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【事例IV】財務諸表上のキャッシュフロー(特に間接法における営業キャッシュフロー)の考え方についてわかりやすく整理

財務諸表に記載するキャッシュフロー(特に間接法における営業キャッシュフロー)について整理する。

間接法による営業キャッシュフローの計算については、証券アナリスト試験にも出てきたものの、1つ1つの細かい増減については問われず、せいぜい売上債権、棚卸資産仕入債務の増減を元にした計算くらいであった。そのため、減価償却の考慮だったり営業外収益の扱いといったことはほとんど気にせず、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローからフリーキャッシュフローを求めて終わりであった。

しかし、中小企業診断士の事例4では営業キャッシュフローの内訳1つ1つについて結構細かいところまで問われてしまうという厳しいものである。それぞれ丸暗記して無理やりひねり出すこともできなくはないだろうが、やはりこういうやり方だとイレギュラーな問題が出てしまった時に対応ができなくなってしまう。

そのため、今一度考え方を整理する。

キャッシュフロー計算書の目的

企業会計において、発生主義に基づいた会計報告を行う場合、必ずしも利益と現金残高が一致しないという事象が起こり得る。つまり、1,000千円の売上を計上しても、それが全部売上債権であり、売掛金の回収ができていない可能性がある。その状態で買掛金の支払いや負債の返済をしたくても、売掛金の回収ができていないと現金が枯渇して支払えなくなってしまう。いわゆる黒字倒産である。倒産の定義は揺れがあるものの、基本的な考えとしては赤字になることではなく、不渡り(支払いの滞り)をおこすことを指す。

これらをチェックするために、PLだけではなく現金ベースでの実態に沿った報告が求められるようになった。そこで生まれたのがキャッシュフロー計算書となる。

キャッシュフローの区分

営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローの3つがある。

営業キャッシュフローは本業により発生したキャッシュフロー。つまり商品売買や給料の支払いなどである。これは利益に直結する部分でもあるので、黒字を出せてる企業であれば普通はプラスとなるはず。逆にマイナスとなると本業がイケてない(売掛金が回収できていない、不良在庫が残っている等)可能性があることを示唆する。

投資キャッシュフローは設備投資や有価証券売買、固定資産の売買におけるキャッシュフローである。その性質上基本的にはマイナスとなる。考えようによっては投資キャッシュフローがある程度マイナスになってないのは、適切な投資ができていないとも読み取れる。

財務キャッシュフローは資金調達に関連するキャッシュフローである。具体的には負債の借入や返済、社債の発行・償還、配当金、自己株式取得などによるキャッシュフローを表す。プラスの場合は資金を借り入れたり、株式発行をして資金調達をしている状態、マイナスの場合は借入金の返済や配当金の支払いをしている場合である。基本的にはマイナスとなることできちんと返済や配当をしていると読み取れることとなるが、企業運営上にてそれなりの資金調達は必要にもなるのでプラスが悪いとも言えない。状況次第と言えるだろう。

またこれらをもとにフリーキャッシュフローを計算ができる。つまり、あれやこれやで現金の入出金が発生した結果、結局どんだけ使える現金があるのか?を表すもので、求め方としてはフリーキャッシュフロー=営業キャッシュフロー+投資キャッシュフローとなる。

例えば営業キャッシュフロー:+100、投資キャッシュフロー:△40であればフリーキャッシュフローは+60ということになる。つまり、本業で稼いだ結果と投資した結果から残った金額となるわけだが、ここから株主配当や債権者返済をしていくことになるので、投資家目線としてこの会社から配当なり返済なりができそうか、を見る指標となるわけである。

営業キャッシュフローにおける直接法と間接法

さて、次に営業キャッシュフローを見ていく。

まず、営業キャッシュフローの計算においては直接法と間接法がある。試験で問われるのは間接法での計算となっているため、基本的に直接法について気にする必要は無い。しかし、ここでは一度直接法との違いを改めて整理する。

直接法

取引ごとにキャッシュフローを表記する方法。例えば経費の支払いとか、商品の販売などである。なので1つ1つのキャッシュの動きは明確なので直感的に理解がしやすい。イメージは以下の通り。

商品の販売 +1,500

商品の仕入れ △600

給料の支払い △200

経費の支払い △100

小計 +600

法人税の支払い △240

営業キャッシュフロー +360

問題は各取引ごとにキャッシュの動きを集約をしないといけないという点である。

例えば「商品の販売」といっても、どの客にどの価格でどれほど売ったかはバラバラになるであろう。これらを集約していかないといけないので事務的な負荷が高くなる。もちろんそういった取引の中には売掛金などで実際にキャッシュが動いてない取引もあるだろうから、そういった取引は売掛金の回収額から集約計上していくことになるし、費用項目については未払費用の控除などの考慮が必要となるであろう。

間接法

で、直接法は事務負荷が高いということで、現実的にはほとんど間接法が採用されている。間接法のコンセプトとしては、BS/PLからキャッシュフローを求めるということである。つまり、頑張って集約計上しなくても、もともと算出していたBS/PLから逆算することでキャッシュフローを算出するというわけである。ただし、具体的な取引ベースでの計上とならないので、増減理由が直感的に分かりづらいというデメリットがある。以下イメージである。

税引前利益 +1,500

売上債権の増加 △600

棚卸資産の増加 △300

減価償却の増加 +100

仕入債務の減少 △100

支払法人税 △240

営業キャッシュフロー +360

営業キャッシュフローにおける個別の内訳について

営業キャッシュフローにおける内訳はざっくり以下の通り

税引前利益

資産・負債の増減

非資金費用の増減

営業外損益の増減

小計

利息の受取・支払い

法人税の支払い

これら1つ1つを見ていく。

税引前利益

まず起点となるのは税引前利益である。これをベースに各種増減を調整することで営業キャッシュフローを求めていく。

資産・負債の増減

テクニカルに言えば資産の増減はキャッシュフロー減増になるし、負債の増減はキャッシュフローの増減になる。

例えば売上債権の増加は利益に寄与するが、現金が増えているわけではない。要は売上を計上したけど売掛金のままという状態である。つまり、PLとしては「現金が増えてないのに利益が増えている」ということになるので、キャッシュとして見た場合は売上債権の増加分を利益から控除する必要がある。

売上債権の減少はその逆で、これ自体は利益に寄与しないが、売掛金を回収した状態なので現金は増える。そのため、売上債権の減少であれば利益に対して追加することとなる。

債務も同じように考えると、仕入債務の増加は費用計上となるため利益に対してマイナスに作用するが、まだお金は払ってないので買掛金のままということになる。つまりPLとしては「現金が減ってないのに利益が減っている」ということになるので、キャッシュとして見た場合は仕入債務の増加分を利益に対して追加してやる必要がある。

そして仕入債務の減少も同様に考えると、買掛金に対して支払いをしたことになり、これ自体は利益に影響しないが、キャッシュは減ってしまっている。そのため、仕入債務の減少は利益から控除してやる必要がある。

非資金費用

仕入債務の増加と似た考えとなる。つまり、非資金費用は「現金が減ってないのに利益が減っている」状態となるので、キャッシュとして見たときにはそれを戻してやる必要があるわけである。

つまり、以下のような仕訳で、現金流出は無いけど費用計上されるわけである。

減価償却費|減価償却累計額

貸倒引当金繰入額|貸倒引当金

のれん償却|のれん

減損損失減損損失累計額

租税公課|未払消費税

なのでこれらの費用項目は利益から足してやってキャッシュ調整をする必要がある。

なお、未払消費税は借方が租税公課→損金計上ができるため非資金費用となるが、未払法人税は借方が「法人税等」で損金計上とならないため非資金費用の扱いとならない。(最後の支払い法人税で調整をする。)

営業外損益

これは営業利益との整合性を見るために行う加減算である。つまり、スタート地点が税引前利益であるため、営業キャッシュフローの名の通り営業活動に即した値とするための調整である。

計算だけで言えば営業外費用は加算、営業外収益は減算という逆の計上をする必要がある。なぜなら、税引前利益は営業利益に対してそれらが反映されている状態なので、営業利益相当に戻すには逆算しないといけないからである。

つまり、PLで表すと以下のようになり

営業利益 +100

営業外利益 +10

営業外費用 -30

税引前利益 +80

税引前利益から営業キャッシュフローに持っていくために調整を行うことになる。

税引前利益 +80

営業外利益 -10

営業外費用 +30

営業キャッシュフロー +100

※便宜上このような記載にしているが、上述の資産増減や非資金費用の考慮があるため、通常は営業利益=営業キャッシュフローとはならない。

なお、特別損益についても同じ考えを適用する。特別利益があれば控除し、特別損失があれば加算する。

小計

で、ここでなんで小計が出てくるか、である。

この小計は営業活動により生じた分を反映しているキャッシュフローであることを表しているためである。

つまり、最終的な営業キャッシュフローはこの下の法人税の支払いとかもしたものであるが、そのうち、営業活動による部分はどれだけ?を表すために一旦ここで小計として区切っているのである。

利息の受取・支払

そして営業キャッシュフローを算出するにあたり、小計から利息の受取・支払いを足し引きする。ある意味ここは営業利益から営業外損益を足し引きして税引前利益(経常利益)を出すようなイメージと一致する。

しかし、ここでは営業外損益ではなく「利息の受け取り・支払い」で計算を行う。というのもあくまでここで求めたいのはキャッシュフローだからである。

例えば以下のような場合、営業外損益キャッシュフローはズレることになる。

現金 20|受取利息 20

受取利息 10|前受利息 10

キャッシュフローでみれば+20だが、営業外利益で見れば+10である。

そのため、この場合は利息の受取+20を計上してやる必要がある。

特別損益についても、キャッシュによるものであれば考慮する必要がある。例えば、なんらかの現金を受け取ったことでの特別利益であれば、それを足す必要がある。ただし、一般的に特別損益は固定資産の売却益や災害による損失といったものなので、直接現金と結びつくものは基本的に無いであろう。そのため、事実上は特別損益についてここで足し引きすることは原則無いはずである。

法人税の支払い

これは純粋に支払った法人税の額を計上する。のだが、PLに記載されている法人税は支払った法人税ではなく、利益から計算した法人税となっているので、厳密には支払った金額となっていない。そのため真面目に計算する場合は未払法人税等を考慮する必要がある。

前期末未払い法人税:100
当期末未払い法人税:120
 →つまり未払い法人税は20増加(負債の増加→キャッシュはプラス)

PLの法人税:90 
 →キャッシュフロー上は△90

よって、支払い法人税=△90+20=△70

もちろん未払い法人税が前期→当期で減少すればそれはキャッシュのマイナス要因となるので、支払い法人税が増加する(もっとキャッシュを支払う)こととなる。

 

参考サイト:

キャッシュフロー計算書は直接法と間接法どちらが良い?わかりやすい作り方は? | クラウド会計ソフト マネーフォワード

https://www.ey.com/ja_jp/corporate-accounting/commentary/cash-flow/commentary-cash-flow-2012-12-14

間接法によるキャッシュフロー計算書の考え方をわかりやすく解説 | 会計ノーツ

キャッシュフロー計算書とは?見方と、間接法・直接法の違いを解説 | 経理プラス