営業レバレッジについて整理したいと思う。計算だけするなら営業利益÷限界利益で算出ができるが、その考え方から記載したい。
定性的な説明
営業レバレッジは売上高の変化率に対する営業利益の変化率を示す指標となり、これの大小は固定費割合の大小に関係する。つまり、固定費の割合が大きければ、売上変動における変動費の影響が少ないので、結果、売上増加(減少)に対する営業利益増加(減少)は大きくなり、固定費の割合小さければその逆で、売上増加(減少)に対する営業利益増加(減少)は小さくなる。
もっとざっくりと言ってしまえば、変動費割合が大きいということは売りまくったところで変動費がかさむから利益が出づらい分、売れなければそれはそれで費用がかからないので損失も少ない。固定費割合が大きければ、売りまくればその分がほぼ利益になるものの、売れなければ何もしなくても固定費としてどんどん費用がかさんでしまう、と言うことである。
これを売上変化と利益変化の比率で算出したものが経営レバレッジである。
具体例
営業レバレッジは営業利益の変化率÷売上高変化率となる。変化ではなく変化"率"である。例えば、売上高が100→110に増加、それに対し営業利益が50→60に増加したとすると、売上高の変化率は10%(の増加)、営業利益の変化率は20%(の増加)となる。したがって、営業レバレッジ=20%÷10%=2倍となる。
ここで、単純に売上が10%伸びたら営業利益は10%伸びるとはならない。なぜならばここで固定費の扱いが出てくるためである。もし固定費が0であれば、営業レバレッジは常に1倍、つまり売上高変化率と営業利益の変化率は常に一致する。逆に費用のうち固定費が多ければ多いほど営業レバレッジは大きくなることになる。
具体例でいうと、以下費用のうち20%が固定費の場合と80%が固定費の場合を考える。
1:固定費割合が20%のとき(費用50のうち10が固定費)
売上 100 → 120 (20%増加)
変動費 40 → 48 (20%増加)
固定費 10 → 10 (固定なので不変)
営業利益 50 → 62 (24%の増加)
2:固定費割合が80%のとき(費用50のうち40が固定費)
売上 100 → 120 (20%増加)
変動費 10 → 12 (20%増加)
固定費 40 → 40 (固定なので不変)
営業利益 50 → 68 (36%の増加)
上記の通り、1では営業レバレッジ=24%/20%=1.2倍だが、2では営業レバレッジ=36%/20%=1.8倍となる。この通り、固定費割合が高いほど、売上増加による変動費上昇の影響を受けなくなるので、営業利益増加の幅が大きくなる。
これだけでみれば固定費割合増やしたほうが得じゃね?と思ってしまうが、必ずしもそうではない。もし、売上が下がってしまった場合は逆にもレバレッジが効くことになる。定性的な説明をすれば、売上が下がっても一定の固定費は払わないといけないため売上低下には弱い、と言えるであろう。
導出過程
さて、営業レバレッジは営業利益÷限界利益でも算出ができるのでそれを導出したいと思う。
1行目は定義そのものだからいいとして、問題は2行目である。ここに至るのにあれこれ導出があるのでそれを記載する。
つまり、は売上高ということになるし、は変動費ということになる
なお、2行目から3行目に至る部分については、(営業)利益=売上-変動費-固定費を元に、営業利益の変動であるから⊿をつけてとしている。ではこの、部分であるが、固定費については名前の通り売上変動に依存しない変数のため、であるのは自明であろう。
では固定費が0だとして、残りの部分であるが、これ自体は貢献利益(限界利益)の変化を表していることになる。つまり、限界利益=売上-変動費であるため、以下が導ける。
ここで、テクニカルな式変形になるが、限界利益率=限界利益÷売上高の定義より、限界利益=売上高×限界利益率=と表すことができる。
つまり、限界利益の変動としては⊿限界利益=が導かれるため、これと(2)より、となる。
以上より、(1)は
が導ける。
安全余裕率との関係について
さて、営業レバレッジの限界利益÷営業利益の逆数、つまり営業利益÷限界利益は安全余裕率にもなる。まず、安全余裕率は以下の式である。
ここで、売上高をS、固定費をF、変動費率をaとすると
以上より、安全余裕率と営業レバレッジの関係性が導かれる。