一生旅行生活してえ

最近は主に資格取得関連のメモとか勉強法とかを整理

最近読んだ本などを紹介

中小企業診断士二次試験が終わり、特にこれといった資格取得の予定もなかったので、久しぶりに積んである本を消化していきました。

その中から個人的に面白かった本を紹介したいと思います。

 

2030 半導体地政学 戦略物資を支配するのは誰か

半導体が製造業におけるキーファクターであることは言うまでもないのですが、実際、自分のようにその業界と関わりがないとイマイチピンとこないわけです。特に2年くらい前に話題になったTSMCに関連する各種世界情勢について、なんとなくわかったようなわからないような…トランプがなんか中国とやってんなーくらいの理解だったわけです。

一般的に製造業におけるスマイルカーブでは製品の製造工程というのは付加価値が低く、利益幅が少ないと言われています。そのため、成功している大企業というのは上流と下流だけ抑えて、中流工程はアウトソーシングするというのが典型的な勝ち組でした。例えばAppleなんてのは代表的な例で、企画・設計、そしてアフターサービスが彼らの主軸で、実際のものづくりは低い単価でガンガン委託しているわけです。当然、そういった構造上、製造工程を請け負うのはいわゆる下請けとなるので立場も弱く、金額面や納期面で不利な条件を押し付けられてしまうというのは世の常です。

ところがギッチョン、その中流工程で世界的な揺るぎない成功を収めている会社があります。それがTSMCというわけです。その唯一無二の技術力で、「TSMCじゃないと作れない」を実現してしまったがために、名だたる企業はTSMCの言いなりになってしまう状態です。「価格改定させていただきやすw え、受け入れられない?別にいいっすけど、うちじゃないとこれ作れないっすよw」こんなこと言われたらGAFAもBATもたまったもんじゃありません。なんという殿様商売でしょう。マイケル・ポーターのファイブフォース分析で言えば売り手の交渉力がむちゃくちゃ高くなってしまっている状態なわけです。

というわけで話が脱線しまくりましたが、この本を通じて、半導体というのが現在においてどれだけ重要な産業となっているのか、それを世界中でどのように争奪しているのか、台頭する中国とアメリカとのバチバチ、そしてその中で日本はどうしていくべきか、そういうことが知れる一冊となっています。

 

移民の宴 日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活

大好きな高野秀行氏の本です。自分は特定の作家のファンになるタイプではないのですが、高野氏については例外で、とにかく高野秀行と名がつく本は買い漁っており、20冊くらいは読んでいます。その中の1冊としてこの本を挙げさせてもらいました。

日本は島国でありなおかつ極東に位置していることから、どうしても地理的に民族移入が発生しづらかったわけですが、このグローバル化が進んだご時世、移民はどんどん増えて生きています。(こういう言い方をすると移民の定義とは、という沼にハマってしまうのですがここでは控えます。そのあたりはアカデミックな方に任せます。)

ここ最近はコロナのせいで街で外国人を見ることは少なくなった気はしますが、少なくとも自分の子供の頃に比べるとグローバル化を実感するわけです。生まれが北海道という僻地ということもあり、小・中学校くらいのときに外国人を見ることなんてのはせいぜい英語の授業とか、その手の異文化交流イベントくらいで、街なかに溶け込む姿は想像すらつきませんでした。それが、高校生くらいのときには雪まつりに中国人観光客が、ニセコにはオーストラリアからスキーをしに人が押し寄せてくる状況となり、思えば街中のコンビニとかにも外国系の名前の名札を見るようになった気がしております。

現在自分が住んでいる地域にも、出稼ぎなのかはちょっとわかりませんが、東南アジア系のコミュニティがあり、最寄り駅の電車に乗る際にはその方々の喋り声が聞こえてきます。なんといっているのかはわかりませんが…。仕事の上でも、中国でのオフショア開発はもやは当たり前、なんなら彼らがいないと品質が成り立ちません。(まさにTSMCみたいな状況が我々のレガシーなIT業界でも起きている。) 

また、日本の多様な食文化においても、バリエーションが豊かになってきました。かつて「中華料理」といえばチャーハンとかレバニラ炒めみたいな町中華が一般的でしたが、火鍋屋や蘭州牛肉麺のようなコアな店が出現し始め、それを日本人も受け入れられる舌ができている状況となりました。これと逆行して世界では日本料理が受け入れられうようにもなっています。SUSHIはもちろん、ラーメン屋も珍しくありません。住んでいる地域や文化、風習が違っていても、うまいもんはうまい!ってことですな。人類みな兄弟。

というわけで全く本の紹介になっていませんが、移民として日本に来て、そこからたくましく生きていく人たちを、食を中心に綴られている本です。特に印象的だったのは、南三陸町にいるフィリピン人女性たち。東日本大震災で被災して、国に帰りたいのかと思いきやむしろ逆。

「日本で三十五年、この町に二十年、誤解を受けながら長い時間をかけて地元に溶け込みやっと仲間になれたんです。今更他の土地に住むつもりはないですね」

高野秀行. 移民の宴 日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活 (講談社文庫) (p.102). 講談社. Kindle 版. 

うーん、すごい。海外に移住するにはこれだけの根性が必要か。ツイッターで「アメリカ最高!日本はオワコンww」とイキっているやつらに見せてやりたい文章です。

 

失敗のメカニズム 忘れ物から巨大事故まで

様々な失敗について分析をしている本です。誰にだって失敗やミスというのはするわけですが、なぜその失敗をしてしまったのか、という振り返りと、どうすれば今後防げるのか、という是正が大事になります。

仕事柄そのあたりを詰め詰めすることが多いわけですが、これをきちんと行うのは、いかに解像度を上げて言語化できるかという能力が必要となります。ただ、その能力っていうのが難しいわけです。例えば、

間違ってこのボタン押してしまいました!

という失敗があったときに、「なぜそのボタンを間違って押してしまったのか」というなぜなぜ分析をするわけですが、この言語化能力が低いと「なんとなく…」とか「よくわからないけど間違ったものは間違ったんです」というように、結局その原因がつかめず、是正に繋げられないことがあります。で、この本においてそれの一助となる話がありました。

作業ミスの形態として「認知・確認のミス」、「判断・決定のミス」、「操作・動作のミス」という項目がある

芳賀 繁. 失敗のメカニズム 忘れ物から巨大事故まで (角川ソフィア文庫) (Kindle の位置No.558-559). 角川書店. Kindle 版. 

なるほど、つまり、インプットとプロセスとアウトプットにわけて分析してくことで、解像度を上げて細分化し、どこに原因があるかをつかめるというわけです。

例えば先程の例でいうと、ボタンを間違って押したというのが「認知・確認のミス」だった場合は、「赤色のボタンを押すつもりだったけど、見間違ってオレンジ色のボタンを押してしまいました。」というようなインプットの不備となるわけなので、是正としてはオレンジ色のボタンを赤と区別しやすい色にする、といった対策になるわけです。

「判断・決定のミス」であれば、「赤色のボタンとオレンジ色のボタンは見間違えていなかったけど、オレンジ色のボタンを押すのが正しいと思っていた。」という状態。なので、必要なのは赤色のボタンとオレンジ色のボタンの役割の違いや、作業背景を理解することが対策となります。

で、最後の「操作・動作のミス」は「赤色のボタンとオレンジ色のボタンは見間違えておらず、赤色のボタンを押すのが正しいと思っていたけど、手が滑ってオレンジ色のボタンを押してしまいました。」という状態。であれば、赤色のボタンとオレンジ色のボタンを物理的に離して、手が滑るレベルでは押せないようにするといった対策となります。

なので、今後このようなミスの是正をするときの糸口として、単に「なぜミスをしたのか」という観点ではなく、そのミスはインプット・プロセス・アウトプットのどの段階で起きたものなのか、という視点をもって分析していける学びとなりました。

それ以外にもいろんな事例などがこの本に掲載されており、非常にためになる1冊でした。

世界標準の経営理論

800ページにおよぶ超大作。別名鈍器。ただ、内容はとても読みやすく、800ページ読むのは苦ではありません。この手の本として、例えばマンキュー経済学や影響力の武器といった名著も、分厚いながらもすいすい読める本であるかと思います。(余談ですが影響力の武器は近いうちに再読しようと思って買い直しました。)

中小企業診断士の試験勉強で企業経営理論についてはある程度勉強したり、その手の本を読んだりはしましたが、それらを包括して、なおかつわかりやすく説明してくれる本です。特にこの本の優れているところは理論を中心とした説明になっているところです。どうしてもこの手の本は、理論と共に事例を紹介して、ほら当てはまっているでしょ?的なアプローチをしがちなのですが、それは理論に当てはまるような事例をもってきているからというのもあるわけです。(読み物としてそのような構成自体は否定しませんが…)

全く知識ゼロで読むとするとちょっと辛いと思いますが、中小企業診断士一次試験レベルの経済学と企業経営理論の知識があれば十分読める内容となっています。試験勉強のために読むというよりは、それまで学んだことについてこれを読んで今一度自分の中で整理する、という読み方のほうが適していると思います。

幻のアフリカ納豆を追え! : そして現れた<サピエンス納豆>

またもや高野秀行氏の本です。

納豆というと「日本独自のもの!」と考えてしまいがちですが、そうではなく東南アジア、そしてなんとアフリカにもあるという話です。東南アジアの納豆についてはこれの前作にあたる「謎のアジア納豆: そして帰ってきた〈日本納豆〉」に詳細の記載があり、これはさらにアフリカまで行って現地でその実態を見てみようという内容です。

なにより面白いのは、日本以外の国も自国の納豆を独自のものと思っており、さらに手前味噌ならぬ手前納豆の誇りを持っているということ。外国人が「納豆好きです」というと、多くの日本人は「おお、君には納豆の味がわかるのか!君は日本人の心があるねぇ~~~」と言ったりするが、これと同じことがアフリカでもおきるということ。人類みな兄弟。

そもそも、納豆というのは製造工程がとてもシンプルなため、別に日本以外の国で作られるというのは何も不思議ではないのです。臭さだって、そりゃ日本人以外の人にとっても臭いわけですが、臭いから食べないというのは完全な誤解で、ブルーチーズだったり臭豆腐だったりシュールストレミングだったり、臭い食べ物は世界中にあります。そう考えれば納豆だって別に外国人が食えるのは当たり前の話です。

なぜ日本を始め、東南アジア(の一部)や、アフリカ(の一部)において、納豆があるのか、そしてなぜ納豆が世界中に行き渡らず、その地域だけのローカルにとどまるのか、そういった考察も含めて読み応えのある本となっております。前作と合わせて読むことを推奨します。

平気でうそをつく人たち―虚偽と邪悪の心理学

精神科医である著者が、実際に携わった患者とのやり取りを通じて、自己正当化のためにつく嘘やその特徴を紹介していくのですが、結構胸糞悪いと同時に、自分がこういう人と関わったら人生おしまいだな…と思わず感じてしまう内容です。

いわゆる毒親やメンヘラといった人の話はTwitterやらネットの記事で見かけたりするし、闇金ウシジマくんのようなダークな話は自分は大好きなのですが、現実としてそういった人と関わりたいかというと当然関わりたくありません。ただし、この著者は精神科医としてこの手の人と真っ向から関わらないといけないので、そのやり取りは読んでいるとあたかも自分がその手の人と会話するような心象となり、こっちが結構辛くなってきます。

なんといっても怖いのは、ここに出てくる登場人物そのものは、犯罪者でもなく、本人はなんの自覚もなく、当たり前のように自己正当化をする思考回路を持つ人達であるということ。具体的には、子ども(次男)に長男が自殺したときに使った銃をプレゼントする親の話があるのですが、それについて当の親はなんの疑問を抱かず、むしろ良いプレゼントをしてやったと理解しているという内容があります。もともとは子どもがひどく落ち込んで学校の成績が下がっているのでこの著者のカウンセリングを受けたのがきっかけなのですが、本当に精神的に治療すべきは親の方だったというオチです。

これは極端な例としても、こういう人はそこらへんにもいておかしくないということです。自分自身は特に裕福な家庭でもなく、特別良い環境で育ったわけではないですが、こういうのを読むと、最低限の生活と最低限の一般常識のある親の元で育って良かったなぁとも思わずにはいられませんわ…。

経済で読み解く世界史 (扶桑社文庫)

世界史は大好きで世界史関連の本は何十冊と読んできましたが、これはその中でもかなり面白かったです。ここ最近、経済に焦点を当てて世界史を記述する本というのが色々出てきている印象があり、有名所でいうと「帳簿の世界史」や「会計の世界史」なんかはおもしろかった印象です。どうしても物語に出てくるような歴史の話というのは人間関係に焦点を当ててしまいますが、現実問題としてはそこに生活があり、生活があるということは経済があるわけで、その視点は歴史を紐解く上で切っても切り離せないわけです。

最後の方は国防の話となっており、ここ最近でいうと先月の税制改正の大綱でもありました日本の防衛費増強とも関わる内容となるのでとても興味深く読めました。歴史から学ぶにあたって今の日本は防衛費をどうしていくべきか、著者の主張としては国防費を割かなかったことで衰退した国家を引き合いに出していますが、他方でフランスのように戦争しすぎた結果疲弊してフランス革命がおきた国もあるわけで、なんとも難しい問題です。

自分としても、歴史・世界史が好きではあるのですが、あまりドラマとか物語には興味が無く、そこでおきた出来事の因果関係を探っていくのが好きなタイプです。特に経済を主軸にするのが現実的というか、いちばん自分としても腑に落ちる記述となります。なので、例えば日本史における戦国将軍がどうのこうのとか、幕末の明治維新のどうのこうのみたいな話は全く興味がわかず、各戦国武将の区別すらろくについていません…。

なお、この本をよむ上では、最低限度の世界史の知識は入れておいたほうがスムーズに読めると思います。そもそも世界史の知識がない場合は、「一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書」あたりは最低限読んでもいいんじゃないかなと思います。自分は理系で世界史は高校の教養科目レベルでしか履修してないので、山川の世界史とかは読んだことないですが、そんな人間でも適当に本読めば楽しめるのが世界史のいいところです。

古代ギリシャのリアル

筆者のギリシャ愛がすごいです。本当にこの人はギリシャが好きなんだなあと。自分はギリシャに行ったことはないですが、この本を読んでとても行ってみたくなりました。どちらかというとinteresting的な意味で…。

とにかく筆者はくだけた語り口でギリシャのことを持ち上げもするしDisりもする。それが最&高って感じ?この中立っぽそうで、実はあんたギリシャ大好きでしょ?というのが如実に伝わります。

特にギリシャ神話について、自分は全く詳しくなく、正直真面目に読んでみようとも思ったことがないのですが、ここに記載されているものは超フランクに解説されており、自分のようなギリシャ神話アレルギーの人間でも楽しめる内容となっております。そうそう、なんか神話とか物語とかって持ち上げているけど、実際はこんな感じでしょっていうね。

終わりに

というわけで8冊ほど紹介しました。試験後から今にいたるまでで読んだ冊数はちょうど20冊でした。二次試験の結果次第ではありますが、今年は重たい資格試験は受けないつもりなので、本も時間を見つけてちょくちょく読んでいこうと思います。