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コロナ禍でありながらなぜか株価が戻っている件についてわかりやすく解説

「株式とかなんかギャンブルっぽくて怖い」という人ほど、世の中の経済の仕組みを知るためにこの記事を読んでほしい。

世間的なニュースを見ると、コロナでいろんな企業で赤字出まくりだの、失業率が凄まじいだの、アメリカでデモが起きてるだの、暗いニュースばかりなのに、なぜか株価は戻ってきている。その理由について特に金融やら経済やら殆ど知らない人向けに整理してみたいと思う。

とはいえ、株価変動の要因というのは複雑な事情が絡んでおり、一元的な理由では説明ができないため、あくまで一般的に言われているマクロな視点を元に整理してく。 なお、分かりやすさ重視や自身の勉強不足のため、正確さに不十分な説明になってしまっている箇所もあるかと思うが、ご了承願いたい。

なお、この記事を書いている途中でまたもや株式が暴落したりしている。そうはいっても、3月頃に記録したどん底レベルではなく、そんな中でも一定の水準は保てている。そのあたりは一番最後のまとめにも書いているが、まずはその暴落直前の6/10頃を基準として読んでもらいたい。

 

 

1.各指数の推移

まず、この半年くらいでどのように各主要指数が推移しているかを確認してみたい。いきなり「主要指数」とか言われてなんのこっちゃと思われるかもしれないが、要は日経平均株価とかそういうやつだ。名前くらいはなんとなく聞いたことあるだろう。算出方法は指数によって様々だが、各個別の株価の値を平均したりして、一定の基準値を算出していると思えばいい。

以下、全てGoogleで検索すると出てくる。グラフの見方とか一旦そういう細かいことは気にせず、なんとなく形だけ追ってもらえれば十分である。

日経平均株価(日本)

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ダウ平均株価(アメリカ)

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香港ハンセン指数(香港)

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インドSENSEX(インド)

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ボベスパ指数(ブラジル)

 

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FTSE100(イギリス)

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というわけで、結局何を言いたいかというと、国・地域問わず世界的に一番底から復旧はしており、ここ半年間でのピーク時に対して、この3ヶ月間でざっくり0.8掛けくらいの水準まで戻っている。リーマンショックの時はこの0.8掛け水準に戻るまで1~2年単位で時間を要していることを考えると、今回の復旧のスピードがいかに早いかよく分かるだろう。(ちなみに日経平均リーマンショック後に東日本大震災が来たせいもあり、8割水準に戻るのに5年くらいかかってる…)

このような未曾有の事態に際してどういう対策をしているのかを、以下解説して行きたいと思う。

2.中央銀行による金融政策

景気の変動要因において重要なのは中央銀行による金融政策である。中央銀行というのは日本でいうと日銀だ。「うわ~日銀とかよくわかんねぇ~」と思うかもしれないが、なるべくこのあたりも平易に説明していこうと思う。

日銀の役割は色々あるが、市場主要な役割としては、市中への資金供給をコントロールすることで、物価や景気を安定化させることである。コロナに関する経済混乱が発生した時、ざっくり以下の3つの政策を打ち出した。

  1. 金利の引き下げ(国債の買い入れ)
  2. CP/社債買い入れ
  3. ETF買い入れ

詳細は以下参照:

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/k200316b.pdf

 はいー、金融知識が無いとこのあたりは用語からして意味不明だろう。真面目に理解するにあたってはマクロ経済学やら証券外務員やらを机に向かって勉強していく必要があるが、ここでは噛み砕いてざっくり説明をしていきたい。

1.金利の引き下げ(国債の買い入れ)

中学校の公民にて日銀の話が出た時に「銀行の銀行」とか「基準貸付利率(公定歩合)」といった単語があったのはなんとなく記憶にある人も多いだろう。つまり銀行の銀行として、日銀から民間の金融機関にお金を貸す際に「基準貸付利率(公定歩合)」の率を上げ下げすることで、市中に供給する資金をコントロールする。が、現在、基準貸付利率を通じての資金コントロールはそこまでメインではない。間接的な施策にとどまるので、効果が出るまで時間を要するためだ。

というわけで昨今の主流は、直接民間の銀行に現金を供給することでのコントロールである。具体的には民間金融が保有している国債を買い入れることで資金供給し、結果市中金利を低下させ、各民間企業へ資金が行き渡るようにしているのだ。

このあたりをもう少し噛み砕いていく。まず、1つ目のアンダーライン国債というのはいわゆる国の借金である。よくニュースとかで「国の借金がXXX兆円!1人あたりXXX円!」みたいな煽り記事を見るかと思うが、その"国の借金"と言っているのが国債である。国とは言え、いろんな政策を打つにあたって当然お金が必要になるわけだが、それらがいい感じに税金ではまかないきれないため、追加分を借金をする。その借金をするにあたっては、銀行から現金を借りるのではなく、債券(チケット)を発行して民間の金融機関にそれを買ってもらうことで、現金を手に入れているのである。初学者にありがちだが、債"権"ではなく債"券"である。券(チケット)を発行するので債"券"だ。(※現在は電子化されているが、昔は紙の券であった。)

ものすごくざっくり言うと以下の流れとなる。

国「政策するから金がほしい。100億円分の債券(チケット)発行しよ。」

XX銀行「その債券買うわ」

国「XX銀行が債券買ってくれたので、その金で国の施策ができるわ。」

ただし、債券は借金でもあるため、国からすると債券(チケット)を買ってくれたらおしまい、ではなく、定期的に利子を払い、いずれは債券(チケット)金額分を返す必要がある。いつ返すかはその債券によって異なり、短期であれば1年未満、一般的な長期債と言われるものは10年、中には30年、40年という期間に渡るものもある。

で、日銀はどこに介入するかというと、上記の流れでいうと、XX銀行からの買い入れである。

国「政策するから金がほしい。100億円の債券(チケット)発行しよ。」

XX銀行「その債券買うわ」→日銀「お前の持っている債券買わせろ」

XX銀行「日銀が債券買ってくれたので、その分の金振り込まれたわ。」

 こうすることでXX銀行に対して資金を供給するわけである。

 そして次のアンダーライン市中金利の低下について。金利の話は掘り下げるとかなり奥が深いが、ここではざっくり説明としたい。まず、"金利"という概念は何なのかということである。金利2%で100万円貸しました→返してもらうときには利子つけて102万円で返済してもらいます、というやり取り自体はイメージが付くと思う。じゃあなぜ金利(利子)を取るのだろうか?それは金利というのが一種の「貸出料」という性質をもつからである。

貸し手側で考えてみると、150万円持っているAさんが、100万円をBさんに1年後に返済する条件で貸したとする。この時、Aさんは返してもらうまでの1年間は50万円の現金しか保持できない状況のため、この間に50万円以上の急激な出費が発生するとAさんは破産してしまうことになる。つまり、Aさんはこのリスクを負って貸す分、一定の見返りをもらいたいわけで、それが"金利"として現れる。

一般的に金利は期間が長くなるほど高くなる。上記例でいうと、1年間50万円で過ごさないといけない状態と、10年間50万円で過ごさないといけない状態があった場合、どちらのほうがリスクが高いか?当然後者である。そのため、貸出期間が長くなると、その分"金利"を上乗せすることで、そのリスク分の見返りとしている。

さて、ここで、貸し手の銀行の立場を考えてみたい。銀行の主業務は何かと言うと、融資、つまり会社や個人への貸付である。日銀の国債の買い入れにより、この貸付の元ネタになる現金が供給されまくることで、急激な出費があっても補填できる余力が生まれる、つまり貸し出す時にわざわざ高い金利をつける付ける必要がなくなるのだ。その結果、市中金利(要は一般的に銀行が貸し出すときの金利)は低下していく

そして最後のアンダーライン"各民間企業へ資金が行き渡る"は、ここまでくればもう分かるだろう。この状況になると、コロナで打撃を受けている借り手側の各企業は、目先の経営を回していくためにも一刻も早く(できれば低金利で)現金が欲しい状況である。銀行側は日銀の国債買い入れの介入により、現金は十分にあり、金利を引き下げる余地も十分ある。このお互いの利害関係より、通常時よりも楽に・得に資金融通が行え、結果、各民間企業へ資金が行き渡っていくことになるのだ。 

2.CP/社債買い入れ 

 1の話が理解できていればかなりちょろい。先ほど説明した国債は国の借金を債券として発行したものだが、社債は各会社が借金を債券として発行したものである。細かいことを抜きにすれば国か会社の違いだけである。一応さっき示したざっくりフローで書くと

会社「コロナでやばいから金がほしい。100億円分の債券(チケット)発行しよ。」

銀行「その債券買うわ」→日銀「お前の持っている債券買わせろ」

会社「銀行が債券買ってくれたので、その金で生きながらえるわ。」

銀行「最終的に日銀が企業の社債を買ってくれるので、多少経営状態が怪しい企業の債券でも買っちゃえるわ」

CPというのはコマーシャルペーパーの略で、社債の中でも1年未満の短期の償還(返済期限)のものである。会社として資金が必要なときに、銀行からお金を借りる方法もある一方で、この債券を発行してお金を集めるというやり方もできるのだ。債券発行の方が会社側の決めたい条件で発行できるというメリットがある一方で、その条件がイマイチだと誰も買ってくれない恐れもあるのだが。

このように会社が発行した債券についても、従来から日銀が買っているのだが、コロナを受けてその額を増やしたり、ある程度銀行(日銀)として不利な条件のものでも買い入れて企業を救うというのが2の施策である。 

3.ETFの買い入れ

3は簡単に言うと株式に関する話だが、ここでまた色々前提となる知識の説明が必要となる。まずはETFとはなんぞやを説明しないといけない。本当はETFだけではなくJ-REITも買い入れするのだが、話がややこしくなりそうなので省略してETFだけに焦点をあてる。

まず、株式投資というとどういうイメージをもつだろうか。ソニーの株を買うとか、トヨタの株価が上がったとか下がった、あとは株主優待で商品券などのお得なプレゼントをもらえたり、年1回とか2回とかのタイミングで会社の利益に応じて配当金を受け取れる、また、その株自体が高く売れればそれで儲けを出すこともできる。そういったイメージになるだろうか。

他方で株式投資の難しさとして、個々の企業の財務体質や経営方針、世の中の景気やトレンドなどを統合的な理解をしている必要があり、あまり金融に不得手の人からはハードルが高すぎるということだろう。仮にこれらを抑えていても、人気が出る銘柄、落ちる銘柄が発生し、買い時を逃したり、思うような配当を得られなかったりするリスクがある。なお、単に上がった下がっただけ追うだけだと、それこそ単なるギャンブルになってしまう。

こういった中、実は基本的に株式というのはプラスサムとなる考えである。つまり。資本主義経済において、単純にどこかの会社が儲かったからどこかの会社が損するというゼロサムにはならず(短期的にはそうなるかもしれないが)、長期的に市場全体として成長していく。ものすごく簡略されたモデルでいうと、A社が100万円の車を作ったとして、Bさんがそれを100万円払って購入する、この時市場全体としてはBさんによって払われた100万円とA社が作った"100万円相当の車"が存在することになり、合計200万円分の資産が存在することになる。そしてA社は受け取った100万円を元手にしてさらに車を増産をしていき売っていく、、、こういったことを繰り返すで、経済は発展していくのである。

もちろんこれは極論なので、実際はそう単純な世界ではないのだが、投資家の観点に立ったとき、いちいち個別の株式の株価の上下に一喜一憂していくよりも、マクロの視点で株式市場全体を長期的に見て、その市場全体の成長性に投資していくことで、利益を取っていくという考え方が生まれた。つまり、1つ1つの銘柄の株式銘柄について、成長性のある企業はどんどん株価が上がっていくし、そうでない企業は下がっていく結果、トータルで見たときに、一番最適に市場は形成されていくのである。

これを実現するには単純に全銘柄を均等に投資していけばいいのだが、実際問題まともに市場全体の銘柄に投資することは厳しい。例えば東京一部は2,000銘柄以上存在するのだが、とてもだが個人が全種類買うのは無理だろう(しかも株式は最低売買単位が決められており、100株とか1000株単位が主流。とてもだが全種類の株式を買える金なんて普通の人は持ってない…。)そこで出てくるのが投資信託である。

投資信託の仕組みをざっくり説明すると、個々人や企業からお金を集めて、運用会社というプロ機関にて集めた多額のお金を使って証券投資を実施する。この時、特定の銘柄に投資するというよりは、いろんな銘柄をうまく組み合わせて投資をしていき、それにより設けた利益の一部を投資家に分配するというモデルだ。以下、投信協会の図を見るのがわかり易い。

そもそも投資信託とは?

https://www.toushin.or.jp/investmenttrust/about/what/

このときの運用会社が投資するにあたって、いろんな銘柄を組み合わせる指針として、インデックス(指数)というのを用いる。インデックス(指数)というのはこの記事の最初に出てきた、やれ日経平均株価やらなんやらというやつである。日経平均株価も重要な指数だが、日本の株価を追うにあたってはTOPIXの方が様相を呈する。TOPIXという単語はなんとなく名前を聞いたことある人もいるだろう。TOPIX東証一部に上場している全株式をかき集めた総額(=時価総額)について、昭和43年(1968年)1月4日を100として、その比を表している。他方で日経平均株価は全株式を対象としておらず、日経新聞社が選んだ225銘柄に限られている、そのため、日本の株式市場全体という意味ではTOPIXの方がふさわしいと言えよう。

で、投資信託の運用会社はこの指数に含まれている会社(銘柄)に対して投資をしていく。例えばTOPIXに含まれている会社の銘柄の全株式を買って保有すれば、その投資信託TOPIXと全く同じ値動きをすることになり、結果、市場全体に対して投資をしているのと同じ効果を得られる。そしてTOPIXに連動した投資をしたいという人は、わざわざTOPIX構成銘柄を全部買わなくても、この投資信託(を小口化した銘柄)を買えば同等の運用効果が得られるわけである。ちなみにこの場合だと、100円とか1,000円のレベルで投資が可能になる。(※最低購入金額は投資信託によって異なる)

通常はこの小口の投資信託は証券会社経由で投資信託銘柄として購入するのだが、この投資信託銘柄を通常の株式などと同じように、市場に上場された銘柄として購入することでも可能である。この投資信託ETF(Exchange-Traded Fund=上場投資信託)という。

今更だが「上場」という単語の意味合いは市場のラインナップに並ぶことだ。東証一部に上場というのは、東証一部という市場にてその銘柄がラインナップに並び、自由に売買できる状態になることである。

ここで、ようやく日銀の話だ。日銀はこのETFを兆単位で購入することで株式市場を支える。つまり、TOPIXのように上場している銘柄全部を対象にしている指数の投資信託に対して出資することで、結果的にまんべんなく上場企業の株価を買い支えていることになるのである。これによりコロナによる株式の暴落を防ぎ、経済が破綻しないよう必死に食い止めているのである。なお、ETFの買い入れ自体は従来からやってはいたのだが、コロナ対策のためにその上限を増やした。

ちなみに、このように株式市場に対してETF等で直接買い支えをしている中央銀行は世界では日銀のみ(のはず)で、他国では金利や債券買い入れでのコントロールにとどまっている。

 

結局これらをしてどうなる?

 1,2により金融機関や会社に対して資金供給ができるようになるため、コロナにより目先の資金繰りに苦しい会社が必要以上に潰れずに済む。我々一般消費者だと失業して給料が一定期間支払われなかったとしても、細々と貯金を切り崩していくことで数ヶ月〜1年と堪えることができる人もいるだろう。しかし、企業における手元の現金というのは(売上が0だと)1~2ヶ月程度しか持たないというのは割と普通のことで、いかに現金があるか、というのは企業においては重要となる*1。ちなみに利益が出ていても現金が無いと会社は潰れる。(=黒字倒産)

というわけで企業が潰れると株式は完全な紙くずになってしまう*2が、こういった救済措置によりなんとか持ちこたえられれば、少なくとも紙くずにはならずに済むのである。結果的に、株価が暴落しないように支えられているのである。

*1:なぜ企業はそこまで現金を持っていないのかと言うと別に貧乏というわけではない。通常の経済活動をする上で現金を余らせるよりも、それを積極的に使って設備を購入したり人を雇ったりすることでより高い利益をあげるためである。

*2:なぜ企業が潰れると株式は紙くずになるのかについては、一見当たり前のように思えるがそうではない。本来であれば資本と負債についてきちんと説明が必要となるが、ここでは大きく脱線してしまうので省略する。 

なお、こういった施策に対して当然デメリットは存在する。中央銀行の政策というのはマクロ的な視点でしか操作ができないので、本来的には救済しなくてもよかろう企業まで資金供給できてしまったり、資金が必要以上に余剰となってしまうことで、余った現金が有価証券や不動産に流れ込んでしまうことも生じてしまう。いわゆる日本で発生したバブル経済がまさにそうで、日銀の金融緩和をきっかけとした余剰資金が有価証券や不動産に流れ、本来の価格以上に値がついてしまったことで、投資が投資を呼び、さらに株価や不動産価格が上昇していった。(日本のバブルについてはプラザ合意やら円高不況やらなんやらあるが、ここでは一旦省略。)特に日銀政策の中でもETFの買い入れは株価形成という意味では直接的に株式を買うことと変わらないし、瀕死の会社を救うというよりは、良くも悪くも均等に市場全体に対して買い支えることになるので、マクロ的な観点で株価の暴落を防ぐ一方で、個別の株式に照らし合わせてみると適切な株価の形成を阻害してしまう可能性も秘めているのである。

3.財政政策

そもそもなのだが、マクロ経済学について前提を話すと、景気回復にあたっては大きく、金融政策と財政政策という2軸が存在する。金融政策は先述した中央銀行による利子率や資金供給による景気コントロールである。財政政策は政府による公共事業等の施策や減税による景気コントロールである。世の中の経済に関する施策やおよびそれに関するニュースを見るときには、「これは金融政策か、財政政策か」という視点を持つだけでも見方が変わってくる。ちなみに上記で散々述べてきた日銀は政府とは独立している機関である。政府が日銀の権限を持つと政策において好き勝手に金を使えることになるので、組織として分離されている。もちろん、こういったコロナ禍のような状況では、ある程度協調して日本経済を支えていくわけだが。

さて、今回の株価のより戻し・安定化についていえば、財政政策は個人的には少なくとも現時点ではその効果は限定的ではないかと考えているが、正直財政政策関連は自分は詳しくないし、ましてや他国の財政政策ともなるとほぼわからないので、ここについては完全に素人考えである。コロナに対していろんな政策を行っているが、一番なじみがある例の10万円給付金について書いていきたい。先述の金融政策と違ってこちらの話はまだ馴染みのある単語・概念だと思う。

10万円の特別定額給付金

コロナで経済混乱していた時期に、一定の給付金もしくは商品券のようなものを配布する案が浮上した。なんなら利権がらみで「お肉券」とか「お魚券」とかそういった話もあったりしたが…。

そもそもの前提としてこの給付金に関する目的は以下の2つだろう。

1.金を回して景気を刺激

2.所得が減額した人の救済措置

 1は経済学的な財政政策ということになるだろう。給付金により消費者に消費を促してなるべく市中に現金を回して景気を活性化させる。マクロ経済的な観点でいうと、国民所得を変数とするので減税と同等の効果が出るはずで、直接現金をばら撒かなくても消費税やら所得税やらを減税するというやり方もありではある。(このあたりの話はマクロ経済学をかじっている必要がある。話が脱線しすぎてしまいそうなのでここでは「ふーん」という程度に留めておいてほしい。)

しかし、減税という観点の場合、例えば消費税についてはつい先日2019/10/1より10%に上げたばかりな上に、軽減税率というやっかいな仕組みを導入しており、これを一律変更するには、税計算やITシステムの変更に大きな影響が出るため、コロナ禍でスピード感が要求されている中で減税を実施するのは難しいであろう。(※中小企業に対する固定資産税の減額対策は実施されるが、例外も挙げていくとキリがないので一旦ここでは置いておく。)

2はどちらかというと福祉・社会保障的な観点だ。要は憲法第25条で規定されている「国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」ことを保証するための政策であろう。コロナの影響で失業・休業し、大きく所得が減ってしまい、下手すると生活ができなくなってしまう人を救う事が必要になるための補助金である。当初給付金関連の話が出たとき、個人的な感情としても「俺に10万渡すより、もっと生活がやばい人にたくさんお金を渡したほうが良いんじゃないか?」と、当時は思ったりしたものだが、これは簡単なことではない。実際の事務手続きをする現場からしてみれば、"「コロナのせいで所得が減額した」というのは何を持って証明できるのか?"という問題が発生するためだ。

 提出してもらうであろう源泉徴収票や給与明細のチェック、そしてその妥当性確認をするのはかなり至難の業だ。中には悪意をもって資料を改ざんし「コロナのせいで所得が減額した!」と言い張る人だって出てくるかもしれない。企業であれば決算書類や税務署に提出する各資料からある程度はその判断もできるだろうが、個々人までそれを追うのは現実的ではないだろう。(特にそういった苦境に立たされる人ほど非正規雇用だったりで、きちんと示せるような書類があるかも怪しい…これは偏見だが…。)

  というわけでこの1,2両方を解決する案が望まれるわけだが、そんな中で政府が取った施策は一律での10万円給付ということだ。一律での給付なので、豊かな人もそうでない人にも均等に給付される。1の市中へ金を回すという意味では問題ないだろうが、2の救済措置という意味では少々弱めになってしまうだろう。ただし、先述のように所得の減額をどのように測定するかは難易度が高いので、それであればスピード重視で一律給付するほうが得策であると判断したのだろう。

実はこれについて、2の救済措置効果を強める案として、給付金を課税扱いにしてしまうというのも手であった。「政府に吸い取られるならバラマキの意味ないじゃん!!」と思うかもしれないが違うのだ。これを通じて所得の再分配をするのだ。つまり、いっぱいお金持っている人は最終的には(確定申告とか年末調整で)税金として返してね、お金持ってない人は(所得が少ない分)税金として返さなくていいのでそのまま役立ててね、という形で、結果的に所得が減額した人の救済措置をすることができる。なお、お金ある人においてはあとから税金として取られることを知らずに使ってしまう人も一定数いるかもしれないが、それならそれでOKということである。

※今回の10万円の定額給付金は非課税扱いだが、企業支援に対する各種補助金雇用調整助成金等については課税扱いのものもある。

その他、10万円給付以外にもいろんな施策があったり、補正予算も過去最大規模で組まれているが、正直このあたりはそこまで詳しくないのと、さらにそれがどこまで株価へのインパクトがあるのか不透明なので、ここでは省略する。 

4.今後どうなるか

以上こんな感じで記載していったが、冒頭記載の通り、株価の動きなんてのはいろんな要因が重なり合うのに加えて、なんといっても投資家心理という完全にアンコントローラブルなパラメータも影響してくるので、こういったことを知っていたからといって、今後どうなるかなんてのはわからない。この記事を書いているときに、株価が大暴落しているくらいである。

NYダウ暴落、1861ドル安 過去4番目の下げ幅(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

 ただ、こういったことを知っていることで、普段のニュースの見え方、特に経済系ニュースで言っていることがどういうことか分かってくる。特に今回のコロナでは大規模な経済混乱が起きたことで、各国が揃いに揃って対策を打ってきている。そしてそれらの政策も非常に分かりやすいと言うか、やること・やる目的がはっきりするので教科書的なアプローチになりやすく、ある程度マクロ経済の話が理解できていれば、何を狙っているのかが見えてくるようになる。この記事を通じて、今後、そういったニュースを読む手引としてもらえると幸いである。

5.参考文献

自分もまだまだ勉強中の身であるが、参考までにこの手の話を知るのに推奨する本を紹介する。

基礎知識・基礎体力
試験対応 新・らくらくマクロ経済学入門 第2版

試験対応 新・らくらくマクロ経済学入門 第2版

 

 公務員試験等の試験対策用のテキストである。試験対策のため、詳細な理屈の話というよりは、問題を解くための解法に注力されてしまう部分がどうしてもあるのだが、そうはいっても基礎体力として手を動かしておく必要はあるだろう。経済学は数学的なアプローチが必要となり、漫然と読むだけでは身につかないので、紙と鉛筆が必須。 IS-LM分析は抑えておきたいところ。

うかる!  証券外務員一種 必修テキスト 2019-2020年版

うかる! 証券外務員一種 必修テキスト 2019-2020年版

  • 発売日: 2019/09/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 こちらもやはり試験対策の本になってしまうが、なんだかんだでまんべんなく証券知識を勉強する際にとっつきやすいのは証券外務員であろう。証券会社はもちろん、金融機関に関する仕事をするのであれば抑えておきたい。この記事の内容を押さえる上では株・債・投資信託がわかれば十分だろう。 

読み物系
経済は世界史から学べ!

経済は世界史から学べ!

 

とくにコロナのような未曾有の事態に遭遇したとき、歴史をたどるのが一番賢明であろう。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」かの鉄血宰相ビスマルクの言葉だ。この本は金融恐慌やバブル崩壊など、その発生から終焉に至るまでをきれいにまとめて書かれているため非常に読みやすい。今回のコロナでの経済混乱において参考になる話がいくつもあるだろう。

 

はじめての経済学  (上)(下)巻セット

はじめての経済学 (上)(下)巻セット

  • メディア: セット買い
 

「はじめての」とは言うものの、最低限のミクロ経済・マクロ経済に関する知識は前提となる。これを抑えた上で、歴史的な事実の分析もふまえてあらためて体系的に経済学を俯瞰できる。数式的なアプローチをしないので、読み物として読める。文庫本でKindle版もあるので、手っ取り早く購入しやすいと思う。

発展系
入門マクロ経済学 第5版

入門マクロ経済学 第5版

  • 作者:巌, 中谷
  • 発売日: 2007/03/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 とても良い本だがとても難しい。これも紙と鉛筆を用意して机に向かって理解するタイプの本、というか教科書である。なお、難しすぎて半分くらいで自分は挫折した。それでもその半分までの内容はとても素晴らしく、理解できると「あーーそういうことか」と腑に落ちる。より専門的に学ぶのであればこの本の後半部分にも食らいつく必要があるんだろうなぁ…。