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トービンの分離定理を分かりやすく説明

証券アナリストで証券分析を勉強していくと、「トービンの分離定理」なる単語が出てきて、これがまぁ初学者の自分にはよく分からんのである。とりあえず試験問題解くだけであればこの定義がよく分かって無くても計算はできるのだが、知っておくとその後の概念とかも分かるようになってくるので、やはり抑えておくべきなのだろう。

定義

まず、用語辞典での定義を見てみると…

分離定理(Separation Theorem)とは、危険資産の組成が投資家のリスク選好と無関係に行われることをいう。

この定理では、投資の意思決定は2段階に分けられる。第1段階は、リスク資産だけを対象に最適な投資比率の危険資産ポートフォリオを作成するという意思決定である。第1段階で選択されるポートフォリオは接点ポートフォリオと呼ばれる。第2段階は、接点ポートフォリオと安全資産の投資配分の比率を決めるという意思決定である。

すべての投資家は同じリスク資産のポートフォリオ保有し、リスク選好に応じて安全資産の比率を変更する。

分離定理 | みずほ証券 ファイナンス用語集

はい~、もう文章を読むのが辛くなってくる。しかし、実はここで言っていることを噛み砕くとそんなに難しいことではなく、考えようによっては当たり前とも言えることを言っているので、そのあたりを説明していく。

めっちゃ噛み砕くと

証券アナリストとか投資の世界とか、一般的な我々とかけ離れているように思ってしまいがちだが、一旦自分のことだと思って置き換えてイメージしてみると良い。

100万円保有していて、これを投資するというシーンを考えよう。

リスクに対するリターンがこの世の中で最も優れている超優良銘柄があったとする。つまり、なるべく最小限のリスクでありながら高いリターンが出せる素晴らしい銘柄だ。とは言え、リスク自体はあるので、決して100%安全というわけではない。

この時、あなたであれば100万円のうち、どれほどこの銘柄に投資をするか?

もちろんこれは人によってそれぞれであろう。100万円全額投資する人もいれば、30万円投資して70万円は取っておく、など。別にこれに正解があるわけではない。

以上がトービンの分離定理である。

 

定義と照らし合わせる

冒頭の用語説明の定義と照らし合わせてみる。

この定理では、投資の意思決定は2段階に分けられる。

まず、ここはいいだろう。2段階あるということで、1つ1つ見ていこう。

第一段階

第1段階は、リスク資産だけを対象に最適な投資比率の危険資産ポートフォリオを作成するという意思決定である。第1段階で選択されるポートフォリオは接点ポートフォリオと呼ばれる。

 リスク資産とか危険資産ポートフォリオとか、怪しい単語があるが、要は一般的な株式とか投資信託である。つまり、「株式に投資しよう!」とか、そういう意思決定である。この時、どういう資産に投資するかと言えば、なるべく最小限のリスクでありながら高いリターンが出せる素晴らしい銘柄である。当然どんな人であれ(つまり、リスクを取りたい人であれ取りたくない人であれ)、投資する上で一番コスパが高いこの銘柄を選ぶだろうし、それはただ1つ決まる

そして、この素晴らしい銘柄(およびそのように素晴らしいリスク・リターンとなるように銘柄を組み合わせたポートフォリオ)を接点ポートフォリオという。ここで、よくあるあのグラフを見てみる。

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画像の引用元:CAPMの詳しい図解!ポートフォリオ理論で分散投資を勧める理由

 

有効フロンティアそのもの説明はここでは知っている前提として省略するが、ここまでが第一段階である。

第二段階

第2段階は、接点ポートフォリオと安全資産の投資配分の比率を決めるという意思決定である。

さっきのグラフと噛み砕いた例でいうと、接点ポートフォリオ☆の箇所が100万円全額投資した人が位置するリスク・リターンである。他方で、リスクフリーレート●となっている箇所は100万円全額を投資せずにとっておく(安全資産への投資=預金・国債への投資)人が位置するリスク・リターンである。その他、70万円投資して30万円取っておくとか、50万円投資して50万円取っておくとかは、このリスクフリーレート●と接点ポートフォリオ☆を結ぶ直線の間のリスク・リターンを取ることになる。

つまり、接点ポートフォリオ(なるべく最小限のリスクでありながら高いリターンが出せる素晴らしい銘柄)があれば、あとは自分の持ち分をどれだけそれに投資するか、という比率だけを考えるだけにすぎない。考えようによっては非常に当たり前のことにも聞こえる。

なお、接点ポートフォリオ☆箇所を超えてさらに右上方向に行きたい場合は、借金をしてそのリスク資産をより多く購入すれば良い。

整理すると

以上を改めて整理すると

・投資にあっての銘柄選定は最小限のリスクでありながら高いリターンが出せる素晴らしい銘柄がただ1つ決まる。(つまりどんな投資家であっても同じ)

・銘柄選定したら、あとはどれだけそこに投資してどれだけ取っておくかの比率でリスクをコントロールする(つまりここが投資家によって変わる。)

 という2段階に分かれることをトービンの分離定理という。考えようによっては当たり前で、「この銘柄が一番良いよ!」と言われれば、あえて他の銘柄なんか買わずにその銘柄一点張りをするはずで、あとは自分の全財産をどれだけ突っ込むか、というプロセスを説明しているにすぎない。ただこれをきちんと数式的・理論的に説明してその有用性・妥当性を謳っているところが凄いところであろう。

補足

 「最小限のリスクでありながら高いリターンが出せる素晴らしい銘柄」という回りくどい言い方をしたが、これに前提として市場が効率的であることをおくことで、これが市場ポートフォリオとなる。市場ポートフォリオの説明は他の記事でも書いてあるので、ここでは詳細は省略する。ここから次の概念としてCAPMだとかβだとかが出てくる。

なお、市場が効率的であることを前提として、インデックスに沿った投資をしていくのがいわゆるインデックスファンド(パッシブファンド)で、市場は非効率であるとしてαを取っていくのがいわゆるアクティブファンドである。

数十年の投資信託の歴史において、大抵のアクティブファンドはインデックスファンドに勝てていないという実績がある。(信託報酬等を加味すればなおさらであろう…)。つまり、少なくとも中長期的に見たときには市場は効率的であるということが言えるのではないだろうか。