が必要
3.家庭裁判所の許可:大臣の確認から1ヶ月以内に申立が必要

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類似業種比準方式

類似業種比準価額は、事業内容の類似する上場企業の株式の株価に比準して株価を評価する。具体的には以下の式の通り。

A \times \cfrac{\cfrac{b}{B}+\cfrac{c}{C}+\cfrac{d}{D}}{3} \times E \times \cfrac{一株当たり資本金等の額}{50円}

A:類似業種の上場会社の株価。以下のうち最も低い値を採用する。
 1 課税時期の月の類似業種株価(平均額)
 2 課税時期の前月の類似業種株価(平均額)
 3 課税時期の前々月の類似業種株価(平均額)
 4 類似業種の前年平均株価
 5 課税時期の月以前2年間の平均株価

B:類似業種の1株当たり配当金額
b:評価会社の1株当たり配当金額
C:類似業種の1株当たり利益金額
c:評価会社の1株当たり利益金額
D:類似業種の1株当たり純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)
d:評価会社の1株当たり純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)

E:斟酌(しんしゃく)率。大会社が0.7、中会社が0.6、小会社が0.5となる。

この算定式に基づき、事業継承においてなるべく有利な評価額(=低い評価額)で株式贈与や相続をしたい場合には、b,c,dの値を下げることが有効である。そのため、役員退職金を引当金計上して損金処理を行うといった経理処理を通じて節税対策を行える。

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純資産価額方式

株式を会社財産に対する持分と考え、会社の純資産額に基づいて株式の評価額を算定する。具体的な式は以下の通り。

1株あたり純資産価額=\cfrac{純資産評価額-純資産評価益*37%}{発行済株式総数}
純資産評価:資産の評価額-負債の評価額
純資産評価:純資産評価額-純資産簿価額

なお、純資産評価に対して37%を乗じているのは、この評価益に対する法人税相額としているためである。これを控除することで、残存する純資産価額を算出する。ここにおいても、損金処理を行えばその分だけ純資産評価額が減少することになるため、贈与・相続時の節税効果を見込める。

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併用方式

併用方式は、その名の通り類似業種比準方式と純資産価額方式を併用して算出する。中会社において適用される。考え方は以下の通り。

1株あたり相続税評価額=類似業種×L+純資産価額×(1-L)

ここで、Lは中会社の大は0.9、中会社の中は0.75、中会社の小は0.6となる。

なお、従業員が70名を超えると大会社の扱いとなる。

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M&AMBO

M&A(エムアンドエー、Mergers(合併)and Acquisitions(買収))は、企業・事業の合併や買収の総称である。手法としては株式交換や公開買付など様々。

MBOは手段の1つで会社経営陣が株主から自社株式を譲り受けたり、事業部門統括者が当該事業部門を事業譲渡されたりすることで、オーナー経営者として独立する行為である。敵対的買収を防ぐ手段としても使える。

MBOをするにあたってはSPCを設立し、SPCが銀行から融資を受けて部門を買収をする方法もある。(LBO=レバレッジド・バイアウトと言う)

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小規模宅地等の評価減の活用

課税価格計算における評価の計算や特例については色々あるが、試験で頻出の小規模宅地等の特例について記載する。

被相続人が自宅や店舗、貸アパート等として使っていた宅地を、相続人が取得する場合に、宅地の評価額を一定の面積までは最大限80%減額できる制度。相続税を取りすぎることで、事業継続が困難になってしまうのを防ぐためである。

例えば、2億円の宅地を相続で取得したとしても、相続税評価額においては80%減額して4,000万円とすることができる。これにより相続税額が劇的に変わることとなる。

これを適用できる減額割合の上限と面積上限は以下の通り。

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また、居住用と事業用を併用する場合は、最大で730㎡まで適用が可能である。

特定居住用宅地:被相続人が住んでいた自宅の土地、被相続人と生計を一つにする親族が住んでいた宅地のこと。被相続人の配偶者が宅地を相続する場合には特に適用を受けるための条件はないが、同居の親族や、同居していない親族がこの宅地を相続する場合には一定の条件がある。

特定事業用宅地:被相続人や生計を一つにする親族の事業に使われていた宅地のこと。ただし、相続税の申告期限がくるまで事業を継続していることが必要。

貸付事業用宅地等:被相続人やその家族が不動産投資等に使っていた宅地のこと。ここでいう不動産投資というのは、住宅アパートの貸付や駐車場や駐輪場などの事業のこと。

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生命保険の活用

死亡保険金の場合には「500万円×法定相続人の数」まで非課税とすることが可能。そのため、非課税限度額に余裕がある場合には一時払い終身保険への加入が節税対策として有効である。

なお、法定相続人の定義として以下の点に留意が必要である。

相続放棄したものがいても、その放棄がないとした場合の相続人数
被相続人に養子がある場合、実子がいる場合は1人まで、実施がいない場合は2人までのカウントとなる。

ただし、特別養子縁組による養子や、被相続人の配偶者の実子で被相続人の養子となったもの(連れ子養子)、代襲相続人は実子とみなされ人数制限は受けない。

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死亡退職金

通常、退職金は生前にその会社を退職したときに受け取るものであるが、それを受け取らずに死亡してしまった場合は、本来それを受け取れるはずであったものを死亡と共に遺族が受け取る形となる。この時、その死亡退職金は生前に被相続人保有していた財産ではないので相続財産の扱いにはならず、かといって本来被相続人が受け取る権利があったものでもあるので財産扱いしないのも変な話である。というわけで、これをみなし相続財産として税務処理をする。

死亡退職金がみなし相続財産となるには、死亡後3年以内にその金額が確定する必要がある。これにより、相続財産という扱いでありながら、「500万円×法定相続人の数」まで非課税枠とすることができる。

なお、死亡退職金であっても、みなし相続財産にならない死亡退職金(死亡後3年以内に支給額が確定しなかったもの)は、相続税の対象ではなく遺族の個人所得として「所得税」の対象になり、非課税枠はなくなるので一般的に税負担が重くなる。

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個人事業の法人化(法人成り)

個人事業の法人化(法人成り)は以下のようなメリットがある。

・税率差異:
一定以上の所得があると、個人事業主よりも税負担が軽くなる。所得税累進課税制度が適用されているため、所得が増えれば増えるほど税の負担割合が増加していき、加えて個人事業税がかかる場合はそれも考慮が必要となる。

他方、法人税には累進課税制度は適用されていないため、税率はほぼ一定になるため、所得が一定以上になった場合は、法人に課せられる法人税の方が税負担が軽くなる。

・資金調達:
取引先や金融機関からの信用が高くなり、事業に必要なお金を集めやすくなる。法人であれば、社会的信用が高くなるため、一般的に多額の資金調達がしやすくなる。

・退職金の損金計上:
法人の経費負担で退職金の準備が出来るため、会社の損金にして節税できる。個人事業主および専従者における退職金は損金計上が行えないが、法人化すれば経営者や家族役員等の退職に伴う退職金は適切な金額であれば損金計上が可能である。

・従業員給与の損金計上:
個人事業では原則として生計を一にする親族へ支払った給与は必要経費に参入されず、一定の要件を満たした青色事業専従者に支払った青色事業専従者給与が必要経費に参入できる。法人であれば、家族役員や家族従業員に支払った給与であっても、適正額であれば損金計上が可能である。

・相続・事業継承:
個人事業のまま相続が開始した場合、先代事業主の死亡廃業と同時に後継者が同事業を開業することになる。そのため、事業用資産は一般資産と同様に相続税評価額により評価され、相続税の課税対象となる。また、許認可を必要とする事業の場合は許認可の再取得が必要となる。法人化すれば法人の役員変更と株式移転のみとなるため、一般的に税負担や事務負担が軽減される。

他方でデメリットとして以下が挙げられる。

社会保険費用の負担増:
個人事業においては常時雇用している職員数が5名以下であれば社会保険の加入は義務付けられていないが、法人は社会保険の加入が義務付けられている。そのため社会保険に未加入であった場合、法人成りに伴い社会保険の加入が必要となり事業主負担が増加する。

・事務処理の煩雑化:
各官庁に対する届けや申告などの事務処理が煩雑になる。税務申告についても個人の確定申告に比べて、作成する書類も煩雑になるため、通常は税理士に依頼することとなり、結果事務コストが重くなる。

・資本金の準備:
制度上は資本金1円でも会社の設立は可能だが、現実的には社会的信用を得るため一定の資本金が必要となる。また、当初の運転資金を考慮して必要資金を準備すべきである。

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不動産管理会社

個人で不動産収入がある場合に不動産管理会社として法人成りすることで税のメリットを受けることができる場合がある。主なメリットは以下の通り。

給与控除の活用:
オーナーが直接賃貸収入を得ている場合、その利益に直接課税されるが、「会社から給料をもらう」という形にすると給与所得控除が活用でき、結果的に節税ができる。

具体的には不動産取得においては、不動産収入-諸経費で算出するが、これを給与とすれば、不動産収入-給与控除-諸経費とすることで課税所得金額を減額ができる。

所得の分散:
個人での賃貸収入だとその個人だけの収入となるが、不動産管理会社を設立すると、家族などを従業員にして給与を支払うことができるため、課税対象を分散することが可能となる。

相続財産の削減:
個人で不動産を所有し収益を得ている場合、それらの財産はオーナー1人のとなるため、その分相続財産が増えることとなるが、不動産管理会社を設立し、家族を役員・社員にすれば、財産を家族に分散することが可能となる。

相続税は相続財産に応じて課税されるので、オーナーの財産が少なくなった分、相続税も削減することが可能になる。

税率差異:
所得税累進課税制度のため、所得が多いほど税金がかかることになるが、法人税は法人実効税率で一定のため、一定額を境に法人税のほうが安くなる。

デメリットとしては、法人成りにおけるものとほぼ同じで、法人化するだけ行政手続きの事務負荷が増加したり、社会保険の加入が必須になったり、税の届け出にあたって税理士に頼むなど諸経費が増加すること等である。

また、不動産管理会社の形態としては不動産所有方式と委託管理方式と一括借上げ方式の大きく3つある。

不動産所有方式:
個人で所有する不動産を会社名義に変更(売却)し、「会社が保有する不動産」として収入を得る方式で、会社が直接入居者と賃貸借契約を交わし、賃料をもらい、管理も会社が行う。

建物のみを会社に移転させて、土地は個人所有のままにし、会社から個人(地主)に対して地代を支払うのが一般的となる。(土地を移転させてしまうと譲渡所得税が発生する可能性がある。)家賃収入のすべてが会社に入るため、所得移転効果が大きくなる。

不動産を保有している人が不動産管理会社を設立するにあたって、最も一般的であり、節税効果も高いスキームとなる。

【メリット】
家賃収入のすべてが保有する会社の収入となり、所得移転効果が大きい
オーナー自身や、家族に役員報酬を支払うことで所得の分散が可能になる
会社所有の不動産に従業員である家族を住まわせることで社宅家賃として経費計上が可能になる
相続人を従業員にして、株主にすることで相続税の節税になる

【デメリット】
不動産を会社名義にする際に費用(登記費用・登録免許税・不動産取得税・譲渡税等)がかかる
建物売却により、オーナーに消費税が課税される可能性がある
不動産のローンが残っていると、譲渡が難しい場合がある

委託管理方式:
不動産自体はオーナーの個人所有のまま、家賃の集金や清掃などの管理業務を会社に委託し、管理料をオーナーが会社に管理料を支払う方法。

賃貸借契約は個人オーナーと入居者が交わすこととなり、管理会社はあくまで「不動産の管理」のみを行う。

家賃収入自体は個人のオーナーに入るが、管理料として不動産管理会社に支払うこととなるため、会社に支払う管理料の分を諸経費をして計上することができ、その分を節税することが可能となる。

不動産の移転などが必要なく、会社を設立して、業務委託契約を結ぶだけなので比較的簡単に行える。

【メリット】
比較的簡単に始めることができる
家賃収入が多い場合、所得税率より法人税率のほうが低くなる
法人にすることで経費にできる項目が増える

【デメリット】
管理料の分しか節税できないため、他のスキームより節税効果が薄い

一括借上げ方式:
不動産は個人所有のまま、その不動産すべてを会社(サブリース法人)が一括で借り上げる方法。オーナーと会社で賃貸借契約を結び、会社はオーナーに賃料を支払い、さらに、会社は入居者と賃貸借契約を結び、賃料を徴収する上、物件の管理も行う。簡単に言えば「又貸し」をすることになる。

「オーナー→会社」への賃料より「会社→入居者」の賃料を15%程度が高く設定するのが一般的であり、その15%程度が会社の利益となる。結果として15%の収入を会社に移すことができるので、その分の節税が可能となる。

【メリット】
空室がある場合でも賃料に空室保証料を支払うことができるため節税が可能になる
家賃収入が多い場合、所得税率より法人税率のほうが低くなる
法人にすることで経費にできる項目が増える

【デメリット】
賃貸借契約が二重となり手続きが煩雑になる
個人と入居者で契約していた物件については会社と入居者の契約に切り替えなければいけない
15〜20%程度の所得移転効果しかないため、家賃収入が大きくなければ節税効果があまり見込まれない

参考・引用元

不動産管理会社の設立で節税対策|設立のメリットやタイミングとは?

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準確定申告

年の中途で死亡した人の場合は、相続人が、1月1日から死亡した日までに確定した所得金額および税額を計算して、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告と納税をしなければならない。これを準確定申告という。

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代償分割

分割しにくい遺産を相続した際に有効な遺産分割方法の一つ。複数いる相続人のうち、特定の相続人がその遺産を相続する代わりに、ほかの相続人に対して一定の代償財産を交付する分割方法である。

被相続人の自宅に同居していた相続人が住み続ける場合や、農業・事業などに利用する事業用不動産を相続する場合、法人の経営を引き継ぐために非上場株式を相続する場合などに利用されることが多い。

メリット:
土地や自宅などの遺産をそのままの使う人にとって、それを分筆したりする必要がなくなるため遺産分割をスムーズに行える。また、不動産を受け継いだ相続人と、不動産の代わりに代償財産をもらう相続人に不公平が生じないよう公平に遺産分割を行うことができる。

デメリット:
代償財産を支払いを行う者には相応の資金力が必要になる。また、代償金の算出では「相続税評価額」や「代償分割時の時価」など算出方法にあたって金額が変わるため、それによりトラブルが起きる場合がある。

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養子縁組による相続税の軽減対策

養子縁組をすることで節税対策となることがある。

養子縁組の手続き:
未成年者を養子とする場合は原則として家庭裁判所の許可が必要となる。ただし、自己または配偶者の直系卑属を養子とする場合は、家庭裁判所の許可が不要となる。また、養親となる人に配偶者がいる場合は、原則として、夫婦がともに養親となる縁組をすることが必要となる。

メリット:
養子が増えることで法定相続人の数が増えることとなる。そのため法定相続人の数に応じて非課税限度額が変動する、生命保険金や死亡退職金、遺産にかかる基礎控除額を増加(=想像税額の減少)させることができる。

デメリット:
孫養子の場合は相続税額の2割加算の対象となることや、法定相続人の数を増やすことで他の相続人の取り分が減るため相続争いの種となる可能性がある。また、養子縁組をすることが感情的に許容できるかを配慮する必要がある。

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直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税

2013年4月1日から2023年3月31日までに、直系尊属から30歳未満の者への教育資金の贈与について、受贈者1人につき1,500万円(学校等以外に払い出す金額は500万円)を限度として贈与税が非課税になる制度。

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直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税

2015年4月1日から2023年3月31日までに、直系尊属から20歳以上50歳未満の者への結婚・子育て用の贈与について、受贈者1人につき1,000万円(結婚関係での贈与については300万円)を限度として贈与税が非課税になる制度。

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個人の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除

別名、個人版事業承継税制。名前の通り、個人事業主における事業承継税制となる。法人とは対象の資産や条件などが異なる。

対象資産:

1  土地又は借地権:事業の用に供されている部分のうち、400㎡以下の部分
2  建物:当該建物の床面積のうち800㎡以下の部分
3  減価償却資産:機械、器具備品、車両、船舶、構築物、無形償却資産(特許権等)、生物(乳用牛、果樹等)その他一定の資産

デメリット:

1  すべての特例事業用資産等を一括して贈与する必要があること

先代事業者が本税制の対象となる資産(複数の事業を営んでいる場合には、事業承継する事業に係る資産)を一括して贈与する必要がある。そのため、土地は先代事業者が保有したまま、建物や機械等だけを贈与するといったことは認められていない。

2  相続時には、贈与時の価額で相続税を計算すること

贈与税の納税猶予制度の適用を受けたあと、その贈与者が亡くなった場合、その贈与された特例事業用資産等は相続により取得したものとみなして相続税の課税対象となる。

建物や機械等のように、時の経過により価値が減少する資産(減価償却資産)であっても、相続時の時価ではなく贈与時の時価(過去の高い価値)で相続税の計算することになるので、通常の相続税に比べて、相続税負担が重くなるケースも発生しうる。

3  登録免許税・不動産取得税の負担が発生すること

土地や建物を後継者に贈与した場合、贈与税のほかに、登録免許税や不動産取得税といった税金が課される。これらの税負担も加味して検討する必要がある。

4  小規模宅地等の特例とは選択適用となること

個人版事業承継税制と小規模宅地等の特例(特定事業用宅地等)とは選択適用となっている。個人版事業承継税制は後継者のみが恩恵を受けられますが、小規模宅地等の特例を選択した場合には後継者以外の相続人の相続税も安くなるため、後継者以外の相続人の同意を得たうえで、個人版事業承継税制の適用を受けることが望ましい。

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家族信託

認知症等に伴い、自分で自分の財産管理をできなくなってしまった時に備えて、家族に自分の財産の管理や処分をできる権限を与えておくこと。そのため、信託銀行などが資産管理を行う遺言代用信託等とは異なり、あくまで身内で行う財産信託である。

似たような仕組みである成年後見制度(任意後見)では、実際に自分が認知症等の状態になるまでは財産管理の委任をスタートさせることができないほか、後見開始後にも金額が大きい財産の処分を行う際に家庭裁判所の許可を得なくてはならないなどのデメリットがあり、贈与・相続したい本人の意向が必ずしも汲み取られるものとは限らない。

事業承継における利用用途としては、生前のうちに受益者を指定できることで、予め後継者を決めた状態で贈与が可能となる。

家族信託ってなに?手続きから費用まで徹底解説

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遺言代用信託

遺言信託とは似て非なる。遺言信託では遺言書の作成サポート、信託財産管理、被相続人の死亡時の遺言の執行、税務関連手続き、遺産分割といった、相続に関わる全般を信託銀行がサポートするものとなる。

その一方で遺言代用信託では、信託財産管理と被相続人死亡後の受益者(相続人)への財産給付のみを行うため、簡便的に財産を引き継ぐことができる。なお、節税を目的とした仕組みではないので、税に関するメリット・デメリットは基本的に無い。

メリット:
 ・あらかじめ死亡後の資金の受取開始時期や受取額・受取方法を決めておくことで、葬儀費用などすぐに必要となる資金をスムーズに引き出すことができる。(通常、被相続人の銀行口座から家族が預金を引き出す場合には、相続に関する手続を済ませなければならないが、遺言代用信託を締結していれば手続きが不要。)

・あらかじめ生存中の資金の受け取り方を決めておくことで、年金式に定時定額の給付を受けることができる。(受け取り方式を生前中に決定することができる。)

・中小企業のオーナーなどで、自身が保有する自社株を予め指定した後継者に相続させることができる。

デメリット:
遺留分侵害請求権に対抗ができない。つまり、遺留分侵害を請求された場合、それに応じて弁済する義務が発生する。

・信託財産額に応じて費用が発生するため、多額な資産がある場合はその分だけ信託銀行への手数料がかかる。

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贈与税配偶者控除

贈与財産のうち2000万円までの部分について贈与税が非課税になる制度。結婚20年以上の夫婦の間で自宅など居住用の不動産やその購入のための金銭を贈与した場合に適用ができる。基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるため、合計2110万円の控除となる。

条件としては以下の通り。

(1) 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
(2) 配偶者から贈与された財産が、 居住用不動産であること又は居住用不動産を取得するための金銭であること
(3) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産又は贈与を受けた金銭で取得した 居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること

なお、この控除は繰越が効かないので、贈与額が2000万円未満であっても、その年の計算にしか適用されない。加えて、計算した結果、納税額が0円になったとしても贈与税の申告は必要となる。

また、配偶者控除は同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができない。

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相続税配偶者控除

被相続人の配偶者が相続した遺産のうち、課税対象となるものの額が、次の金額のどちらか多い金額までであれば相続税がかからないという制度。

 1. 1億6,000万円
 2. 配偶者の法定相続分相当額

たとえば、相続人が、「配偶者と子」という構成であれば配偶者の法定相続分は2分の1となるが、課税対象となる相続財産が10億円あったとして、このうち法定相続分である5億円までは配偶者が相続すれば相続税はかからないということとなる。

また、被相続人が残した財産が1億6,000万円以内であれば、すべての財産を配偶者に分割することによって、相続税の総額をゼロとすることも可能となる。ただし、相続税額がゼロになる場合であっても、配偶者控除を適用するには相続税の申告が必要。

デメリット:
積極的に配偶者に遺産を分割してしまった場合に、後々の二次相続の際に相続税の問題が生じる可能性がある。というのも配偶者から子に対する相続ではこの控除は適用されないため、配偶者に相続した財産が丸々課税対象となるためである。

相続税の配偶者控除は1.6億 使いすぎると落とし穴も! | 相続会議

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相続の放棄

相続権を持つ法定相続人が、被相続人の残した財産の一切の相続を拒否すること。そのため、資産だけではなく負債含めた両方を一切受け取らないということを意味する。また、相続を放棄した場合は最初から相続人としていないものとみなされるため、代襲相続人も発生しない。

相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に手続きが必要で、他の相続人の許可なく単独実施が可能。また、一度相続の放棄をしてしまった場合は、3ヶ月以内であっても取り消しは認められない。

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遺産分割

遺産分割には、指定分割、協議分割、調停分割、審判分割の4通りがある。

指定分割被相続人の遺言があり、遺産分割の方法について具体的に指示されている場合には、遺言に示された故人(被相続人)の意思が尊重され、その意思に基づいた財産分割を行うこと。

協議分割被相続人の遺言が無い場合に、相続人全員で話し合い、遺産分割協議を成立させ、財産分割を行うこと。

調停分割:協議分割をしようとしたが、感情的な対立などで相続人の間で協議がまとまらない場合や、協議に応じようとしない相続人がいる場合には、家庭裁判所に対して、遺産分割の調停を申立て、裁判所を通じて話し合って分割を行うこと。

審判分割:調停分割でも話し合いがまとまらなければ、裁判官(家事審判官)が遺産の分け方を決めて分割を行うこと。

遺産分割の話がついたら、遺産分割協議書を作成する。作成にあたっては必ず相続人全員の署名と実印の捺印が必要となる。分割協議は、必ず相続人全員で行わなければならず、相続人に未成年者がいる場合は、その代理人の参加も必要となる。相続人が1人でも欠けた状態で行うと、その結果は無効となる。

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配偶者居住権

先立たれた配偶者が、遺産分割のために自宅を手放す事態を避ける、もしくは自宅に住み続けるがために現金など他の財産が受け取れなくなり、生活に窮する事態に陥ることを避けるために設けられた権利。これにより、遺産分割後に居住地から追い出されることなく、引き続き相続前からの家に住み続けることができるようになった。

デメリット:
相続が発生した時に自宅に住んでいた配偶者にだけ認められる権利のため、家族を含む第三者に売却できない。そのため、一度設定してしまうと、配偶者は、配偶者居住権を売ることができず、住み続けるしかない。病気を患って自宅に住み続けるのが難しくなり、老人ホームなどに移ろうと考えても、自宅を売却して入居費用を捻出することはできない状態となってしまう。

また、売却できないので担保価値が落ちて、お金の借り入れも難しくなる。しかし、自宅の所有者である子どもの了解を得ることができれば、賃貸用住宅として使い、賃料を得ることは可能となる。

配偶者居住権とは? 問題点と制度の概要をわかりやすく解説 | 相続会議

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法定相続情報証明制度

相続手続では被相続人の戸除籍謄本等の束を、相続手続を取り扱う各種窓口に何度も出し直す必要があるが、法定相続情報証明制度を用いることで、登記所(法務局)に戸除籍謄本等の束を出し、併せて相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を出しすことで登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付してもらう。その後の相続手続は、法定相続情報一覧図の写しを利用することで、戸除籍謄本等の束を何度も出し直す必要がなくなる。

法定相続情報一覧図の保管期間中(5年間)は、一覧図の写しを再交付することが
可能。

以下資料の2ページ目が分かりやすい。

https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001331397.pdf

FPの職業倫理規定

顧客利益の優先:
FPには自己や企業の利益を優先せず、「顧客の利益を優先する」という姿勢が求められる。プランニングの主体は顧客であり、プランを実行(最終意思決定)するのはあくまで顧客であるということを忘れてはならない。FPの提案内容と顧客の希望が合致しない場合はその提案を無理に通すのではなく、十分に顧客と話し合い、それでも受け入れられない場合は潔く撤回すべきである。

守秘義務の遵守:
FPの業務は顧客の収入・支出・資産・負債などに関するあらゆるデータを前提に、継続的なプランニングを行うものである。これは、顧客との信頼関係の上に成立しており、顧客情報の守秘義務には特に留意しなければならない。顧客の情報が漏洩すれば、内容によっては刑事罰までありえる。何よりも、顧客からの信頼が失墜することに十分留意すべきである。

顧客に対する説明義務:
FP業務の遂行にあたって提案を行う際は、金融・不動産各種商品の性質、税金、各種法令について、顧客の十分な理解を得る必要がある。金融機関等に所属する企業内FPはもちろんのこと、独立系FPも金融商品等の販売仲介に関与する場合は、金融商品取引法金融商品販売法および消費者契約法に規定された説明義務が生じる。これらの法律の趣旨・目的を十分理解し、重要事項を適切に顧客に説明することが重要である。

コンプライアンスの徹底:
FPが遵守すべき法令として、金融商品販売法などの他、著作権法が挙げられる。FPは他人の著作物について著作権を侵害することのないよう気をつけながら業務を遂行する必要がある。ただし、法令、条例、通達、判決などは著作権がないことから自由に引用することができる。また、税理士法や弁護士法など関連業法にも注意が必要である。その他、金融商品取引法銀行法などの業法や刑事法令等の一般法令を遵守すべきことは言うまでもない。

能力の啓発:
FP業務の対象が幅広く、顧客ニーズも多岐にわたるため、FP業務上必要となる専門知識、スキルは広範に渡る。陳腐化した知識に基づいたプランニングは無意味なものになる可能性さえある。毎年の各種改正(法令・税制・社会保険制度など)に注意し、常に能力の啓発を怠らぬよう心がけたい。

インフォームドコンセント
顧客に十分納得(合意)してもらった上で計画を実行してもらう必要がある。FPがプランニングを進めるにあたっては、現状の捉え方や前提条件を顧客の立場で十分説明し、理解されたかを確認しながら進めなければならない。FPに求められるインフォームド・コンセントとは顧客とFPが情報を共有するということである。

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不動産分野(Part2)

借地権

他人の土地を借りて自己所有の建物を建てられる権利のこと。借地借家法により、普通借地権と定期借地権が定められ、さらに定期借地権については細分化した権利が存在する。普通借地権は賃貸借契約の更新が行えるが、定期借地権は更新が行えない。

普通借地権

借地権の存続期間を当初30年、1回目の更新では20年、2回目以降は10年とし、賃貸借契約の期限がきても、地主の側に土地を返してもらう正当の事由がなければ、借地人が望む限り借地契約は更新されるというもの。また、契約終了時に借地人が建てた建物が残っているときは、地主に建物の買い取りを請求することもできる。(=建物買取請求権)

定期借地権

・一般定期借地権

50年以上もの長期間にわたり、土地を利用することができる借地権。定期借地権なので更新は不可能だが、契約終了後に再度一般定期借地権を契約することで事実上期限を延長できる。

用途に制限は無く、居住用、事業用などで利用が可能だが、建物買取請求権はなく、契約終了すると更地にして貸主に返還をする必要がある。

・事業用定期借地権

事業用途に限った借地権となっており、期間は10~50年未満となる。10~30年未満だと建物買取請求権が無く、更地にして貸主に返還をする必要があり、30年~50年未満での契約であれば建物買取請求権を特約として設定できる(とはいえ、更地にして貸主に返すのが原則。)他の借地権とは異なり、契約にあたっては公正証書による契約が必要。

・建物譲渡特約付借地権

建物買取請求権が前提となった借地権。期間は30年以上となり、契約終了時には借地権の消滅と建物の所有権の貸主側への移転が発生する。

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借家権

借地権が土地を借りる権利に対して、借家権は建物を借りる(入居側)の権利。借地借家法は「しゃくちしゃっかほう」と読むが、借家権は「しゃくやけん」と読む。

普通借家契約

●契約期間:契約期間は1年以上で設定するが、契約期間を1年未満とした場合には、期間の定めのない契約となる。

●借主からの中途解約:中途解約に関する特約を定めることができる。解約の予告期間や、直ちに解約する場合に支払う金銭の額などを定める。

●貸主からの解約:借主が引き続き住むことを希望している場合には、貸主からの解約や、契約期間終了時の更新の拒絶は、貸主に正当な事由がない限りできない。したがって、普通借家契約の契約期間は貸主の事情と借主の意向に左右されることになる。

定期借家契約

普通借家契約は、借り主を保護するために、貸し主は正当事由がない限り契約の更新を拒絶できないとされているが、定期借家契約においてはそのような制約がない。詳細は以下の通り。

●契約期間:契約の更新がない契約で、契約期間が終了した時点で確定的に契約が終了し、確実に明渡しを受けることができる。なお、契約期間は自由に定めることができる。

●契約の締結方法:契約期間を確定的に定めた上で、公正証書等の何らかの書面によって契約することが必要となる。また、契約書とは別にあらかじめ書面を交付して、契約の更新がなく、期間の満了とともに契約が終了することを借主に説明義務があり、貸主がこの説明を怠ったときは、その契約は定期借家としての効力はなくなり、普通借家契約となってしまう。

●中途解約:居住用建物の定期借家契約では、契約期間中に、借主に転勤、療養、親族の介護など、やむを得ない事情が発生しその住宅に住み続けることが困難となった場合には、借主から解約の申し入れが可能となる。この場合、解約の申し入れの日から1ヶ月が経過すれば、契約が終了するが、この解約権が行使できるのは、床面積が200㎡未満の住宅に居住している借主に限られる。なお、中途解約に関して個別に特約を結ぶことは可能。

●契約終了時:契約期間が1年以上の場合は、貸主は期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に、借主に契約が終了することを通知する必要がある。なお、貸主と借主が合意すれば、再契約することは可能となる。

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貸家建付地

貸家の敷地の用に供されている宅地、すなわち、所有する土地に建築した家屋を他に貸し付けている場合の、その土地のこと。例えば自分が持っている土地にマンションを建てて、そのマンションに人を住ませている場合であり、この時、土地とマンションは自分の所有物だが、実際に住んでいるのは他人という状態となる。

そのため、相続税評価額=自家用地価額-自用地価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合により評価額を算出することで、幾分かの節税を見込むことができる。

借地権・貸家建付地等の相続税評価額について整理してみた - 30代の資格取得ブログ

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居住用財産を譲渡するときの特例

売買に関する特例は以下、1~5がある。

1.居住用財産の3000万円の特別控除

マイホーム(居住用財産)を売ったときに、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例となる。つまり、3,000万円以上の譲渡益がでなければ、この控除で譲渡所得は0円とすることができる。よほど儲けが出ない限りは譲渡税は取られない。

2.居住用財産の軽減税率の特例

マイホーム(居住用財産)を売って、一定の要件に当てはまるときは、長期譲渡所得の税額を通常の場合よりも低い税率で計算する軽減税率の特例を受けることができる。長期譲渡所得に対する軽減税率なので、所有期間が10年以上あることが条件。

課税長期譲渡所得金額(譲渡所得から、居住用財産の3000万円の控除をした残りの金額)について、6000万円を境に税率が変わり、6000万円以下の部分は14.21%、以上の部分は20.315%となる。

3.被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

相続によって取得した空き家を一人暮らしだった被相続人が死亡した日以後3年を経過した日の属する年の12月31日までに譲渡したときは、その空き家を譲渡して得た利益から3,000万円を控除ができる。

いくつか条件があるが主なものは以下の通り。

・昭和56年(1981年)5月31日以前に建築されたこと。=旧耐震基準の建築物であること。
・相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。
・区分所有建物登記がされている建物でないこと。

なお、売却時には譲渡の時において一定の耐震基準を満たす必要がある。つまり補強して売るか、更地にして土地のみを売る必要がある。

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相続税の取得費加算の特例

名前の通り、相続税を取得費に加算ができる。

相続後3年10か月以内に相続財産を売却した場合は、相続税額の一部を取得費に加算することにより、譲渡所得にかかる税金が軽減される。なお、空き家の譲渡所得の特例と取得費加算の特例は、いずれかの選択適用となる。

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土地の無償返還に関する届出書

社長が自分の会社に土地を無償で貸すと、会社は借地権を無償でもらったことになり税金がかかる。(借地権の認定課税)そのため、会社が社長に権利金を支払う、会社が社長に相当の地代として年間で地価の6%に相当する地代を支払う等を行うことで、その課税を回避することができる。

しかし、社長が個人の資産を無償で貸し出すことに対して、会社が権利金や割高な地代を支払うことは理屈に合わないということから、会社と社長の連名で「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出することで、権利金や割高な地代を支払うことなく借地権の認定課税を回避することが可能となる。

ただし、以下の場合には適用されないので注意が必要となる。

・個人同士の賃貸借の場合
・届出書は遅滞なく税務署に提出しない場合
・土地を無償で返還することを契約書に明記しない場合
・地代は無償にしない場合(※地代が無償でも認定課税の回避は可能だが、相続の際に土地に小規模宅地等の特例を適用できなくなるデメリットが発生する。)

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特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例

名前が長くてややこしいが、ポイントは「事業用資産」と「買い換え」である。

・個人が、事業の用に供している特定の地域内にある土地建物等(譲渡資産)を譲渡
・一定期間内に特定の地域内にある土地建物等の特定の資産(買換資産)を取得
・その取得の日から1年以内にその買換資産を事業の用に供する

上記の場合、一定の要件のもと、譲渡益の一部に対する課税を将来に繰り延べることができる。(繰延なので、譲渡益が非課税となるわけではない。)また、買換資産が土地等であるときは、取得する土地等の面積が譲渡した土地等の面積の5倍までを対象とすることができる。

計算方法は以下の通り。

①収入金額:譲渡資産の譲渡価額-譲渡資産の譲渡価額と買換資産の取得価額の低い方×80%
②必要経費:(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×収入金額/譲渡資産の譲渡価額
③譲渡所得:①-②

つまり、①においては、買い換え資産が譲渡資産より高ければ本来はそのまま譲渡価額分に対して課税されるはずだが、それを0.8掛けして引く(結果的には0.2掛け)することで、その分の譲渡所得は繰り延べることができるということである。逆に買い換え資産が譲渡資産より安ければ、譲渡価額と買換資産の差額分が課税されるはずだが、これについても買換資産の取得価額を0.8掛けして引くことで、その分の譲渡所得を繰延べている。

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建設協力金方式

地主がテナントと賃貸借契約を結び、そのテナントから貸与された保証金や建築協力金で、テナントの店舗を所有地に建築するという方法。

幹線道路沿いのスーパーやレストラン、コンビニといった店舗の出店に用いられてきた方式で、テナントが建築協力金という名目で、保証金及び敷金を差し入れ、その資金を基に、テナントの業態にあった建物を建築し、リースする。事業用借地に比べると、建物も地主の所有となるため、経営リスクは若干高くなるが、収益(賃料)は借地に比べ多くなり、また、自己資金を低く抑えられることもメリットです。

デメリットとしては、テナントが撤退した場合に建物が残ってしまうため、その扱いをどうするかというリスクをオーナーが負うことになる。

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等価交換方式

土地所有者が建設会社(ディベロッパー)などと契約して、土地の全部や一部をディベロッパーに提供し、建物を建築してもらい、売却した土地の価格に相当する建物の区分所有権を得る方法。土地を手放す代わりに、それと等しい価値の建物の区分所有権を得ることができるので、「等価交換」という。つまり土地が建物の一部の所有権に変わるイメージである。

等価交換をすると、土地の所有者はマンションなどの建物の区分所有権を手に入れることができるので、その区分所有権を自由に利用できるようになる。

たとえば、自分がそのマンションに居住する、人に貸して家賃収入を得る、子どもなどに生前贈与するなど可能となる。

等価交換方式には全部譲渡方式と部分譲渡方式がある。

全部譲渡方式:
土地全部を売却(譲渡)して、それに相応する建物の区分所有権を取得する方式。土地所有者は、さきに土地をすべて手放すことになる。そして、建物ができた段階で、区分所有権の分の所有権をもとの土地所有者のものとして登記する。
つまり、土地の所有権を先渡ししてしまい、建物が建つまでは何の権利も無い状態となってしまうリスクがある。

部分譲渡方式:
土地の一部の所有権を売却(譲渡)する方式。部分譲渡なので、残りの土地所有権は土地所有者が持ったままとなり、土地の所有者はもとの所有者とディベロッパーの共有状態となる。

土地所有権を移すことはなく、そのまま先に建物を建て、建物が建った時点で土地の一部の所有権をディベロッパーに移し、建物の一部の区分所有権を土地の所有者名で登記する。

メリット:
・ローンを組まなくても区分所有権を手に入れることが可能となる。通常マンションを建設しようとするとそれ相応の借り入れをしないといけないが、土地と引き換えに区分所有権を手に入れられる。

・土地を賃貸すると、借地権価格が引かれるため、土地の相続税評価額が下がる。土地をそのまま所有していて相続が発生すると100%の相続税評価額となるが、マンションが建っている場合、借地権割合の分評価額が減額されることで、土地の評価額が下がって相続税が低くなる。

・「立体買い換えの特例」により譲渡所得税の猶予が可能となる。ただし、猶予であり免除ではないので注意が必要。立体買い換えの特例については後述する。

デメリット:
・土地を失う。特に全部譲渡方式の場合はすべて失って部分的な建物の区分所有権しか手元に残らないことになる。また、等価交換後は、土地を自分の都合で利用することができなくなり、新たな所有者となったディベロッパーの意向に左右されることになってしまう。

ディベロッパーに主導権を握られる。等価交換をするときには、素人である土地所有者とプロの組織(企業)であるディベロッパーが共同して進めることになるため、等価交換のもととなる土地の評価や建物の内容、施工などについて、ディベロッパーに主導権を握られることがある。

・交換基準が明確でない。等価交換をするときには、明確な交換基準がないため、ディベロッパーが計算を行い、「土地と等価」とされる部分を割り当てられる。この時、建物については原価にディベロッパーの利益を乗せた価格で評価されるので、土地値の方が安く評価されてしまうことがある。

ディベロッパーが第三者に土地を譲渡する可能性がある。部分譲渡方式を利用すると、土地についてはもともとの土地所有者とディベロッパーの共有となるが、ディベロッパーが第三者に土地を売却する可能性もある。その場合、土地については、見知らぬ第三者との共有状態になってしまうので、トラブル発生の原因につながる。

引用元:

知っておきたい「等価交換」~建築費負担なしの土地有効活用法とは?~

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立体買い換えの特例

正式名称は「中高層耐火建築物等の建設のための買換えの場合の課税の特例」である。等価交換方式における税を繰り延べることができる。

等価交換方式により土地をディベロッパーに譲渡した時、交換差益が譲渡益として課税される。つまり、3000万円の土地と5000円分の区分所有権を交換した場合、2000万円の益が出ているという扱いになる。この時、取得費や譲渡費用が1000万円とした場合、1000万円×3000万円/5000万円=600万円を取得費・譲渡費用として、2000万円-600万円=1400万円が譲渡所得の扱いとなる。(居住用財産の買換え特例と同じ考え方)

ただし、先述のとおりあくまで「繰延」のため、非課税になるわけではない。

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固定資産の交換の特例

固定資産である土地や建物を同じ種類の資産と交換したときは、譲渡がなかったものとして、課税されない。主な要件は以下の通り。

同一用途であること(土地と土地、土地と借地権等。土地と建物の交換はNG)
・交換後もその用途で使い続けること。(宅地なら宅地のまま)
・1年以上所有していたこと。(この特例のために買ったものはNG)
・交換差益は時価が高い方の資産の20%以内とすること。

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タワーマンション節税

相続税が発生する場合、被相続人の財産の価格は相続税評価額となるが、タワーマンション相続税評価額と時価の開きがとりわけ大きくなることで、節税効果がある。というのもマンション(区分所有建物およびその敷地)の相続税評価額は、マンション全体の敷地を路線価で評価し共有持分で按分する。つまり、面積に応じた評価額となるため、高層階であっても低層階であっても、相続税評価額としては同じ金額となる。

ここで、一般的にタワーマンションの市場価格は高層階ほど割高となるため、その差額分に節税効果が働く。例えば時価1億円の分譲価格が、相続税評価額では3000万円だとした場合、相続税は3000万円分の評価となる。

また、タワーマンションに限らないが、不動産投資における節税効果として、土地は貸家建付地、建物は貸家として評価することで、一定の割合を評価額から差し引くことができる。

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FPで調べておくこと

現地調査:現地での目確認、聞き取り調査
登記には公信力がなく必ずしも登記の記載内容が妥当かが不明であり、実物を見て判断するべきであるため。

権利関係の確認:建物に対する登記の確認、相談者の意思確認

法令上の制限:家族信託などのスキーム確認

周辺環境や市場調査:土地の資産価値査定、不動産売却額の妥当性確認

課税関係や非課税等の特例:立体買換の特例や事業承継税制など

相談者へのヒアリング:相続の意思

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専門職業家

税理士:具体的な税額計算や税務相談。特例を適用した場合の計算や相続税の具体的な課税額の計算。

宅地建物取引士:土地の譲渡契約(媒介契約)、マンションの売却、収益物件の購入など。

公認会計士:会社の経営に関するアドバイスや指導、税務、会計業務

建築士:建物のリニューアルまたは建替え。建築資金の妥当性。

司法書士:登記業務や成年後見制度の相談や依頼。所有移転登記・抵当権登記など。(権利に関する登記)

土地家屋調査士:登記を目的とした土地の測量や分筆や登記など。(区画や建物構造に対する登記)

弁護士:具体的な法律相談。売買契約書などの契約書類の内容検討。

行政書士:遺言書の起案・作成の支援、遺産分割協議書の作成、相続財産の調査、許認可申請

不動産鑑定士:不動産の鑑定評価。土地や借地権の評価額の査定、等価交換方式の適正な比率査定、不動産売却額の妥当性検証など。

測量士:土地の地積の測量、土地の分筆など(登記はできない)

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