一生旅行生活してえ

最近は主に資格取得関連のメモとか勉強法とかを整理

知的財産法について整理

中小企業診断士の経営法務対策として、知的財産法について整理する。

自分の勉強用にまとめたものに過ぎず、内容の正しさ、網羅性を担保したものではない。

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引用元:2021年度知的財産権制度入門テキスト

https://www.jpo.go.jp/news/shinchaku/event/seminer/text/document/2021_nyumon/1_1.pdf

 

特許権

特許法の目的

特許法第1条より「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする」とある。

つまり、整理すると以下のようになる。

大目的:産業の発展

 1.発明を保護して、発明者にて独占的に利用を可能とする。
 2.第三者に発明を知らしめ、利用する機会を与える。

以下、特許庁の記載より抜粋。

発明や考案は、目に見えない思想、アイデアなので、家や車のような有体物のように、目に見える形でだれかがそれを占有し、支配できるというものではありません。したがって、制度により適切に保護がなされなければ、発明者は、自分の発明を他人に盗まれないように、秘密にしておこうとするでしょう。しかしそれでは、発明者自身もそれを有効に利用することができないばかりでなく、他の人が同じものを発明しようとして無駄な研究、投資をすることとなってしまいます。そこで、特許制度は、こういったことが起こらぬよう、発明者には一定期間、一定の条件のもとに特許権という独占的な権利を与えて発明の保護を図る一方、その発明を公開して利用を図ることにより新しい技術を人類共通の財産としていくことを定めて、これにより技術の進歩を促進し、産業の発達に寄与しようというものです。

特許・実用新案とは | 経済産業省 特許庁

発明の定義

発明とは自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。

1.自然法則を利用していること

自然法則とは、自然界において一定の原因によって一定の結果をもたらす、再現性のある科学的な法則のことである。

そのため、人間が決めたルール(ゲームのルールなど)の利用や、自然法則そのもの(万有引力の法則など)は対象外となる。

2.技術的思想であること

実際に利用でき、知識として客観的に蓄積ができるもの。そのため、"技能"とは異なる。技能の定義は、その個人でしか扱えず、再現性の無い能力のことを指す。また、機械の操作方法についてのマニュアル等の単なる情報の提示も、技術的思想に該当しない。

3.創作であること

新しいものを作り出すこと。既存のものや天然物の発見は創作にはならない。ただし、その天然物から特定の化学物質を分離し、特定の有用性が見いだせた場合は創作となる。

4.高度なものであること

実用新案との区別のために設けている。つまり、実用新案は発明のうち高度ではないもの、ということになる。

発明に該当しないものの例

自然法則に該当しないもの:経済法則、勉強方法、絶対勝てるFX必勝法!など
自然法則そのもの:万有引力の法則、エネルギー保存の法則など
・技能:変化球の投げ方、プロレス技など
・単なる情報の提示:マニュアル、デジカメの撮影データなど
・美的創作物:絵画、彫刻など
・天然物の単なる発見:自然現象の発見、鉱石の発見など

発明の種類

物の発明、物を生産する方法の発明、物の生産を伴わない方法の発明がある。

・物の発明:機械、器具、化学物質、コンピュータープログラム等
・物を生産する方法の発明:食品の加工方法、ハーバーボッシュ法等
・物の生産を伴わない方法の発明:分析方法、測定方法等

発明後の動き

発明の完成に伴い、特許を受ける権利が生じる。この権利自体は売買や譲渡、贈与が可能な財産権である。

特許登録要件

以下の5つを満たす必要がある。

①産業上利用できる発明であること(産業上の利用可能性)

個人的にのみ利用される発明(安眠法やストレス解消法)や、理論的に可能だが現実的には実現できないものは対象外となる。

②新しいものであること(新規性)

出願前にテレビやインターネットなどで公然と知られてしまっている発明は、新規性が無いとみなされて、対象外となる。なお、新規性の基準は特許出願時となる。

ただし、自身で公開したものについては、一定要件に伴い新規性を認められる例外規定がある。公表日から1年以内に特許庁に出願し、出願日から30日以内に公表の事実を証明する書面を提出する必要がある。

③容易に考え出すことができないこと(進歩性)

新規発明であっても、従来技術をちょっと改造した程度のものは進歩性が無いので対象外となる。椅子の移動をスムーズにするキャスターを、机につけて移動をスムーズにする場合など。

④先に出願されていないこと(先願)

同一の発明について複数出願された場合は、先願主義にもとづき、早いものがちとなる。なお、同日出願の場合は、特許出願人の協議により定めた出願者が特許を受けることができる。これは共有として複数人に対して持分として特許出願とすることも可能である。

なお、協議が不成立の場合は誰も特許登録を受けることができない。

公序良俗を害さないこと

紙幣の偽造技術の発明など。

特許権取得手続き

特許権取得手続きは以下の流れになってる。

出願→出願公開→審査請求→実体審査→特許査定・設定登録→特許無効審判→特許異議申し立て

1.出願

特許を受ける権利があるものが、必要書類を特許庁官庁に提出する。その後方式審査にて、手続き的・形式的要件を満たすかのチェックを行う。

2.出願公開

出願日から1年6月を経過した後に、出願書類が公開される。なお、出願から1年6月を経過する前であっても、出願人が希望する場合にその申請により出願公開を行うことが可能。

なお、この段階で第三者から模倣されるリスクが生じることになるが、それに対して特許出願者はその第三者に対して保証金を請求することができるようになる。(補償金請求権:実際に保証金請求できるようになるのは特許設定登録後である。)

3.審査請求

出願しただけでは審査は行われず、審査請求をして初めて審査が行われる。出願日から3年以内に審査請求がない場合は出願は取り下げられる。なお、第三者が審査請求をすることも可能。

4.実体審査

審査請求された出願は特許庁審査官によって審査される。

審査官は拒絶理由がないかを確認する。拒絶理由がある場合には出願人に拒絶理由を通知し、出願人は意見書を提出する機会を与えられる。

拒絶理由がないと審査官が認めた場合には「特許査定」が通知され、拒絶理由があると審査官が最終的に判断した場合には、「拒絶査定」が通知される。

これを受け、拒絶査定に不服があるときは、拒絶査定謄本の送達の日から3か月以内であれば、拒絶査定不服審判を請求することができる。

5.特許査定・設定登録

特許査定がされた後、特定査定謄本が出願人に送達された日から30日以内に、最初の3年分の特許料を納めることによって、特許原簿への設定登録がなされ特許権が発生する。なお、4年目以降は1ずつでも、数年まとめてでの納付が可能。

6.特許無効裁判

特許を無効とする審判を特許庁長官に請求する制度。利害関係人のみ、いつでも起こすことが可能。

7.特許異議の申立て

特許権が設定登録された後であっても取消理由があると思われる場合、誰でも特許公報発行から6か月以内に限り、特許庁長官に対して特許異議の申立てが可能。

 

※特許異議申立は、第三者に特許の見直しを求める機会を与えることを目的としているため、誰でも行うことができる。一方、特許無効審判は、主に、紛争の解決を目的としているため、利害関係人の請求に限られる。

特許異議申立と特許無効審判の違いは?|ライトハウス国際特許事務所

特許の実施権

特許権の実施

物(コンピュータープログラム含む)の生産、使用、譲渡、輸出・輸入をする行為のこと。

専用実施権

設定した範囲内において、独占的に特許発明を実施することができる権利。特許権者であっても実施することができない。設定契約及び設定登録が必要となり、他人が実施した場合には差止め請求や損害賠償請求が可能。

なお、特許権発生前からライセンス保護をするために、仮専用実施権として実施権の予約をすることが可能。

通常実施権

独占性がなく、特許権者は自らも実施が可能となり、他人に重複して通常実施権を許諾することが可能。原則、登録は不要となる。

法定通常実施権:特許権者や専用実施権者の意志とは関係なく、法律上当然に発生する通常実施権のこと。先使用権(他社が特許出願前にすでに使っていた技術をそのまま使うこと)や職務発明での通常実施権など。

裁定通常実施権:特許庁長官や経済産業大臣の裁定で強制的に発生する通常実施権。3年以上不実施となっている特許など。特許発明の実施が行われないことによる、社会的な損失を考慮した制度。

また、専用実施権と動揺に通常実施権についても、仮通常実施権の設定が可能。

その他の権利

質権設定

特許権および実施権に対して質権を設定することが可能。民法上の質権とは異なり、特許権者は質権設定後も特許発明を実施でき、質権者は特約がなければ実施ができない。(抵当権に近い性質と言えるか?)

ただし、特許を受ける権利や仮専用実施権、仮通常実施権に対しては質権は設定できない。

共同発明

複数のものが共同して完成させた発明のこと。持分で共有することになるが、譲渡や実施権の設定は相手方にも影響があるため、共有者の同意が必要となる。他方、持分放棄や特許権の実施においては同意は不要となる。

 

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実用新案権

実用新案法の目的

物品の形状、構造または組合せに係る考察の保護および利用を図ることにより、その考案を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする。特許との違いは「発明」における「高度であること」は必要にならない。それ以外の目的の趣旨となる、権利者の保護・産業の発展という点は同じである。

なお、考案は物品の形状・構造・組み合わせに限られるので、方法、組成物、化学構造やプログラムなど一定の形状を有さないものは対象にならない。

実用新案登録要件

産業上の利用可能性、新規性、進歩性、反社会的でないこと、と言った点は特許と同様。

特許との違いは以下の通り。

同日出願

先願主義という点では特許と同様だが、同一の考案について同一の日に2つ以上の出願があった場合は、誰も登録を受けることができない。(実用新案法7条第2項)

※実用新案では無審査主義のため、方式審査・基礎的要件審査が通れば登録ができてしまう。そのため、協議をするプロセスが無く、特許庁において登録拒否する権限無い。しかし、上記法に基づく拒否理由は発生するため、登録後に無効とする審判を起こすことが可能となる。

出願書類

物品の形状に関する考案のため、図面の添付が必須。

無審査主義

そもそも実用新案における審査の流れは以下の通り。

出願→方式審査→基礎的要件審査→設定登録→実用新案技術評価請求

特許との大きな違いは実体審査が行われず、これを無審査主義という。

なお、基礎的要件審査は、考案が物品の形状・構造または組合せに係るものか、といったことを審査する。

権利存続期間

実用新案権は登録により発生し、出願の日から10年存続し、延長制度は無い。また、実用新案における無効審判は特許と異なり、誰でもいつでも請求可能。※特許は利害関係人のみ。

権利行使

権利行使にあたっては、無審査主義を取っているため考案の有効性が判断できない。したがって、権利者が実用新案権を行使するにあたっては、実用新案技術評価書を提示して警告を行ったあとでなければ、権利侵害者に対しての損害賠償請求が行えない。

(つまり実用新案権の権利行使にあたっては、実用新案技術評価書+警告が必要。もし、実用新案技術評価書なしに警告をしたことで相手方に損害が発生した場合は、損害賠償責任が発生する。)

なお、実用新案技術評価書とは、登録された考案の新規性や進歩性等の有無について特許庁審査官が評価し、実用新案権の有効性を判断した書類である。実用新案技術評価の請求はいつでも誰でも可能。

実用新案登録に基づく特許出願

実用新案登録したものを特許として出願し直すことが可能な制度。実用新案登録から3年以内に、実用新案権を放棄することで出願が可能。ただし、実用新案技術評価の請求があった場合は、実用新案権としてすでに有効な状態となるため、特許出願は不可となる。

特許となった場合には、再度実用新案に戻すことや、実用新案技術評価の請求はできなくなる。また、特許の有効期間は20年であるが、この場合の起算日は実用新案出願日からとなる。

その他の権利

特許権と同様に実用新案権は財産権として譲渡や売買、質権の設定、実施権の設定などが可能。

 

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意匠権

意匠法の目的

意匠法第1条には、「この法律は、意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする」とある。

意匠の定義

物品の形状・模様もしくは色彩もしくはこれらの結合、建築物の形状等または画像であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの。要は見て美しい、かっこいい、すごいと思うデザインのこと。

特許での発明、実用新案での考案に対して、意匠では「創作」という言い方をする。

意匠登録要件

1.工業上の利用可能性があること

意匠法は、産業の発達に寄与することを目的としているため、工業生産過程(機械生産・手工業は問わず)を経て同一物を量産できる(工業場の利用性がある)意匠でないと、意匠登録は認められない。

2.新規性があること

特許と同様、新規性を有する必要がある。国内及び国外で、公然と知られた意匠、頒布された刊行物に記載されたり、インターネット上で知れ渡っている意匠、そしてそれらに類似する意匠は新規性が認められない。

3.創作性があること

創作が容易で、誰でも思いつくような創作性の低いものであれば、意匠登録は認められない。

4.先願であること

同一・類似の意匠が同一日に出願が有った場合は、特許法と同じ考え方になる。つまり、意匠登録出願人の協議により定めた出願に1名だけが意匠登録を受けることができる。なお、協議が不成立の場合は特許同様に誰も意匠登録を受けることができない。

5.不登録事由がないこと

公序良俗に反するもの、他製品と混同するもの、物品の機能上必ずその形状にせざるをえないものは意匠登録ができない。

意匠登録手続き

意匠登録取得手続きは以下の流れになってる。

出願→方式審査・実体審査→意匠登録査定・設定登録→意匠登録無効審判

1.出願

意匠権を受ける権利があるものが、必要書類(願書・図面)を特許庁官庁に提出する。見た目に関するもののため、図面(写真や雛形、見本でも可)が必須。

2.方式審査・実体審査

特許と同じく方式審査・実体審査を行い、拒絶理由がなければ登録査定される。

3.意匠登録査定・設定登録

実体審査において、登録要件を満たしていると判断されると「登録査定謄本」が送達される。なお、初回の登録料は1年分でよく、特許と異なり3年分の納付は不要。

4.意匠登録無効審判

実用新案と同様に、誰でもいつでも請求が可能で、登録異議申立制度は無い。

意匠権の効力範囲

物品と形態において、同一・類似であるものが意匠権の効力範囲となる。つまりこれらは新規性が認められない範囲ということでもある。

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引用元:意匠の登録要件 | 特許業務法人 三枝国際特許事務所[大阪・東京] SAEGUSA & Partners [Osaka,Tokyo,Japan] - Part 3

物品の類似は「用途が共通し機能が異なるもの」が定義

物品が同一で形態が類似の例:線が1本入ってるシャープペンシルと線が2本入ってるシャープペンシル(用途・機能は同一で形態について視覚的に大きな差がない)

物品が類似で形態が同一の例:シャープペンシルとボールペン(筆記用具という用途では共通し、その機能は異なる)

物品が類似で形態も類似の例:線が1本入ってるシャープペンシルと線が2本入ってるボールペン

なお、物品が非類似であれば意匠権は及ばない。たとえばおもちゃの車と本物の車は用途・機能が異なるため、別の意匠として登録が必要となる。

また、意匠権は登録してから25年間有効である。

その他の権利

特許権と同様に意匠権は財産権として譲渡や売買、質権の設定、実施権の設定などが可能。

特殊な意匠制度

部分意匠制度

物品の全体から部分的に切り離せない部分について意匠登録をすることが可能。なお、切り離せる場合はそれぞれを意匠登録することになる。

椅子の脚部分だけ、といった形で登録を行う。

画面デザイン

情報家電が本来機能を発揮する上で必要となる操作に使用されるもの。炊飯器やガラケーのディスプレイ箇所の表示のこと。これらも意匠登録の対象となる。

組物意匠制度

同時に使用される2つ以上の物品であり、組物全体として統一感があるものを1つの意匠として登録する制度。ナイフとフォークなど。

関連意匠制度

意匠に類似する意匠について意匠として登録することができる制度。もととなる意匠を本意匠もしくは基礎意匠という。類似デザイン含めて創作した場合などに適用する。

本意匠の登録出願から25年が有効期間となる。専用実施権の設定は、本意匠と同一に行う必要がある。

秘密意匠制度

出願人の請求により意匠登録の日から3年を限度として登録意匠の内容を公報に掲載せず、秘密にしておける。意匠登録をすることで模倣されるリスクが生じることを防ぐ。自動車のモデルチェンジ等にて利用する。

 

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商標権

商標法の目的

商標法第1条には、「この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」とある。

特許や実用新案や意匠と異なり、創作者を保護する目的はなく、そもそも商標では創作自体を要件としてない(使用者が商標登録することが可能)

商標の定義

商標法第2条より、「人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの」としている。事業者が商品または役務について業として使用するものが対象となる。

特許庁の説明では「商標とは、事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)です。」とある。

商標制度の概要 | 経済産業省 特許庁

なお、商標は文字商標、図形商標、記号商標、立体商標、結合商標、色彩商標、音の商標、動きの商標、ホログラム商標、位置商標がある。

「ホログラム商標」とは、文字や図形等がホログラフィーその他の方法により変化する商標のことです。たとえば、クレジットカードの表面において、見る角度によって異なる文字や図形等が見える例、見る角度によって異なる文字等が見える例などが、ホログラム商標に含まれます。

ホログラム商標:登録事例-商標登録.com(TM)

「位置商標」とは、図形等を商品等に付す位置が特定される商標のことです。
たとえば、「包丁の柄の中央部分の周縁に図形を付した商標」、「ゴルフクラブ用バッグの側面下部に図形を付した商標」などがあげられます。

「位置商標」の場合は、図形等を商品等の特定の位置に付するものであり、仮に図形等に色彩を付したものを「位置商標」として商標登録したとしても、独占的に使用することができる範囲は、「特定の輪郭を有する図形等」となります。
このため、商品等に使用する際には、必ずその輪郭を有する図形等で使用しないと当該「位置商標」を使用していることになりません。

位置商標:登録事例-商標登録.com(TM)

商標の登録要件

一般的登録要件

ある事業者の商品・役務を他の事業者の商品・役務と区別する「自他商品・役務識別力」を持つことが要件となる。つまり、その商品の普通名称やありふれた名称などは商標として利用できない。

例:
1.商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する商標:商品「砂糖」に「砂糖」の商標など。

2.商品・役務について慣用されている商標:役務「座席の手配」→商標「プレイガイド」

3.その商品の産地等又はその役務の提供の場所等を普通に用いられる方法で表示する商標:商品「お菓子」に対して「東京」という商標や、役務「飲食の提供」に対して「大阪」、商品「薬」に対して「万能」など。
→このような標章は通常、商品又は役務を流通過程又は取引過程におく場合に必要な表示であり、開放しておくべきだからである。

4.ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する商標:「山田」、「すずき」等

5.極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標:「1」、「○」等

6.その他何人かの業務に係る商品又は役務であるかを認識することができない商標:元号プログラミング言語

ただし、3~5に該当する商標であっても、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、商標登録が可能となる。

不登録事由

一般的登録要件を満たしていても公共機関の標章と紛らわしい場合や、他人の登録商標と紛らわしい場合などは、不登録事由として登録が認められない。

国旗、褒章、赤十字のような国や団体などを表すものであって著名なものや、ラーメンに対して「うどん」とするような紛らわしい商標など。

 

商標権の取得手続き

商標登録取得手続きは以下の流れになってる。

出願→方式審査→実体審査→登録査定→設定登録→無効審判→異議申立

1.出願

商標権を取得するためには、商標登録を受けようとするものが、必要書類を特許庁長官に提出する必要がある。一商標一出願の原則にて、1つの願書では1つの商標しか出願ができないが、商品・役務については1つの願書で複数指定が可能である。(もちろん別々での出願も可能)

例えば、商品「ラーメン」、役務「飲食の提供」に対して、「ラーメン大王」という商標を付与するなど。

なお、特許と同様に出願すると出願公開制度があり、特許のように1年6ヶ月という期限は無い。

また、商標権も先願主義を取っている。同日出願においては、まず協議により決定し、協議が不成立の場合には特許庁長官による公正な方法によるくじで決められる。

2.方式審査・実体審査

特許と同じく方式審査・実体審査を行い、拒絶理由がなければ登録査定される。

また、特許と異なり審査請求制度が無い。

3.登録査定・設定登録

特許や意匠と同様であるが、商標法においては出願日から1年6か月以内に拒絶理由が発見されない場合には、商標登録されるという独自規定がある。

また、登録料は10年分の一括納付または5年毎の分割納付で支払う必要がある。

4.商標登録無効審判

特許と同様で、商標登録の無効審判を請求できるのは利害関係人のみ、原則いつでも可能。ただし、一般的登録要件を欠くものなど、一定の事由については設定登録から5年を経過したときには請求をすることができない。

5.登録異議の申立て

誰でも、商標公報発行から2か月以内に限り申立てが可能。

不使用取消審判

他社が登録している商標権が実際には使用されていない場合に、その商標権の取り消しを求めることができる制度。不使用取消審判が申し立てられた場合、継続して3年以上日本国内でその商標が使用されていないときは、特許庁がその商標権を取り消すことになる。いつでも誰でも請求が可能。

これは日本において商標権は登録によって効力を発生する「登録主義」を採用しているためである。実際に使っていることを要求する「使用主義」との親和性を高めるために、不使用取消審判の強化を図っている。

また、商標権者による不正な使用があったときも、誰でも取消審判(不正使用取消審判)を請求することができる。

商標権の効力

1.使用権

商標権の「使用」は商品販売に係る行為、役務の提供に係る行為、商品・役務の広告活動に係る行為、音に係る行為がある。

なお、電子出版物などについては、ダウンロードが可能であれば商品、ダウンロードができなければ役務として取り扱う。

2.禁止権

登録商標に係る指定商品・役務において、類似する範囲内で、他者の使用を禁止できる権利のこと。

商標権の効力が及ぶ範囲

引用元:商標制度に関するよくある質問 | 経済産業省 特許庁

3.存続期間

設定登録の日から10年存続する。更新申請を行い、更新登録を受ければ何回でも更新が可能となる。

4.その他の権利

財産権として、売買や譲渡が可能、および質権の設定や共有が可能である点は他と同じだが、以下が大きく異る。

・裁定通常実施権が規定されてない:裁判所判断での権利付与が無い。

・通常使用権について当然対抗制度が規定されていない:通常使用権は登録しなければ対抗要件を満たすことができない。そのため、登録しないうちに商標権の譲渡がされたりした場合、通常使用権者は引き続き商標を使うことができない。

・先使用権の規定:当該商標が需要者に広く認識されている必要がある。(周知性がある。)、商標権者または専用使用権者は先使用権に対し、自己の登録商標との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求できる。

特殊な商標制度

防護商標登録制度

登録商標を使用した結果、需要者に広く認識されたとき、非類似の商品・役務についても禁止権が及ぶ制度。先述の表で言うと、右上箇所(商標は同一だが、商品・サービスは非類似)について禁止権の○がつくことになる。

例えば、商品「白米」について「ソニー」という商標がつくことで、ブランドイメージの毀損や混同が発生してしまうおそれがある。それらを防ぐ制度。

団体商標登録制度

事業者を構成員にする団体が、その構成員に使用させる商標について、商標登録を受けることができる制度。役務「飲食の提供」に対して「ラーメン大王」の商標を登録し、その「ラーメン大王」の文字がプリントされたTシャツを従業員が着るような場合。

地域団体商標登録制度

地名入り商標について、団体商標登録をできる制度。「九州ラーメン」のように地名+商品・役務名のようなもの。一般的登録要件においては普通名称となってしまうため要件を満たさないが、この制度においては認められる。ただし、複数都道府県に及ぶ程度の周知性が必要となるため、その地域だけに通じるものではNG。

また、地域団体商標権に係る商標権は譲渡や専用使用権の設定が行えない。

小売等役務商標制度

小売業者は製造業者でもサービス提供者でもないため、単に商標権だけ存在すると物を売るときにその商標が使えなくなってしまう。そのため、看板や店員の制服などに使用する商標をサービスマークとして保護する制度が存在する。

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不正競争防止法

この法律は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、 不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

以下、経産省の資料も参照。

https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/2020_unfaircompetition_textbook.pdf

不正競争行為

以下の10種類が対象となる。

1.周知表示混同惹起行為

よく知られているものと同一・類似の商品表示を利用して、他人の商品・営業と混同を生じされる行為を規制する。成立するには以下の条件を要する。

  • 他人の商品等表示
  • 需要者の間に広く認識されていること(周知性)
  • 同一・類似の商品等表示(同一性・類似性)
  • 商品等表示の使用又はそれを使用した商品の譲渡等
  • 他人の商品・営業と混同(又は混同のおそれ)を生じさせること(出所混同のおそれ)

具体的にはソニーウォークマンに対して、それとは関係ない会社だが「有限会社ウォークマン」という商号を用いた会社に対する差止めなど。

また、周知の範囲としては、一地方的なものでも構わないが、その使用地域を含まなければならない。例えば、大阪府で営業している「田中屋」に対して、東京で「たなか屋」を運営しても差止め対象にはならない可能性がある。

2.著名表示冒用行為

他人の著名な表品等表示と同一・類似する表示を規制する。周知表示混同惹起行為とは異なり、混同を要件としていない。混同を生じなくても、第三者が利用して顧客吸引力にタダ乗りし、著名表示の表示力を希釈化し、良いイメージを汚染することを規制する。

具体的には任天堂マリオカートに対して、それと類似する「マリカー」等の標章を営業上使用したり、それに類似するコスチュームを使用している場合など。(マリカー事件)

  • タダ乗り(フリーライド):著名表示をタダで利用してその顧客吸引力や財産的価値にあやかろうとすること。
  • 希釈化(ダイリューション):希少価値を持つ著名表示が。冒用行為によって薄められること。
  • 汚染(ボリューション):高級イメージの商品表示を高級とは言えないような店舗名などに冒用することで、その著名表示のイメージが汚染されること。

例えば、パチンコ屋で「iPhone」と名乗る場合、混同が生じる可能性は低いが、iPhoneのイメージダウンにつながる可能性がある。

3.商品形態模倣行為

他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡等する行為のこと。譲渡等するのがNGで模倣自体を規制しているわけではない。

なお、日本では最初に販売された日から3年経過した商品の形態模倣および模倣商品の善意かつ無重過失取得者は対象外となる。(不正競争とはならない。) 

例えば、たまごっちのデザインと告示するキーホルダー型液晶ゲーム機の製造販売など。(たまごっち事件)

4.営業秘密に係る不正行為

企業が保有しているアイディアなどの営業秘密を取得し、それをもとに利益を得たりすることを規制する。営業秘密として保護を受けるには、秘密管理性・有用性・非公知性という3要件をすべて満たす必要がある。

  • 秘密管理性:従業員等から見て、その情報が会社にとって秘密としたい情報であるかが分かる程度に、アクセス資源や社外秘表示などがされていること。
  • 有用性:ノウハウなど技術的情報事業活動に役立つものであること。
  • 非公知性:秘密を脱した状態ではないこと。一般的に入手できない状態のこと。
5.デジタルコンテンツの技術的制限手段に対する不正行為

技術的制限手段とは、音楽や写真、映像データ等のコピーを防ぐ手段のことである。これに対する不正行為を規制する。

つまり、コピーそのものを防ぐのではなく、コピーを防ぐ手段を妨害する装置やプログラムを譲渡等することを規制する。例えばコピーガードをキャンセルするソフトを販売する行為など。そのため、個人ユーザーがコピーガードをキャンセルする分には規制の対象にならない。

6.ドメイン名に係る不正行為

図利加害目的で、他人の商品等表示と同一・類似のドメイン名を使用する権利を取得・保有またはそのドメインを使用する行為を規制する。例えば、他人の商号と同一の文字列について先にドメイン名を申請して登録を受け、その他人に対して高額での買い取りを持ちかける行為など。

なお、保護されるドメイン名は、周知・著名であることは必要としていない。

7.誤認惹起行為

商品・役務もしくはその広告・取引に用いる書類・通信に、その商品の原産地や品質、内容、数量とうとうについて誤認させるような表示をし、提供する行為を規制する。

中国産のあさりを熊本産と偽るなど。

8.信用毀損行為

競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、またはする行為のこと。例えばライバルの会社について「あそこは倒産しそうだ」といった噂を流すなど。

9.代理人等の商標冒用行為

パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者の代理人が、正当な理由なく、その商標を使用等する行為。例えば有名ブランドの商標を利用して類似商品を販売した場合など。

10.限定提供データに係る不正競争

ID/パスワードなどの技術的な管理をして提供されるデータを限定データという。これを不正に取得・使用等する行為を規制する。

限定データは、限定提供性、電磁的管理性、相当蓄積性を3要件とする。

不正競争に対する手段

民事上の手段

他の知的財産権と同様に。不正競争によって営業上の利益を侵害されたものは、差止め請求、損害賠償請求、信用回復措置請求が認められる。

損害賠償額の推定規定はあるが、過失の推定規定はない。

刑事上の手段

一定の場合には刑事罰が下される場合もある。

 

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