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相続における非上場株式の評価額計算をわかりやすく整理してみた

FP1級の応用問題のために整理してみる。

相続において株式を継承する際に、評価をするにあたり一定の方式に基づき計算を行う必要があるため、そのあたりを整理する。とりわけ、非上場株式については市場価格がついていないことで、あれやこれやで計算して評価額を算出する。

一般社団法人金融財政事情研究会ファイナンシャルプランニング過去問題利用許諾済
2021月7月29日許諾番号2107K000003号

なお、参考までに上場株式については、以下のうち最も低いものを評価時価として算出する。

1 課税時期の最終価格
2 課税時期の月の毎日の最終価格の平均額
3 課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額
4 課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額
課税時期:相続又は遺贈の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日

まず、非上場株式を贈与や相続で取得した株主が、同族株主かそれ以外の株主かによって評価方法が変わる。同族株主か否かで会社経営への影響度(支配力)が変わるため、支配力によってその株式を保有している目的も変わってくると考えられるからである。

これについての細かい条件などは条件が複雑なので詳細は割愛するが、ざっくり言えば、同族会社や議決権を多く占める支配的な立場であれば原則的評価方式、そうでなければ特例的評価方式となる。

ここでいう同族は基本的に親族のことを指す。

原則的評価方式

会社規模に応じて選択する評価方式が異なる。以下の通りの整理となる。

会社規模 原則的評価方式 備考
大会社 類似業種比準方式
純資産価額方式でもよい
中会社 類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式
小会社 純資産価額方式 類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式でもよい

 

類似業種比準方式

類似業種比準価額は、事業内容の類似する上場企業の株式の株価に比準して株価を評価する。具体的には以下の式の通り。

A \times \cfrac{\cfrac{b}{B}+\cfrac{c}{C}+\cfrac{d}{D}}{3} \times E \times \cfrac{一株当たり資本金等の額}{50円}

A:類似業種の上場会社の株価。以下のうち最も低い値を採用する。
 1 課税時期の月の類似業種株価(平均額)
 2 課税時期の前月の類似業種株価(平均額)
 3 課税時期の前々月の類似業種株価(平均額)
 4 類似業種の前年平均株価
 5 課税時期の月以前2年間の平均株価

B:類似業種の1株当たり配当金額
b:評価会社の1株当たり配当金額
C:類似業種の1株当たり利益金額
c:評価会社の1株当たり利益金額
D:類似業種の1株当たり純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)
d:評価会社の1株当たり純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)

E:斟酌(しんしゃく)率。大会社が0.7、中会社が0.6、小会社が0.5となる。

また、b、cを個別に算出する方法は以下の通りである。

b=\cfrac{2年間の配当金額(記念配当など臨時配当を除く)÷2}{発行済み株式数}

cについては以下のいずれかのうち小さい方を採用する。
c=\cfrac{1年間の利益金額}{発行済み株式総数}
c=\cfrac{2年間の利益金額の合計÷2}{発行済み株式総数}

要はbは2年平均での1株あたり配当、cは直近1年の1株当たり純資産もしくは2年平均での1株あたり純資産ということを表す。

なお、それぞれの発行済株式総数は1株あたり資本金額を50円としたときの株式数となる。つまり、資本金額が8,000万円だとすると、これを50円で割って、発行済株式総数は160万株となる。わざわざこんなことをしているのは、債券が100円単位で発行するのと同じような考えで、かつて株式は50円単位で換算する商習慣があり、それに基づいているためと思われる。

純資産価額方式

株式を会社財産に対する持分と考え、会社の純資産額に基づいて株式の評価額を算定する。具体的な式は以下の通り。

1株あたり純資産価額=\cfrac{純資産評価額-純資産評価益*37%}{発行済株式総数}
純資産評価:資産の評価額-負債の評価額
純資産評価:純資産評価額-純資産簿価額

なお、純資産評価に対して37%を乗じているのは、この評価益に対する法人税相額としているためである。これを控除することで、残存する純資産価額を算出する。

併用方式

併用方式は、その名の通り類似業種比準方式と純資産価額方式を併用して算出する。考え方は以下の通り。

1株あたり相続税評価額=類似業種×L+純資産価額×(1-L)

ここで、Lは中会社の大は0.9、中会社の中は0.75、中会社の小は0.6となる。

例題

非上場会社のX株式会社の事業継承について評価額を算出する。FP1級の2018年1月応用試験をもとに一部加筆したものを例とする。

<X社の概要>
資本金額:8,000万円
発行済株式総数:16万株
規模区分:中会社の大

<比準要素の状況>
類似業種の1株(50円)あたりの年間配当額:2.9円
類似業種の1株(50円)あたりの年間利益額:18円
類似業種の1株(50円)あたりの簿価純資産価額:180円

<類似業種の1株(50円)当たりの株価の状況>
課税時期の属する月の平均株価     :293円
課税時期の属する月の前月の平均株価  :284円
課税時期の属する月の前々月の平均株価 :261円
課税時期の前年の平均株価       :243円
課税時期の属する月以前2年間の平均株価:235円

<過去三年の利益と配当金額>
直前期:利益3,720万円、配当680万円 (特別配当120万円含む)
直前々期:利益3,370万円、配当528万円
直前々期の前期:利益2,520万円、配当560万円

<X社の資産・負債状況>
資産評価額合計:83,390万円
資産簿価額合計:72,190万円
負債評価額合計:34,750万円
負債簿価額合計:34,750万円 

この会社規模は中会社のため、類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式で算出を行う。

まず、類似業種比準方式における、各変数を算出する。以下の通り、b,c,dに当たる金額が不明であるため、これらを1つ1つ算出する。

A:235円
B:2.9円
b:?
C:18円
c:?
D:180円
d:?
E:0.6

まず、発行済株式総数は1株あたり資本金額を50円としたときの株式数なので、資本金額8,000万円÷50円=160万株となる。ゆえに、

b=\cfrac{2年間の配当金額(記念配当など臨時配当を除く)÷2}{発行済み株式数} \\ =\cfrac{(680万円-120万円+528万円)÷2}{160万株} \\ = 3.4円

また、cについては、直近1年間の利益もしくは直近2年の利益平均の低い方を用いる。前者は3,720万円、後者は(3,720万円+3,370万円)÷2=3,545万円のため、後者で計算を行う。

c=\cfrac{2年間の利益金額の合計÷2}{発行済み株式総数} \\ = \cfrac{(3,720万円+3,370万円)÷2}{160万株} \\ ≒ 22円

あわせて、dの簿価純資産価額は資産・負債より、資産簿価額合計-負債簿価額合計から算出できるので、簿価純資産価額=72,190万円-34,750万円=37,440万円。これを1株あたりで算出するのでd=37,440万円/160万株=234円となる。

そして一株当たり資本金等の額は資本金額8,000万円に対して発行済株式総数16万株なので、8,000万円/16万株=500円となる。(最後で50円換算するのでここでストップ。)

以上をもとに類似業種比準方式の計算式に当てはめると

株価=235円*{(3.4/2.9+22/18+234/180)/3}*0.6*500円/50円
  =235円*(1.17+1.22+1.30)/3*0.6*10
  =235円*1.23*0.6*10
  =173.4円*10
  =1734円

となる。

続いて、純資産価額を算出する。
純資産評価額=資産の評価額-負債の評価額=83,390万円-34,750万円=48,640万円
純資産評価益=純資産評価額-純資産簿価額=48,640万円-37,440万円=11,200万円
となるので、

1株あたり純資産価額=(48,640万円-11,200万円*0.37)÷(16万株)= 2,781円

最後に、併用方式にあたっての按分計算を行う。中会社の大のときはL=0.9となるので、

1株あたり相続税評価額=類似業種×L+純資産価額×(1-L)=1,734円*0.9+2,781円*0.1=1,838円

中会社は純資産価額方式でもよいことになっているが、純資産価額方式よりも併用方式にしたほうが低い評価額(=相続税を下げられる)ため、併用方式を採用し、X社の相続税評価額は1,838円となる。

特例的評価方式

会社規模によらず、配当還元方式にて評価する。

配当還元方式

過去2年間の配当金額を10%の利率で還元して、元本である株式の価額を求める。具体的には以下の通り。

1株あたり相続税評価額= \cfrac{その株式の年配当金額}{10%} \times \cfrac{1株あたり資本金額}{50円}

 また、年間配当額については以下にて算出。類似業種比準方式における年間配当のうち、2年間の平均で算出する考え方と同様である。

c=\cfrac{2年間の利益金額の合計÷2}{発行済み株式数}

ただし、年配当金額が2円50銭未満となる場合、又は無配の場合は2円50銭とする。