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株主に帰属するフリーキャッシュフロー

財務分析における各種キャッシュフローについては以前整理したため、今度は、株主に帰属するフリーキャッシュフローについて整理しようと思う。

その過去のキャッシュフローについての説明は以下の通り。

s-tkmt.hatenablog.com

定義

営業キャッシュフローはその会社が本業で叩き出せるキャッシュフローがどれほどか、を示すものであるが、株主に帰属するキャッシュフロー(FCFE)は配当としてどれほど回すことができるか、という観点の指標である。FCFEというのはFree Cash Flow to Equity:株主にとっての企業価値という意味らしい。式で表すと以下の通り。

FCFE=1.税引後当期純利益+2.減価償却費-3.設備投資額-4.運転資本増加額+5.有利子負債増加額

やはりいきなりこの式を見せられても意味が不明である。ここでも1つ1つ噛み砕くしかなさそうだ。

1.税引後当期純利益

要は当期純利益である。これは営業キャッシュフローで整理したときの説明の通りなのでここでは省略。

2.減価償却

これも営業キャッシュフローで整理したときと同じなので、説明はそちらに譲る。

3.設備投資額

企業が借り入れや株式発行により大規模に資金調達するのはなぜか、それはまとまったお金が必要だからである。では、まとまったお金はどういう時に使われるか、一般的には設備投資となるだろう。というわけで、設備投資額(ただの投資額でもよい)は事業を回すために使い、当然株主には行き渡らないことになるので差し引く。

4.運転資本増減額

これも営業キャッシュフローで整理したときと同じである。3.設備投資額にてまとまったお金の使いみちについて書いたが、通常の業務を回す上でも当然お金は必要で、その運転資金分を差し引く。通常の営利活動であれば売上額>仕入額となるはずなので、運転資本(キャッシュフロー)の増加はマイナス要因になる。

5.有利子負債増加額

そしてこれが株主に帰属するキャッシュフローにおける一番の相違点である。実は、5.有利子負債増加額を無くして、1~4だけで示した式を企業へのフリーキャッシュフロー(FCFF:Free Cash Flow to the Firm)という。つまりここまで算出したフリーキャッシュフロー債権者に帰属するフリーキャッシュフローと言えるだろう。ここから、株主に帰属するフリーキャッシュフローという考えを導くのであれば、有利子負債増加額、つまり利子の支払いと、借り入れによる資金調達の差額分によるキャッシュ増加分が、株主として扱えるようになる(つまり、配当として受け取れる可能性がある)キャッシュとなる。そのため、ここはプラス要因として計算する。

純投資額

なお、 設備投資額+運転資本-減価償却費を純投資額とか総投資額と言ったりする。つまり、集めた資金を設備投資および運転資金として活用していく活動から、減価償却による経年劣化を差し引いたものが、純粋な投資としてキャッシュフローに作用するという考えである。これをもとに式を書き直すと以下のようになる。

FCFE=税引後当期純利益-(設備投資額+運転資本増加額-減価償却費)+有利子負債増加額

=税引後当期純利益-総投資額+有利子負債増加額

つまり、当期純利益から、総投資額として投資した分のキャッシュを引き、借り入れにより増加したキャッシュを足し込むことで、株主に帰属するフリーキャッシュフローを定義することができる。

 

 配当割引モデル

あとは配当割引モデルに応用させる。つまり、FCFEが配当の原資となることを鑑みれば、未来永劫に渡ってそれを現在価値に割り引くことで株価を算出できることになる。つまり以下の式になる。

P = \dfrac{FCFE_{1}}{1+k} + \dfrac{FCFE_{2}}{(1+k)^2} + \dfrac{FCFE_{3}}{(1+k)^3}...

 = \displaystyle \sum_{t=1}^{n} \dfrac{FCFE_{t}}{(1+k)^t}

 P:株価、k:割引率(一般的にはwaccを使う)、FCFE_{t}:t期のFCFE

ここまで来ると自明になってくるが、定率成長モデルでその成長率をgとすれば以下となる。

 P =\dfrac{FCFE_{1}}{k-g}

 以上