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住宅ローンの組み方戦略 ~頭金の必要性、固定・変動金利の選び方~

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この歳になると家やマンションを買う人も周りで増えてきて、そのたびにどういうローンの組み方をしたのか聞いているのですが、どうもイマイチな組み方になっているんじゃないかなぁと思うようなこともしばしばありました。ここで一度、自分なりに考える住宅ローンの活用を整理してみようと思います。

これから住宅ローンを組む人の参考になればと思って書きました。なお、すでにローンを組んでしまった人は残念ながらもう遅いですが、今一度自分の組み方に問題が無いか、見直すきっかけになればと思います。

はじめに

よくある、賃貸VS持ち家とか、マンションVS一軒家という比較についてはここでは述べません。というのも、これらはそれぞれのライフスタイルや価値観によって変わるもので、単純に「こっちのほうが安いからお得」というような金銭的な天秤だけで判断するべきものではないからです。例えば、全国転勤がよくある職業に就いているのであれば、持ち家の方がトータルコストが安いとしても、賃貸に住み続けるでしょう。

しかし、いざマンションや一軒家を買うに当たって多くの人は組むことになるであろう住宅ローン、これについては答えは誰であっても同じで、「なるべく返済額を減らしたい」がゴールとなります。ここには個々人のライフスタイルや価値観が入ることは基本的には無く、あえて「高い金利で借りたい!」とか「たくさん返済額払いたい!」なんていう人ははじめから住宅ローンどうしようなんて考えにも至らないでしょう。そんな人はこの記事をみないでさっさとローンを借りてください。

また、以下記述するのは、2022年1月現在における経済動向を元に記載しています。つまり、超低金利で、住宅ローン減税政策等により国として家を買うことを推奨しており、他方で少子化している状況です。

今後経済動向が大きく変われば当然戦略も変わっていきます。しかし、基本的にはその経済動向が変わってしまうことを念頭にしてどういう戦略を取るべきか、というところまで記載していこうと思っています。

合わせて、あくまでここで述べる内容は個人の見解であり、特定の金融商品を勧めたりすることは目的としていません。そういった意味ではフラットな意見にはなると思いますが、最終的にどうするかは読者の判断となります。

頭金は必要か

まず聞きます。頭金はなぜ必要なのでしょうか?ちょっと考えてみてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おそらくここで2つに分かれます。

1.よくわからないけど頭金があったほうが良さそうなイメージがあるから。

2.頭金を入れた方が返済額を減らすことができるから。

 

1はそもそものところになってしまいますが、案外きちんと考えている人は少ないのではないかと思います。なんとなく「そうした方がいい」と流されていませんか?しかし無理もありません。家を買うなんて一生に1回あるか無いか、しかも何千万円という大金を借金する必要があり、その上お金のこと以外にも物件探しや内装どうするかといった検討事項が山ほど…。自分も金融・経済については偉そうに色々述べていますが、例えば物件のことや内装のことに関しては完全に素人なので、「こういうローンを組むのが正解!」と言ったところで、「いやでもその物件の内装のこういうところはダメだよね?ちゃんと考えて選んでる?」とか言われてしまうとぐうの音も出ません。そして、誰でも最初は知識なんぞ無いのでわかりません。なので、1の答えだった人であっても落ち込む必要は無く、むしろここで知ることができてよかったと思いましょう。

頭金で返済額は減らせる?

さて、ここからがある意味本題で、多くの人は2を答えることになったでしょう。頭金を入れれば返済額は減ります。もちろんこれ自体は正しい考えです。

正しいのですが、では果たしてどれほど返済額が減るのでしょうか?

例えば5,000万円のローンを組む場合、頭金として500万円を用意したとします。つまり、頭金として500万払うので、結果的には4,500万円のローンを組むこととなるわけですが、これによる総返済額の違いは以下となります。

A:5,000万円ローンの総返済額:約5,900万円

B:4,500万円ローンの総返済額:約5,300万円

※固定金利1%、元利均等返済方式、35年ローン、毎月返済として計算

つまり差額はおよそ600万円あります。ただし、Bについては頭金として最初に500万円払っているので、Bにおいて支払ったトータル金額は約5,800万円となります。つまり事実上の差額は100万円です。(※正確には92万円くらいなのですが、話を簡単にするため以後100万円とします。)

「100万円なら大金じゃん!」と思うかもしれませんが、35年かけて100万円です。1年あたりにすれば3万円すら得していません。

 

では、この500万円の頭金を貯めるために、どれほどのお金を費やしましたか?

「金を稼ぐのに金なんて費やしてねーよ!」というのは間違いです。500万円を貯めている間、住んでいる賃貸に家賃を支払っているはずです。この家賃はさっさと家を買っていれば払わずに済むコストです。

仮に家賃が10万円/月で500万円貯めるまで5年かかったとすれば、その間の家賃コストは600万円。つまり、100万円得するために600万円費やしたことになります。果たしてなんのための頭金だったのでしょう。

頭金は運用へ

いやいや、そもそも頭金を貯めようなんてしてないで、家を買う前から有事に備えて貯金をしていて、たまたま家を買う機会ができたからそれを頭金にしようとしている。だから家賃コストは関係ない!という人。もしくは親族の資金援助で初めからまとまった金額があるので、別に貯めるまでの家賃コストなんて最初から関係ない!という人。

さて、そのお金は本当にローン返済の頭金に使うべきなのでしょうか?

同じく500万円のお金があったとして、これを頭金用に使えるということは、生活費など普段使いとは別に貯めているお金であることが前提となるでしょう。つまり、言ってみれば使いみちが無くて余らせているお金になります。

どうせすぐ使うお金でないのであれば、その500万円を投資信託に投資してみましょう。確かにリスク資産である以上、経済動向によって収益率は上下しますが、平均利回りを2%とした場合、500万円は35年後どうなっているでしょう?答えは2倍の1000万円になっています。つまり、頭金を入れることでは35年で100万円の得でしたが、その資金を35年運用したら500万円得するのです。

※知っている人にはわざわざ言うまでもないですが、別に怪しい儲け話でもなく一般的な複利計算です。なお、2%はやや安全に見た数字で、実運用においては3~5%ほどを目安にするかと思います。もし3%であれば35年後は1400万円になります。

つまり、その頭金は負債の返済(マイナスの補填)ではなく、資産運用して伸ばしていく方が収支として利幅が大きいのです。なお、投資信託および資産運用に関する考え方については以下の記事を参照してください。

s-tkmt.hatenablog.com

その他、頭金を入れないメリット

これに加えて、大きな事故や子育てにおけるライフイベントなど、何らかの理由で急に大金が必要になった時、もし500万円を頭金に入れてしまっていたらもうそのお金は使えません。しかし、そのまま貯蓄しておくにしろ運用しておくにしろ、手元にあればこの資金を活用することが可能となります。つまりある意味保険としての効果を発揮します。

そういった意味でも、安易に頭金を入れるべきではないと言えるでしょう。

頭金を入れたほうがいいパターン

とは言え、なんでもかんでも頭金を否定するつもりはありません。いくつか頭金を入れるメリットを記載します。

1.ローン審査を通りやすくする

もし、5,000万円だと借入審査が降りないけど、4,500万円なら降りる、という場合には頭金を500万円突っ込む必要が出てきます。現実問題として500万円程度の差であればいくつかの金融機関で審査を申し込めばどこかで引っかかりそうな気はしますが、審査がゆるいところはその分金利が高かったりもするので、そこは適用金利を元にしたシミュレーションを行う必要があるでしょう。つまり、頭金を入れて条件の良い融資を受けたほうが良いのか、頭金を入れずに多少条件の悪い融資を受けたほうがいいのか、というそろばんを弾く必要があります。

2.金利が超高い時

これは確実に頭金を入れたほうが良いです。今回出した例では500万円の頭金により100万円得するという話でしたが、これは適用金利を1%とした場合のシミュレーションです。もし、これが4%の金利であった場合、同じ計算をすると約420万円の差が出ます

ただし、4%の金利というのがどういう状態かというと、日本で言えばバブル時代の金利です。異常に経済が伸びて、株価も給料も不動産も爆上がりしていた時代です。御存知の通り現在はそこから失われた20年、リーマンショック東日本大震災、コロナショックを受けての超低金利時代。ご時世的にも「これからの日本、いまからバブルになっていくぞ~~~」なんて思っている人はほとんどいないでしょう。

3.頭金ありなしで適用金利が変わる時

例えばフラット35では1割頭金を入れることで適用金利が下がります。具体的には0.26%ほどの差があります。

これだけ聞くと「たった0.26%の差であれば大したこと無いのでは?」と思うかもしれませんが、頭金を入れて借入額が少なくなった状態に対して・0.26%金利が低くなるので、二重の効果となりガクっと返済額が変わります。

具体的に、先程の例に合わせて、5,000万円の借り入れ、500万円の頭金、フルローンでの金利を1.56%、頭金を入れた場合の金利を1.3%とした場合、以下の差となります。

A:5,000万円ローンの1.56%の金利における総返済額:約6,500万円

B:4,500万円ローンの1.3%の金利における総返済額:約5,600万円

→AとBの差額は900万円、頭金分を加味して約400万円の差!

さきほどの超高金利はバブルじゃないとありえない数字ですが、こちらは現実的にありえる数字で、それでいて差額としてはほぼ同じ。もし、金融機関のプランによってはこのように頭金ありなしで金利が変わるものがあれば、その試算をして、本当に頭金を入れたほうがいいのかどうか検討しておくと良いでしょう。

4.月あたりの返済額を減らしたい時

最初の例において頭金で差し引いた分も加味すると、返済総額として600万円の差が出ることは説明済みですが、これを35年の毎月返済で考えると1ヶ月あたり1万4000千円の差となります。トータルで収益出すことより、例えば育児や介護の関係などからとりあえず目先の月あたりの出費を抑えておきたい、という場合には、頭金を入れて月返済額を減らすというのは手段の1つとなるでしょう。

結論

・家やマンションを買う心づもりができている状態で、頭金をわざわざ貯める必要はない。

・すでに頭金相当のお金が溜まっているのであれば、頭金に当てるのではなく資産運用していくほうが長い目で見て収支はプラスとなる見込みが高い。

・ただし、頭金有無で適用金利が変わるような場合や、家計収支として月の返済負荷を軽減する必要がある場合などにおいて、シミュレーションをした上で頭金を入れたほうが得であることが明確であるならば、頭金を入れることも視野に入れる。

※補足ですが、住宅資金贈与の特例という節税ができるお得な制度がありました。それを利用して親からもらった資金については、頭金用途(住宅購入用途)としての利用しかできないため、その場合はこの資金を頭金にしてしまう方が得策でしょう。ただし、この制度は2021/12/31で終了してしまいました。以下ご参考。

No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|国税庁

※2022/01/18 追記

住宅資金贈与の特例の延長が決定されました。ただ、これを使うことによるデメリットもあるので、利用にあたっては制度をよく理解した上で使うことをおすすめします。詳細は以下をご参照ください。

住宅取得資金贈与の非課税はまだするな!デメリットあり【2023年延長】 | 円満相続税理士法人|東京・大阪の相続専門の税理士法人

数学的な話(興味ない人は飛ばして良いです。)

総返済額は、借り入れ元本×(1+月次金利)^支払回数で算出します。つまり、頭金有無による総返済額の差は以下で算出できます。

 総返済額の差=(V_{0}-V_{1}) \times (1+\dfrac{i}{12})^{n}

V0:フルローンでの借り入れ元本
V1:頭金ありでの借り入れ元本
i:年金利 (12で割って月次金利)
n:支払回数

つまりV0とV1の差(つまり頭金)がどれほどあるかが、総返済額の差額に効いてきます。そのため、今回5000万円のローンを例にしましたが、これが例えば一億円のローンだとしても、3000万円のローンだとしても、頭金が500万円であれば計算結果は同じで、35年で100万円の差となります。

他方で、頭金を1000万円とか2000万円とか突っ込めば、当然この総返済額の差も大きくなっていきますが、現実的に住宅ローンを組むであろう30歳前後の年齢で、そんな大金を突っ込める人なんてなかなかいないでしょうし、先述の通りまとまったお金があるなら資産運用をすべきでしょう。

金利は固定か変動か

次によくある議論が、金利を固定金利にするか変動金利にするか議論です。ざっくりメリデメは以下の通り。

固定金利:期間通して同じ金利が適用される。そのため市況変化に変わらず一定の金利が確約されるが、割高の金利となるため低金利が続くと損。

変動金利:市況に応じて金利が変化するため、必ずしも金利は一定にはならない。固定金利を超える水準まで金利が上がり続けていくと損。

で、これをもとに、多くの人はこんな思考で選択します。

固定金利を選ぶ人:金利とかなんか難しそうでよくわからないし、金利が上がっていくと怖いから固定にしておこ…

変動金利を選ぶ人:金利とかなんか難しそうでよくわからないけど、変動の方が金利低いし上がってもなんとかなるんじゃね?ww

当然、それぞれメリデメ・価値観の違いがあります。しかし、どんな人でも確実に言えるのは「金利が低く済むならそれに越したことはない」ではないでしょうか。でも、安さに目をくらませて下手に変動金利にしてしまっていいのか、そのあたりを解説していきます。

金利とは

そもそも金利とは何でしょう。金利の話を1からしていくとそれだけで1つの記事になるので詳細までは割愛しますが、端的に言うと金利「お金の価値」となります。そしてそれは時間に比例します。

例で言います。自分が貸し手になったとしてイメージしてください。あなたが全財産100万円持っています。そこで、友人から80万円貸してくれ!と言われ、どうしても貸さないといけない事態になったとします。この時、貸したはいいけど、貸している間に急な多額の出費が発生したらまずいですよね?なので、取る手段は2つです。「なるべく早く返してくれ」もしくは「早く返せないならせめて返すときに上乗せしてくれ」です。

このときの後者が金利という概念になります。つまりお金を貸している間はそのお金が使えないことで不便を被るわけで、その分を補填しろということになります。当然、その期間が長ければ長いほど上乗せは積み重なっていきます。

逆に超極端な例を言います。あなたが全財産500億円持っています。そこで同じく友人から80万円貸してくれ!と言われたらどうしますか?ぶっちゃけ「いつ返してもいいよ」、「別に上乗せとかいらんよ」という気になりますよね?つまり、このときには相対的に金利(お金の価値)が低い状態となります。

金利は上がるか下がるか

ここで住宅ローン金利における貸し手は誰かというと、当然銀行となります。銀行であっても先程の例と考え方は同じで、あまりお金を持っていなければ銀行側は「高い利息で返してね」となりますし、じゃぶじゃぶにお金があれば「まぁ利息は低くてもいいか」となります。

ではその銀行が保有するお金はどこから供給されるでしょうか?もちろん我々の預金もそうですが、この供給をコントロールしているのは日本銀行となります。いわゆる「銀行の銀行」というやつです。

日銀は「物価の安定」および「金融システムの安定」を目的として、世の中の景気動向などを元に、銀行に供給するお金を増減しております。その結果、銀行での貸し出し利息が定まっていきます。

※日銀の役割の詳細をちゃんと書こうとすると、基準貸付利率がどうとか、準備預金制度がどうとか、市場介入がどうとかありますが、ここでは割愛します。

つまり何を言いたいかというと、株式等は市況に応じて上がり下がりがあり、急な下落などで損するリスクが高いですが、金利中央銀行(日銀)にコントロールにより操作されるため、急な変動は発生しづらい上にある程度は予測が可能となります。なので、「金利が上がったら怖い!」というのも、ニュースや日銀の政策を見ていれば「いやいや、今この状況でそんな上がるわけ無いじゃん」というのがわかるのです。

また、金利が上がるにしても、日銀は「物価の安定」および「金融システムの安定」を目的としてコントロールする役割である以上、例えば急激に金利を引き上げて市場を混乱させるようなことは通常しません。なお、「金融システムの安定」というのは、いわゆるリーマンショックのような大惨事を引き起こさないことだと思って下さい。

そして、今の日銀の方針としては徹底的に低金利策を貫いています。

詳細は日銀のレポートに譲りますが、現在の日銀総裁の黒田氏は異次元緩和という名の下、金利政策に限らず、ETF買い入れなどを通じて市中へマネー供給をしまくっています。このあたりの専門的な話は割愛しますが、要は低金利となるようなコントロールをしており、それを変える方針も今のところは出ていません。少なくとも黒田総裁が任期満了する2023年4月頃まではこの方針を貫くことになる見込みです。

大きな間違い

そもそも金利は上昇するのでしょうか?もちろん上昇する可能性はありえますが、「停滞する」「下がっていく」という3つ可能性がある中であえて上昇を懸念する理由は何でしょう?「停滞する」「下がっていく」という分岐も等しい確率で発生するのであれば、変動金利にしておくほうが期待値としては得になるはずです。

「いやいや、こんな低金利時代なんだから、停滞ならまだしも下がるということは無いのでは?」というのも必ずしも正しいとは言えないです。名前は聞いたことあると思いますが、現在はマイナス金利という概念すら発生しているくらいなのです。つまり、今低いからといって単純にその後は上がるとは限りません。

もちろん、現実においては確率論だけでは語れないので、単純にそれぞれ3分の1で起こることを前提にすることは言うまでもなく正しくないですが、他方で根拠なく「金利は上昇する」と考えるのは思考停止にすぎず、確率論以上にはならないでしょう。

金利が上がったらどうすればいい?

机上の空論はさておくとして、じゃあ実際問題、変動金利における最大の懸念である「金利が上がった時どうするか」を考える必要があります。

「え、金利が上がったら変動→固定に変更(借り換え)すればいいんじゃないの?」と思ったら大間違いです。そのときには固定金利も上がっています。その上がった固定金利で払い続けることになるので、かえって固定金利に変えることで損失が膨らんでしまいます。また、借り換えを行う場合、残債量によっては数十万円単位で手数料や諸費用がかかります

そこで、頭金として使わなかったお金を繰り上げ返済に活用です。つまり頭金を入れるタイミングは、頭ではなく金利が上昇したときです。金利は元本に対して算出されるので、当然、繰り上げ返済をすれば、その分だけ金利負担は小さくなります。もちろん、頭金ではなくて住宅を買った後にコツコツ貯めたお金であっても話は同じです。

また、タイミングについては、早くても基本的に住宅ローン減税の適用期間が過ぎたあとが良いでしょう。繰り上げ返済をするとこの控除が受けられなくなるのと、住宅ローンで控除される金額より金利負荷の方が小さい限りは無理に繰り上げ返済をする必要は無いからです。

ざっくりシミュレーションですが、借入額5,000万円、これに対して以下の金利状況だった場合、総返済額はどうなるでしょうか。

1.変動金利で当初0.5%、10年後に2%に上昇
2.変動金利で当初0.5%、10年後に2%に上昇、その5年後、金利が下がらなそうなので500万円を繰り上げ返済に活用
3.固定金利で35年1.2%
4.固定金利で35年1.2%、15年後、500万円を繰り上げ返済に活用

詳細の計算は端折りますが、それぞれ総返済額はこうなります。

1.約6,200万円
2.約6,000万円
3.約6,100万円
4.約6,000万円

かなりこまごましてしまいましたが結局何を言いたいかというと、2と4がほぼ同じであることからわかるように、変動金利を選択して今後金利が上昇したとしても、繰り上げ返済すれば損をせずに済む戦略は十分取れるということです。(厳密には2と4で10万円くらいの差はありますが、さすがにこの差は誤差と言っていいでしょう。)

もちろん、実際の変動金利においては上がり下がりがありますので、単純にこのシミュレーション通りにはならないでしょうが、決して金利が上がったから詰むということはなく、上がっても然るべき対策を取る準備をすることが大事になります。

また、もし金利がこのまま上がらないで済むようであれば、繰り上げ返済もせずに、低金利でほそぼそとローンを払い続け、まとまったお金はそのまま運用し続けても問題ないでしょう。

そもそも金利が上がるのはどういう時?

あと、付け加えておくべき事項は、そもそも金利が上がるというのはどういう時かということです。ここで思い出してほしいのは、金利のコントロール中央銀行(日銀)が行うということです。一般的に中央銀行金利を引き上げるのは、景気が加熱しすぎている状況においてです。つまり、市中に金が回りすぎている状態なので、金利を引き上げて金回りを抑制するのです。

さて、これまた先程述べましたが、日本で高金利だった時代はいつだったでしょうか。そうです、バブル時代です。つまりバブルで過剰に景気が加熱した熱を冷ますために日本銀行金利を一気に引き上げました。これがいわゆるバブル崩壊につながっています。(※バブル崩壊については色々その他細かい話がありますが、ここでは割愛します。)

つまり、金利が上がるというのはその直前まで景気が良い状態となります。ということはそのレベルになればそれなりに所得も増え、多少の金利上昇であっても返済はできるだけの余剰資金を蓄えることは十分可能と言えるでしょう。ちゃんと貯金や資産運用ができることが前提ではありますが。

逆に言えば今の日本において「こりゃ景気がよくなっていきそうだなぁ~~~!」と思っている人は少数派ではないでしょうか。もちろん少数派だから間違った意見とは言えないですが、景気が良くなる見込みが見えない中で金利が上がるという予測は、一般的には矛盾した考えになります。(※金利上昇の要因としては為替や物価、海外金利との兼ね合いもあるため一概に景気だけで判断はできませんが、景気動向は大きな指標の1つであることには間違いないでしょう。)

固定金利を選ぶメリット

以上、変動金利を贔屓するようなことを書き続けてきましたが、当然固定金利を選ぶべき場合があります。それは以下の場合。

・繰り上げ返済できる貯蓄が無い人

変動金利における最大のリスクは金利上昇、当然このリスク対策をする必要がありその最たる手段が繰り上げ返済となるわけですが、それができないとなるとリスクを放置しているに過ぎません。変動金利を選んで固定金利より低くなった金利分をきちんと貯蓄・資産運用していざというときに備えられればいいのですが、その支出コントロールができない場合は固定金利にしておいたほうが良いでしょう。

金利上昇によって「損しちゃったよ~」となるくらいならまだマシで、ローンが返せなくなりましたとなると人生に影響します。最悪、銀行から抵当権を実行され家が売られてしまいます。

金利動向とか、金融政策とかそんなニュースを追うのがめんどい人

ここまで色々書きましたが、それなりに勉強しないと経済系のニュースが読み解けないのも事実で、そこに時間を費やすくらいなら固定金利にして他のことに時間を費やしたい!という人。

ただし、下手すると数百万円単位で返済額が変わるので、その面倒くささと引き換えに固定金利を選ぶ価値があるかは検討したほうが良いと考えます。例えば自分でわからなくても、誰か分かる人に相談するなどはしても良いのではないでしょうか。先程の通り金利は1日1日で急激に変わるものではないので、例えば1年毎にその手の詳しい人に定期的に話を聞いてみるなどです。それすら面倒であればもう固定金利にしちゃっても良いと思いますが…。

結論

・この低金利時代で、今後も大幅な金利上昇は起きる可能性が薄い日本経済においては、変動金利でも概ね問題ないと言える。

・ただし、金利上昇が発生しないということは当然言い切れないので、金利上昇に備えたリスクヘッジ、つまり繰り上げ返済をするための貯蓄や資産運用をしておくことが必須。

・そのリスクヘッジに対する備えがない(できない)のであれば、固定金利とすべし。

その他、変動金利と固定金利については、ペアローンにてそれをミックスさせたり、10年固定で以後変動にするとかいろいろな組み方がありますが、そのような個別の事例まで語りだすとキリがないのでここでは述べません。結局は金利上昇のリスクをどう考えるか、それに対してどういう対策を打つか、がポイントとなります。

住宅ローンの計算に当たって便利ツール

このご時世、ありがたいことに住宅ローンのようなめんどくさくて細かい計算はスマホのアプリやWebサイトで算出してくれます。自分の場合スマホアプリではこれを使っています。シンプルで使いやすいです。

apps.apple.com

Webサイトでは以下をよく使います。住宅ローンに限らず、いろんな計算で役に立ちます。

keisan.casio.jp

いろんなローン計算をシミュレーションする上でこういったツールを使っていけば、簡単にいろんなパターンを比較することができます。

今回色々述べた、頭金ありなし、金利の固定変動など、自分でいろんなパターンを試して比較して最適な方法を計算していくことが、何よりも一番納得感を持った判断ができる方法になることでしょう。下手すると数百万単位で支払額が変わる話となるため、ぜひ面倒くさがらずに自分でシミュレーションすることをおすすめします。