一生旅行生活してえ

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【事例IV】NPV算出のキャッシュフローの求め方についてわかりやすく整理

NPV算出におけるキャッシュフローの求め方について整理する。

財務諸表上に掲載するキャッシュフローは以下の記事で求めたが、NPV算出の場合はまた計算方法が変わるため、整理をしたいと思う。

参考)
財務諸表上のキャッシュフローの考え方について整理 - 一生旅行生活してえ

 

収入と費用から考えるアプローチ

NPV計算においては、投資によってどれほどキャッシュフローが増えるか減るかを考えるため、投資後の収入・費用を元にキャッシュフローを算出する。その中でまず覚えておくべき頻出公式はこれであろう。

営業CF=(収入-現金支出費用-非現金支出費用)×(1-税率)+非現金支出費用…①

   =(収入-現金支出費用)×(1-税率)+非現金支出費用×税率 …②

上記2つはどちらも式としては同じである。仕組み的に理解しやすいのが上段、計算しやすいのが下段であろう。

①の計算を例として以下のPLで考える。現金支出費用とか非現金支出費用という単語は紛らわしいので、簡易的にそれぞれ費用、減価償却費とする。法人税率は40%とする。

収入 1,000

費用 600

減価償却費 100

営業利益 300

支払い法人税 120

税引き後利益 180 →これが①に左側(収入-現金支出費用-非現金支出費用)×(1-税率)に相当する。

 

上記より、営業CF=税引き後利益+減価償却費=280

さて、このようにして①なり②の公式に当てはめれば算出されるわけだが、あえて1つ1つ仕訳を切ってみる。

■収入

現金 1,000|売上 1,000

■費用

費用 600|現金 600

減価償却

減価償却費 100|減価償却累計額 100

■支払い法人税

法人税 120 |現金 120

 

これらの借方・貸方から現金残を求めると1,000-600-120=280となる。

当然といえば当然なのだが、簿記と会計は表裏一体なので必ず整合する。なので、このキャッシュフローの計算はそれ自体が独立しているのではなく、簿記(仕訳)とも線で繋がるのである。

なお、非現金支出費用としては減価償却費だけではなく、例えば固定資産売却損とか減損なども該当となる。仕訳でいえば以下の通り。

減価償却減価償却累計額

固定資産売却損|固定資産

除却損|固定資産

減損損失|固定資産

どれも費用計上するものの現金には影響しないものとなる。ちなみに固定資産売却益といった利益項目は非現金支出費用のマイナス(非現金支出利益?)となるので扱いを気をつける必要がある。

営業利益から考えるアプローチ

さて、営業CFを営業利益から考えるというアプローチもある。その場合は以下の式となる。

営業CF = 営業利益×(1-税率)+非現金支出費用…③

ただ、これは①と言っていることは全く同じである。結局は①の左側部分を「営業利益」としただけである。そのため、収入・現金支出費用が与えられずいきなり営業利益として提示された場合はこの公式を使うこととなる。

赤字の時

さて、(1-税率)とか非現金支出費用×税率といった計算は税効果を考慮した結果となる。つまり、税金が発生しない(赤字)の時にはこの考慮が無くなる。この場合どういう計算になるかを考えてみる。

売上:100

現金費用:70

減価償却:40

営業利益:△10

当然上記例の場合は営業利益がマイナスなので法人税は発生しない。他方で、減価償却費は非現金費用なので、これ自体はキャッシュを減らさない。つまり、キャッシュとしてみた場合は、売上100-非現金費用70=30がキャッシュフローとなる。(つまり税率=0として①の計算した結果と一致する。)

これを図で整理してみる。まず、普通の営業利益が出ている場合は以下のような図となる。法人税率は40%とすると

①の計算で言えば、(100-70-10)*0.6+10=22
②の計算で言えば、(100-70)*0.6+0.4*10=22

となるであろう。

ここで、減価償却費が40となる上述の例とした場合、図はこうなるはずである。

つまり、減価償却費がガッツリ引かれて損益としては△10となるが、現金として見たときに減価償却費は非現金費用となるため、結局売上100に対して現金支出費用が70の30がキャッシュとして残ることとなる。(もしくは当期純損失△10に対して減価償却費を40足し戻すことでキャッシュフローが30になる、という考えもできるであろう。)

営業外損益の必要性

さて、ここで1つ疑問になるのが、財務諸表におけるキャッシュフローとNPV算出におけるキャッシュフローの違いである。

参考)
財務諸表上のキャッシュフローの考え方について整理 - 一生旅行生活してえ

前者においては営業外利益・営業外費用(要は受取利息・支払利息)も加味したキャッシュフローとなっていた一方で、こちらはそれらを加味しないキャッシュフローとなっている。

これについて、NPVにおける営業外費用(支払利息)はキャッシュフローではなく割引率として勘案するためである。つまり設備投資のために借り入れを行った際に当然利息の支払いが発生するわけだが、それはWACCを算出する際の割引率として反映させるのである。WACCで負債利息を加味した割引率でありながら利息の支払いのキャッシュフローを計上すると、ある意味二重計上のような状態となってしまうということである。

また、受取利息については設備投資により発生するものではないため、仮にPLとしてこれがあったとしてもNPV算出における投資の意思決定においては基本的に埋没費用(埋没収益?)となるであろう。

※事例IVの一例として、平成25年の問題では支払利息も加味した営業キャッシュフローを算出したり現金残高を求める問題があった。これについては、いわゆるNPVを求めるためのキャッシュフローではなく、純粋にキャッシュ残高を計算するためのキャッシュフローの扱いなので、WACCの割引率二重計上といった制約が存在せず、その結果支払利息も加味する必要がある。

運転資本の増減について

そして忘れがちなので運転資本の増減についてである。公式上は以下となっている。

営業CF=(収入-現金支出費用-非現金支出費用)×(1-税率)+非現金支出費用-運転資本増減…④

ここでなぜ運転資本増減を引くということをするのか、である。

そもそも運転資本とは何か、通常の会社経営においてはその場での現金取引を行うことはほぼ無く、請求書を発行して翌月末までに振り込んでください、というような形でのやり取りとなる。つまり、簿記的に言えば売掛金・買掛金での計上となる。

となると、仮に売り上げまくって売掛金が潤沢にあったとしても、その入金がされない限りはキャッシュが全然溜まっていない可能性がある。こんな時に買掛金の支払い期日が来てしまっては不渡りを起こしてしまう。(要は倒産してしまう。)

そのため、売掛金を回収して買掛金を支払えるようになるまでの一定期間は支払いに備えて現金を持っておく必要がある。これが運転資本である。つまりこの分の現金は利益貢献のために使えるものではないので、営業CFから差し引いてやる必要がある。

さらに詳しいことを言えば、運転資本は棚卸資産(在庫)も加味して計算する。棚卸資産流動資産なので、これも売上債権同様に現時点でキャッシュ化はできていないけど、近いうちに売れてキャッシュになるだろう、という扱いをする。

以上を踏まえて運転資本は以下のように計算する。

売上債権|仕入債務

棚卸資産運転資本

 

※数式的に言えば、運転資本増減=売上債権+棚卸資産仕入債務

借方>貸方であれば、運転資本増減はプラス(つまり、売掛金のほうが大きくキャッシュ化が間に合ってない状態)、借方<貸方であればその逆である。

これを踏まえた上でのフリーキャッシュフロー

以上を踏まえたフリーキャッシュフロー(FCF)は以下の通りである。フリーキャッシュフローは営業CF+投資CFとなるが、営業CFは今まで述べてきたとおりなので、これに投資CFを足すことになる。足すと言っても、投資なのでキャッシュフローとしてはマイナスとなるので、事実上引くわけだが。

これがNPVで利用するキャッシュ・フローということになる。

FCF=(収入-現金支出費用-非現金支出費用)×(1-税率)+非現金支出費用-運転資本増減-投資額…⑤

基本的に投資額は初期投資で初年度に突っ込む額である。

これを元にNPV算出においては現在価値に割り引くこととなる。